バターカステラとマロン餡のホイル焼
富山県富山市 林盛堂本店の「あまんだら」
福田里香の民芸お菓子巡礼
民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香さんの《民芸お菓子巡礼》。今回は、甘い物屋の林盛堂がその曼荼羅に甘いを重ね、遥か海の向こうのポルトガルに思いを馳せて「あまんだら」と命名した和洋折衷のホイル焼き、富山県富山市 林盛堂本店の「あまんだら」を紹介します。
福田里香(ふくだ・りか)
お菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍。12年間にわたり続いている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中
吉田桂介は、富山県八尾(やつお)で越中八尾和紙「桂樹舎(けいじゅしゃ)」を創立した民藝運動家です。柳宗悦の民藝美論に感銘を受けたのをきっかけに、染織家の芹沢銈介(けいすけ)に型染めの技法を学び、地元で和紙の復興と創作を一生涯続けました。桂樹舎の越中八尾和紙を貼った文庫箱や折り紙式のコインケースは、美しい色彩と紋様の愛らしさが人気です。
地元の菓子舗「林盛堂本店」では、吉田が手掛けたパッケージが数多く見られます。先代店主と交流が深く、店の相談役として尊敬されていた吉田は、菓子の包装デザインでもその個性を遺憾なく発揮しています。はるか遠いポルトガルに思いを馳せた創作菓子「あまんだら」もそのひとつ。「甘いもの屋が作る曼荼羅(まんだら)」の意を込めて命名したそうです。バター生地の中あんは、マロンあんに自家調合した果物の洋酒漬け。生地をホイルで包み焼きにした製法もいまや貴重です。栗の風味と果物の香味はコーヒーにぴったり。しゃれた帆船の絵と「あまんだら ぽるとがる」の地模様の包み紙はきれいに伸ばし、ぜひ鑑賞してください。
林盛堂本店 富山本店
住所|富山県富山市八尾町福島3-8
Tel|076-454-4670
営業時間|8:00~17:00
定休日|なし
http://www.rinseidou-store.sakura.ne.jp/
text: Ricca Fukuda photo: Wakana Baba
Discover Japan 2021年12月号「ストーリーのある贈り物」