TRADITION

三山統一からはじまった
琉球王国の事件簿
沖縄の豊かな文化のルーツを探る
「琉球王国」の歴史|Part 2

2022.8.11
三山統一からはじまった<br>琉球王国の事件簿<br><small>沖縄の豊かな文化のルーツを探る<br>「琉球王国」の歴史|Part 2</small>
photo: koichi

日本史でいえば室町時代から明治時代まで、約450年という長きにわたって続いた琉球王国。東京国立博物館で開催中、九州国立博物館に巡回する沖縄復帰50年記念 特別展「琉球」で出合える文化財の紹介を含め、現代の沖縄につながる独自の歴史と文化をひも解く。

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ふたつの尚氏が紡いだ王国450年の歴史

15世紀には北は奄美大島から南は与那国島までを版図とし、アジアの海上貿易のハブとして、重要な役割を担った琉球王国。その歴史の扉は、1429年、尚巴志によって開かれた。

『自首里王城至那覇港之図』
三山を統一した尚巴志は、王国のシンボルとして首里城や那覇港を整備。以来、首里城は約450年にわたり、国王と王族の暮らす王宮であると同時に、王国の政治・経済・文化の中心となった

九州国立博物館蔵 出典:ColBase

尚巴志(しょうはし)が沖縄本島で対立していた三山(山北(さんほく)、中山(ちゅうざん)、山南(さんなん))を統一したことにはじまる琉球王国には、ふたつの王統がある。ひとつは尚巴志の父・尚思紹(しょうししょう)を初代とし、尚徳(しょうとく)まで7代63年間続いた第一尚氏、もうひとつは1470年に即位した尚円(しょうえん)から、王国最後の国王となった尚泰(しょうたい)まで19代410年間続いた第二尚氏。廃藩置県によって1879(明治12)年に首里城を明け渡すまで、約450年にわたって続いた王国では、さまざまな〝事件〟が起こった。

最大ともいえるのが第一尚氏第7代国王・尚徳の死後に起きたクーデター。尚徳の子ではなく、重臣だった金丸(かなまる)が第二尚氏初代国王・尚円として即位した。つまりふたつの王朝の間に血縁関係はないが、第二尚氏は尚姓を名乗り続けた。これは、君臣関係にある中国に対して、尚円が正当な後継者であることを示し、王国としての体裁を保つためだったと考えられている。国王がらみでいえば、尚真の即位に際しては、神のお告げを振りかざす神女たちによるひと波乱があった。ほかにも、第二尚氏第13代国王・尚敬(しょうけい)の即位に際しては、中国から派遣された使節たちと王府の間で大問題が勃発。重臣の蔡温(さいおん)が外交手腕を発揮して、なんとか丸く収めたという出来事もあった。

そして17世紀の島津侵攻事件。王国は日本の幕藩体制に組み込まれることになるが、中国との君臣関係も続けた。琉球は、日中の板挟みになりつつも、それぞれの文化を融合し、独自の文化をつくり上げていく。その気概は〝チャンプルー〟精神として現代の沖縄に受け継がれている。

琉球王国の歴史を読み解くキーワード

グスク
一般に「城」の字で表すが、城塞、集落、祭祀場などさまざまな性格をもつ。聖地であり、ほとんどすべてのグスクに祈りの場がある

按司【あじ】
もともとは各地の村落をまとめる首長のことだったが、16世紀以降は国王が王族に任じる位階名となり、王子に次ぐ高位だった

三山時代【さんざんじだい】
14世紀から15世紀初頭、沖縄本島に山北、中山、山南という3つの勢力が鼎立した時代。尚巴志によって統一された

朝貢貿易【ちょうこうぼうえき】
中国と君臣関係にある国との間で、皇帝に貢物を献上し、その返礼として皇帝が文物を下賜するというかたちで行われた貿易

尚氏【しょうし】
琉球王国の王及び王族の姓。15世紀初期に中国の皇帝から与えられたとも、琉球風の名に漢字を当てたものともいわれる

冊封使【さっぽうし】
君臣関係にある国の君主に王号などを授けるため中国の皇帝が派遣する使者。正副使のほか数百人の商人が貿易品とともに来航した

 

現代でも語り継がれる!
琉球王国のキーパーソン

 
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監修=沖縄県立博物館・美術館学芸員 伊禮拓郎さん
参考:東京国立博物館ほか編『沖縄復帰50年記念 特別展「琉球」』図録(東京国立博物館、九州国立博物館、NHK、NHKプロモーション、読売新聞社)、JCC出版部著『絵で解る琉球王国 歴史と人物』(JCC出版)、上里隆史著『誰も見たことのない琉球』(ボーダーインク)、沖縄県立総合教育センター 「琉球文化アーカイブ」(http://rca.open.ed.jp)、日本芸術文化振興会「文化デジタルライブラリー」 (www2.ntj.jac.go.jp

text: Miyu Narita illustration: Minoru Tanibata
Discover Japan 2022年7月号「沖縄にときめく/約450年続いた琉球王国の秘密」

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