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《宇宙のこれからを知る》
アルテミス世代の宇宙飛行士、誕生へ
日本の宇宙開発を探る旅 Part 6

2022.10.11
《宇宙のこれからを知る》<br><small>アルテミス世代の宇宙飛行士、誕生へ<br>日本の宇宙開発を探る旅 Part 6</small>
©JAXA

「アポロ計画」以来となる月面着陸を目指してNASAが進めている「アルテミス計画」。現在、日本でも月探査プログラムなどに携わるアルテミス世代の宇宙飛行士を選抜中だ。人類の探究心は宇宙へ、月へ、そしてその先へ……世界でもトップクラスにある日本の宇宙開発技術から、進行中の宇宙開発計画、宇宙に挑んできた人類の歴史などをPart 1からPart 8に分けて探っていく。

Part 6では、現在進められている宇宙での人類の可能性を切り開くさまざまな開発や計画を紹介。

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宇宙へ行く手段も多様化している!?
宇宙のこれからを知る
NEWS TOPICS

Topic 1
新たなロケット開発中!
「柔軟性」、「高信頼性」、「低価格」な〝世界で戦えるロケット〟

現在の日本の基幹ロケットである「H-IIA」ロケットは、2001年の試験機打ち上げ以降、世界トップクラスの打ち上げ成功率と世界一のオンタイム打ち上げ率を達成するなど活躍を続ける。その一方で、設備の老朽化や維持費の増大、開発機会不足による技術者の離散や技術力の低下などの課題が顕在化。それらを踏まえ、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と国内関連企業が開発に取り組んでいるのが「H3」ロケット。複数の機体形態を準備し、利用用途に合った価格・能力のロケットを提供する「柔軟性」、「H-IIA」ロケットから継承する「高信頼性」、国内の他産業の民生品を活用し、一般工業製品のようなライン生産に近づけることによる「低価格」を実現し、国内外の利用者が使いやすいロケットを追求している。世界中が注目するロケットをつくり、今後20年間で毎年6機程度を安定して打ち上げ、産業基盤を維持する運用を目指す。

©JAXA
日本の技術を結集させて開発を進める「H3」ロケット試験機1号機の飛翔イメージ
©JAXA
打ち上げまでの作業性や手順を確認する「H3」ロケット試験機1号機極低温点検(F-0)のうち機体移動の様子

Topic 2
月で人類が生活できるようになる!?
アルテミス計画、発動。

アルテミス計画は、米国が提案する有人月面探査プログラムの総称。人類を再び月面に送り、その後、月周回有人拠点「ゲートウェイ」などを通じて月に物資を運んで月面基地を建設し、月での人類の持続的な活動を目指す。’20年10月、この計画を推進するため日本、アメリカ、カナダ、イタリア、ルクセンブルク、アラブ首長国連邦(UAE)、イギリス、オーストラリアの8カ国が合意、2022年7月26日現在では計21カ国が署名している。アルテミス合意は、宇宙探査や宇宙利用に関する諸原則について、各国の共通認識を示すことを目的とした政治的宣言。日本の協力についてはたとえば、月探査協力に関する文部科学省とNASAとの共同宣言などに、国際宇宙ステーション(ISS)や「ゲートウェイ」、月面探査での協力の可能性を検討することが記載されている。ちなみに計画名は、アポロ計画の名の由来である太陽神アポロンの双子で、月の女神であるアルテミスに由来する。

©JAXA
将来の月面基地の想像図。現在は月面有人探査用の中継基地として、月周回有人拠点「ゲートウェイ」の建設計画が進行中

Topic 3
火星へ行ける日も近い!?
火星への研究・ミッションが本格化

火星探査機の打ち上げは1960年代にはじまり、’90年代には継続的な火星表面探査がはじまった。探査では、2010年6月13日に地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」のようなサンプルリターン技術が重要。JAXAは現在、火星の衛星であるフォボスからサンプルリターンを行う、火星衛星探査計画(MMX)を進めている。フォボス表面には、隕石衝突により火星表面から吹き飛ばされたかなりの量の物質が降り積もっていると考えられる。MMXでは、’24年度に探査機を打ち上げ、フォボス自体のサンプルに加え、火星表層からのサンプルを’29年度に地球に持ち帰る予定。有人火星探査で必須となる火星圏への往復を実現し、有人火星探査の重要拠点としても注目されるフォボスの表面地形、地盤情報、表面・周辺環境について、世界初となる詳細な観測を目指し、天然の宇宙ステーションとしての可能性を探る。

©JAXA
日本では、世界初の火星衛星サンプルリターンミッション(MMX)が進行中。探査機は衛星の観測・物質採取後、サンプルを携えて地球に帰還する

Topic 4
大分空港が宇宙港に!?
スペースポートとして活用するためパートナーシップを締結

大分県は2020年4月、大分空港をスペースポート(宇宙港)として活用すべく、アメリカの人工衛星打ち上げ企業ヴァージン・オービット社とパートナーシップを締結。同社は’21年1月に、航空機からのロケット打ち上げに初成功。’22年以降、大分空港からも離陸を予定している。また大分県は’22年2月、同空港を無人宇宙往還機「ドリーム・チェイサー」のアジア拠点とするべく、アメリカのシエラ・スペース社及び兼松とパートナーシップを締結。「ドリーム・チェイサー」は、ISSへの物資補給船として、シエラ・スペース社が開発中の有翼型宇宙機で、地球帰還時には滑走路に着陸する。米国にて’23年からの運航を予定している。

©Virgin Orbit/Greg Robinson.
2022年以降、大分空港から飛び立つ予定のヴァージン・オービット社の航空機「コズミック・ガール」

Topic 5
アルテミス計画に向けて次世代宇宙服、決定!

アメリカ航空宇宙局(NASA)は、アルテミス計画(P119)や将来の火星への有人探査実現を見据え、新たな宇宙服の導入を計画。2022年6月に、次世代宇宙服の開発・製造を担当する企業として、アクシオム・スペース社とコリンズ・エアロスペース社を選定した。両社は、’25年に予定されているアルテミス計画初の有人月面探査ミッション「アルテミス3」のための新たな宇宙服の開発・製造に取り組む。

©NASA
船内与圧服や船外活動服などの宇宙服は、宇宙という過酷な環境下で、宇宙飛行士が安全に任務を行うために欠かせない

Topic 6
ISS・「きぼう」日本実験棟が民間事業で利用可能!?
民間企業も注目する宇宙ビジネス

宇宙ビジネスは、裾野の広い関連産業をもつ総合産業。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、新規参入や他分野とのコラボレーションを促進して新たなビジネスの芽を育てるべく、さまざまな宇宙ビジネス支援の仕組みを用意。日本の宇宙関連ビジネスのさらなる発展を目指し、世界市場開拓のための国際競争力強化に取り組んでいるという。

「きぼう」の民間利用促進もそのひとつ。「きぼう」では、多岐にわたる分野でのさまざまな実験に加え、超小型衛星の放出や高精細カメラによる地球観測などができるが、これらの実験装置は民間企業のビジネスにも活用できる。また、「きぼう」を宇宙スタジオとしての番組放映、アバターによる宇宙滞在の疑似体験、宇宙探査時代を目指した野菜栽培技術の実証など、「きぼう」ならではの環境を活用することで、新しい価値やユニークなビジネスの創出が期待されている。

©JAXA/NASA
船外活動をしている星出彰彦宇宙飛行士の奥に見えるのがISSの「きぼう」日本実験棟。ISSは地球上空400㎞を秒速約7.7㎞で飛行している

 

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アルテミス世代の宇宙飛行士、誕生へ
日本の宇宙開発を探る旅

1|筑波宇宙センター 前編後編
2|宇宙事情Q&A 前編中編後編
3|宇宙のこれからを知る
4|種子島宇宙センター
5|日本科学未来館

text: Miyu Narita
Discover Japan 2022年9月号「ワクワクさせるミュージアム!/完全保存版ミュージアムガイド55」

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