INFORMATION

《宇宙事情Q&A》
アルテミス世代の宇宙飛行士、誕生へ
日本の宇宙開発を探る旅 Part 3

2022.10.3
《宇宙事情Q&A》<br><small>アルテミス世代の宇宙飛行士、誕生へ<br>日本の宇宙開発を探る旅 Part 3</small>
©JAXA/NASA

「アポロ計画」以来となる月面着陸を目指してNASAが進めている「アルテミス計画」。現在、日本でも月探査プログラムなどに携わるアルテミス世代の宇宙飛行士を選抜中だ。人類の探究心は宇宙へ、月へ、そしてその先へ……世界でもトップクラスにある日本の宇宙開発技術から、進行中の宇宙開発計画、宇宙に挑んできた人類の歴史などをPart1からPart8に分けて探っていく。

Part3〜5では、宇宙に挑んできた人類の歴史から宇宙飛行士の日常まで、いまこそ知りたい日本の宇宙事情を探る。

≪前の記事を読む

いまこそ知りたい
ニッポンの宇宙事情Q&A
<宇宙開発編>

Q 日本の宇宙開発はどのように進められているの?
A 政府では内閣府作成の宇宙基本計画に基づき進行している!

宇宙基本計画は、2008年に施行された宇宙基本法に基づき、宇宙開発利用を総合的・計画的に進めるための計画で、日本の宇宙政策の基本方針を示す。’09年に初の宇宙基本計画が策定され、政府の宇宙開発戦略本部は毎年、政策項目ごとに進捗状況を検証し、以後10年間のスケジュールを示す宇宙基本計画の工程表を改訂している。JAXAは、宇宙基本計画の下、日本全体の宇宙開発利用を技術で支える中核的実施機関。“宇宙と空を活かし、安全で豊かな社会を実現”することを理念として掲げ、宇宙航空分野に挑戦し続けている。

現在の第4次宇宙基本計画は’20年6月に閣議決定された。今後20年を見据えた10年間の計画で、宇宙政策の目標として下記の5つを挙げ、“産業・科学技術基盤を強化し、宇宙利用を拡大することで、基盤強化と利用拡大の好循環を実現する、自立した宇宙利用大国となることを目指す”としている。昨年12月に改訂された工程表には、宇宙作戦群(仮称)による宇宙状況把握システムの’23年度からの実運用、’20年代後半をめどに日本人の月面着陸実現、アジアにおける宇宙ビジネスの中核拠点化を目指すための制度環境の整備などが盛り込まれた。

宇宙基本計画で掲げる5つの目標

宇宙安全保障の確保
宇宙空間の持続的かつ安定的な利用を確保すること、情報収集・通信など宇宙利用の優位を確保するための能力を強化すること、アメリカをはじめ世界の国々と宇宙分野における幅広い連携・協力を追求することを目指す

災害対策・国土強靱化や
地球規模課題の解決への貢献

日本が保有する高度な宇宙システムを強化し、災害対策・国土強靱化を推進する。また、国際社会と協力しながら日本がリーダーシップを発揮し、エネルギーや気候変動、環境、食糧など地球規模の課題の解決に貢献し、SDGsの達成につなげる

宇宙科学・探査による新たな知の創造
国際ミッションを主導するなどして宇宙科学・探査を発展させ、新たな知の創造につながる世界的な成果を創出する。その中で、宇宙分野の科学技術を進化させ、地上技術への派生に向けた取り組みも強化する

宇宙を推進力とする経済成長とイノベーションの実現
さまざまな分野における衛星データ利用の促進、異業種の宇宙分野への取り込み、地上技術と宇宙開発技術の相互利用、制度環境の整備などに取り組み、宇宙システムの強化と利用拡大を図り、経済成長やイノベーションの実現を目指す

日本の宇宙活動を支える総合的基盤の強化
上記4項目を達成するため、産業・科学技術基盤をはじめ、宇宙活動を支える総合的基盤を強化する。国際的な連携に加え、必要に応じて自立化を徹底。新規参入も取り込みながら、日本の宇宙産業エコシステム(生態系)を再構築する

※『宇宙基本計画』(令和2年6月30日閣議決定)を元に作成

Q 日本が独自で進めている宇宙開発は?
A 世界でも有数のロケット開発技術を保有!

宇宙開発は、各国独自で取り組む部分と国際協力で行う部分があるが、国独自の技術力や科学力がなければ、国際協力に参加することはできない。日本はさまざまな側面で独自の宇宙技術を支える力をもっており、次世代ロケットの開発をはじめ、国際宇宙ステーション(ISS)やアルテミス計画への参画など、世界や人類の将来に貢献するために宇宙開発を進めてきた。中でもロケット開発技術は世界有数。現在、日本の基幹ロケットである「H-IIA」ロケットは、2003年に打ち上げた6号機が唯一の失敗で、打ち上げ成功率は97.77%と世界トップクラスを誇る。また、ISSに物資を届ける日本の補給機「こうのとり」は、2020年の運用終了まで100%の成功率でミッションを遂行。日本の宇宙開発技術の評価を高めた。

とはいえ課題も多い。安全・確実かつ低コストで宇宙と行き来できる輸送技術や、宇宙と地球との間で大量のデータを確実にやり取りするための大容量の通信技術、データ処理技術、科学技術など、多岐にわたる分野における開発のため努力を続けている。

©JAXA/NASA
離脱するSpaceX Crew-2から撮影されたISS

Q 「きぼう」って何?
A 国際宇宙ステーションの一部分で、JAXAが開発を担当した日本実験棟です!

ISSは日本、アメリカ、ロシア、カナダ、欧州の15カ国が参加する有人宇宙実験施設。大きさはサッカー場ほどで質量は約420t。地上約400㎞上空を周回している。ISS建設のための最初のモジュールが打ち上げられたのは1998年。以来、40数回に分けて打ち上げたパーツを宇宙空間で組み立て、2011年7月に完成した。

ISSは複数の実験モジュールとそれらをつなぐ結合モジュール、宇宙飛行士の居住モジュール、電力をつくり出す太陽電池パドルなどで構成される。その内「きぼう」は、日本が開発を担当した実験モジュールで、ISS最大の大きさ。「きぼう」の心臓部といえる「船内実験室」と多目的実験スペースである「船外実験プラットフォーム」というふたつの実験スペースと、船内保管室、実験や作業に使用するロボットアームなどからなる。完成した2009年以降、日本人宇宙飛行士によるISS長期滞在ミッションもはじまり、宇宙環境を利用したさまざまな実験や観測が行われるようになった。

 

≫次の記事を読む

 

アルテミス世代の宇宙飛行士、誕生へ
日本の宇宙開発を探る旅

1|筑波宇宙センター 前編後編
2|宇宙事情Q&A 前編中編後編
3|宇宙のこれからを知る
4|種子島宇宙センター
5|日本科学未来館

text: Miyu Narita
Discover Japan 2022年9月号「ワクワクさせるミュージアム!/完全保存版ミュージアムガイド55」

RECOMMEND

READ MORE