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片岡仁左衛門・坂東玉三郎の黄金コンビが演じる、美男美女の艶やかな恋模様
|シネマ歌舞伎『廓文章 吉田屋』

2022.6.20
片岡仁左衛門・坂東玉三郎の黄金コンビが演じる、美男美女の艶やかな恋模様<br><small>|シネマ歌舞伎『廓文章 吉田屋』</small>
©松竹株式会社

歌舞伎の舞台を映画館で楽しめる「シネマ歌舞伎」。2022年6月の上映作品は『廓文章 吉田屋(くるわぶんしょう よしだや)』。先月作品に引き続き、関西で生まれた上方歌舞伎の代表的な作品だ。幸福感あふれる華やかな恋の物語を、片岡仁左衛門・坂東玉三郎の黄金コンビで楽しもう。
本作は全国の映画館にて、2022年6月24日(金)から30日(木)まで上映予定。観に行く前に、あらすじや作品背景を予習しておこう。

男女の恋心が織りなす恋模様

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放蕩の末に勘当された豪商・藤屋の若旦那伊左衛門は、恋人の夕霧が病に伏せっていると聞き、 落ちぶれた身も省みず大坂新町の吉田屋へやってきた。 主人喜左衛門夫婦の好意で夕霧には会えたものの、伊左衛門は嫉妬のあまり、すねてつらく当たり二人は痴話喧嘩を始める始末。 ようやく仲直りをした二人のもとに届けられる知らせは……。

『廓文章 吉田屋』は上方歌舞伎の代表作のひとつ。伊左衛門は、身なりは貧しくても大店の若旦那に相応しい品と色気にあふれる役どころ。夕霧もまた、最上位の遊女である太夫の品格と艶やかさが求められる大役だ。幸福感に満たされる名舞台を存分に楽しもう。

「つっころばし」に「やつし」!
和事を代表する名作

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坂東玉三郎
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片岡仁左衛門

ダイナミックな動きや演出が印象的な歌舞伎演目を「荒事(あらごと)」と呼ぶのに対して、上方の歌舞伎にはやわらかで優美な雰囲気の演目「和事(わごと)」が多い。『廓文章 吉田屋』は「和事」の代表的な演目のひとつだ。
和事によく登場するのは「つっころばし」と呼ばれる優男。背中をちょんと突いたらそのまま転んでしまいそうという意味で、いかにも頼りない。世間知らずで無邪気な台詞で笑いを誘い、いつの間にか観客を味方につけてしまう。もうひとつのお約束は、元はお金持ちの男が家を追い出され、困窮した姿を表す「やつし」。紙衣(かみこ)という古紙を張り合わせた粗末な着物を纏い、人目を忍んでトボトボと歩く。しかし「つっころばし」の必須条件である品の良い色気が漂い、みすぼらしさを感じさせない。『廓文章 吉田屋』の主人公・伊左衛門は、境遇や出で立ち、身にまとう上品さがまさに「和事」の主人公なのだ。
伊左衛門の恋人・夕霧太夫も、最高位の遊女だけあって華やかで優雅な美しさを持っている。伊左衛門と夕霧は、誰もが羨むベストカップル。「夫婦喧嘩は犬も食わない」というが、この二人の可愛らしい痴話げんかなら、いつまででも見ていたい。

豪華顔合わせ!
名舞台がシネマ歌舞伎でよみがえる

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言わずと知れた人気歌舞伎俳優の片岡仁左衛門と坂東玉三郎は、若い頃から共演を重ねてきた。『廓文章 吉田屋』での初共演は、1972年のこと。さまざまな恋人役を務めてきた二人だが、この演目の伊左衛門と夕霧は圧倒的な幸福感を漂わせている。何度でも見たくなること請け合いだ。

また、喜左衛門とおきさを演じた片岡我當と片岡秀太郎にも注目したい。
勘当されてお金もないのに、恋人に会うためノコノコと廓へやってきた伊左衛門。普通なら追い返されても文句は言えないところだが、店の主人・喜左衛門とその妻・おきさは温かく迎え入れ、夕霧に逢わせてくれる。さらに病み上がりの夕霧が他の客を取っていると知り、拗ねてしまった伊左衛門を見ると、なだめて機嫌を取ろうとする。店主と客というよりは、まるで家族のような温かい関係だ。本作では、喜左衛門とおきさを仁左衛門の実兄である我當、秀太郎が演じている。


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上映冒頭には、片岡仁左衛門が伊左衛門を当たり役とした父・先代片岡仁左衛門との思い出を語るインタビューも収録。この演目にかける思いをたっぷりと語っている。初心者でも同時音声解説のイヤホンガイドアプリをダウンロードしておけば安心だ。
幸せな恋の物語で、楽しいひと時を過ごしてみよう。

シネマ歌舞伎
『廓文章 吉田屋』
公開日|6月24日(金)~30日(木)
上映館|東劇ほか全国の映画館にて(詳しくは公式ウェブサイトにて
料金|一般2200円、学生・小人1500円
出演|片岡 仁左衛門、坂東 玉三郎、坂東 巳之助、大谷 桂三、澤村 由次郎、片岡 秀太郎、片岡 我當

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