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《筑波宇宙センター》
アルテミス世代の宇宙飛行士、誕生へ
日本の宇宙開発を探る旅 Part 2

2022.9.25
《筑波宇宙センター》<br><small>アルテミス世代の宇宙飛行士、誕生へ<br>日本の宇宙開発を探る旅 Part 2</small>

「アポロ計画」以来となる月面着陸を目指してNASAが進めている「アルテミス計画」。現在、日本でも月探査プログラムなどに携わるアルテミス世代の宇宙飛行士を選抜中だ。人類の探究心は宇宙へ、月へ、そしてその先へ……世界でもトップクラスにある日本の宇宙開発技術から、進行中の宇宙開発計画、宇宙に挑んできた人類の歴史などをPart 1からPart 8に分けて探っていく。

Part 2は筑波宇宙センター「スペースドーム」の無料ガイドツアーを紹介。

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黒田有彩(くろだ・ありさ)
1987年、兵庫県生まれ。中学生の頃、NASAを訪れたことをきっかけに宇宙に開眼。TVやラジオ、雑誌、ウェブなど多彩なメディアで宇宙の魅力を発信。YouTubeチャンネル「宇宙タレント黒田有彩 -ウーチュー部-」にて配信、内閣府「ムーンショットアンバサダー」を務める

国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟の実物大モデル

無料ガイドツアーでめぐる
スペースドーム

JAXAの宇宙開発の歴史から誰かに話したくなるトリビアまで、ガイドさんが解説しながら案内してくれるツアー。「私たちの豊かな暮らしにつながる宇宙開発について体系的に知ることができます」(JAXA広報部 石田暁さん )

<見どころ①>
歴代から開発中のH3ロケットまでの
スペックをチェック!

日本のロケット開発のはじまりである全長23㎝の超小型ペンシルロケットから、日本初の純国産ロケット「H-Ⅱ」、そして現在、開発中の「H3」など9体の1/20モデルのロケットと、実物大のペンシルロケットを展示。各ロケットのスペックを紹介している

<見どころ②>
「きぼう」日本実験棟の
歴代宇宙飛行士のサイン

「きぼう」の中へ入ると、野口聡一さんや金井宣茂さんなど歴代のJAXA宇宙飛行士のサインと各ミッションのステッカーが展示されている。奥の暖簾は星出飛行士が「きぼう」に着いたときに掲げたものだとか

実物大スケールが続々!
大迫力で学ぶ挑戦の歴史

宇宙空間を模した館内に入り、まず目に飛び込んで来たのが100万分の1サイズの地球「ドリームポート」、ISSや人工衛星、ロケットが周囲を飛んでいる姿で宇宙のスケールが実感できる。そこから人工衛星の活躍を紹介する大型マルチビジョン「マモルホシ」でクイズを楽しんだ後、人工衛星の展示コーナーへ。実際に使用された放送衛星の予備機であり、館内唯一の本物の人工衛星である「ゆり」をはじめ、2014年に「H-ⅡA」ロケットで打ち上げられた陸域観測技術衛星2号「だいち2号」や現在のJAXAの衛星開発の礎となった技術試験衛星「きく」の歴代シリーズなど、現在運用中の人工衛星を交えた数々の展示で宇宙開発の歴史がたどれる。人工衛星の名前の由来や金色に光る素材の秘密など定期的にガイドさんが解説してくれるので、事前の知識がなくても楽しい。

その先の折り返し地点に鎮座しているのが、ISSに補給物資を運ぶ宇宙ステーション補給機「こうのとり」だ。高さ9・8mの迫力に思わず目を奪われる。

「ここではじめて間近で見たとき、圧倒的なスケールに驚きました。いま、後継機が月面着陸計画の補給船として開発されているので、どんな風に進化するのか楽しみです!」と黒田さんも興奮を隠しきれない様子だ。

さらに、ISSの一部である「きぼう」日本実験棟は、実物大というだけでなく、船内実験室の中には実験装置や無重力空間で浮かないように捕まるハンドレールなど細部まで忠実に再現され、思わず心が躍る。歴代宇宙飛行士のサインや、ロケットなど興味深い展示がまだまだ続く中、それらを真剣なまなざしで眺める黒田さんは、今年、念願だった宇宙飛行士候補者選抜試験に挑戦したばかりだ。

「心身をギリギリまで追い込み本気で挑んだ日々は、本当に貴重な経験になりました。終わって再認識したのが、宇宙への愛。ここは、その宇宙の魅力が体感できるので、ぜひ一度訪れてみてください」

<見どころ③>
いま活躍している人工衛星たち!

「いぶき」
宇宙から地球全体の温室効果ガスを観測する世界初の人工衛星。約100分で地球を一周しながら、地球表面のほぼ全体の温室効果ガスの濃度を測定する。後継機の「いぶき2号」とともに、温暖化防止の国際的な取り組みに貢献している
「だいち2号」
2014年に「H-ⅡA」ロケットで打ち上げられ、災害状況や森林分布の把握、地殻変動の解析などさまざまな目的で使用されている。現在、さらに高スペックの3号、4号の開発が進められている

さらに3号、4号も打ち上げ予定!
だいちのミッション

Mission 1
宇宙から災害状況を把握
大地震で構造物の倒壊などが起こり、現地に到達するのが困難な状況下で宇宙から広域にわたる被害状況を迅速に把握。各機関に観測データを提供することで多くの人命救助につながる

Mission 2
地震や火山活動による地表の動きをチェック
地震や火山活動による地殻変動など地表面の動きを数センチの精度でとらえることができるので、行政機関による災害エリアへの立ち入り可否の判断材料になる

Mission 3
世界の森林を見る
農地への土地利用の転換や違法伐採などにより減少を続けている世界中の森林の様子を監視。2010〜2011年にはブラジルで1000カ所の森林減少と150カ所の違法伐採検出に貢献した

 

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筑波宇宙センター
住所|茨城県つくば市千現2-1-1
開館時間|10:00〜17:00(見学受付:9:30〜16:30)
休館日|不定休、年末年始
入場料:無料 
https://visit-tsukuba.jaxa.jp

予約不要の無料ガイドツアーに参加しよう!
各スタート時間前に館内で告知され自由に参加可能。館内混雑時など、時間や内容を変更する場合があるので案内板で確認を

<無料ガイドツアー時間(約1時間)>
10:00 11:00 13:00
14:00 15:00 16:00

リアルな現場が見られるガイド付きバスツアーも実施
24時間体制で実験運用や宇宙飛行士の支援を行う「きぼう」運用管制室や宇宙から帰還した装置のレアな展示など、日本で最大規模の宇宙航空開発施設の一部をガイド付きで見学できる!
(都合によりツアー内容変更の場合あり)

所要時間|約1時間10分 
料金|一般500円、高校生以下無料 
開催時間|1日4回
※個人申込、または貸切バスでの来場(団体申込)で開催時刻が一部異なります。
詳細はウェブサイトを確認ください
https://visit-tsukuba.jaxa.jp/tour.html

アルテミス世代の宇宙飛行士、誕生へ
日本の宇宙開発を探る旅

1|筑波宇宙センター 前編後編
2|宇宙事情Q&A 前編中編後編
3|宇宙のこれからを知る
4|種子島宇宙センター
5|日本科学未来館

text: Ryosuke Fujitani photo: Mizuaki Wakahara
model: Arisa Kuroda hair & make-up: Chiaki Tsuda stylist: Maki Iwabuchi 
Discover Japan 2022年9月号「ワクワクさせるミュージアム!/完全保存版ミュージアムガイド55」

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