非常時に役立つ「日本の食の知恵」第1回
いま日本は戦後最大の危機の渦中にあります。
「緊急事態宣言」が発せられ、目に見えないコロナウイルスとの戦いの最中にいます。感染しない心がけ、が第一ですが、免疫を上げてウイルスに負けない身体でいることも重要です。現在発売中のディスカバー・ジャパンの特集『日本人は何を食べてきたの』では、日本人のDNAに刻まれてきた食について取り上げています。
いまの時点は、食材に不自由する状況では幸いありませんが、スーパーマーケットなどで自由に食材調達ができない状況になった時にはどうしたらいいでしょう?
本特集にもご登場いただき、Discover Japan Books『日本料理と天皇』という著書もある松本栄文さんに、非常時に知っておきたい「日本の食の知恵」の生かし方を教えていただきます。万が一「兵糧攻め」ともいえる状況になった時に役立つはずです!
はじめに
非常時、と言えば皆さんはどんな食料を買っていますか?お米?缶詰?レトルト?カップ麺?本当に必要なものを選んで買っていますか?なんとなく買い溜めていませんか?2〜3日の短期であればいいのですが、万が一それよりも長い期間になったときに最低限、私たちが備えておくといい食料とはなんでしょう?そのヒントを日本の食文化から学んでみましょう。
非常食とは、非常時に向け長期間保存できる食品(保存食・備蓄食品・防災食)のことで、さまざまなライフラインが遮断されても生命をつなぐ大切な存在です。しかし、こうした非常食には栄養素の偏りも多く、短期間の食事としては重宝するものの、長期間となると話が変わってきます。
非常食において最も知っておくべきキーワードとして、熱量(㎉)、タンパク質、ビタミン類&ミネラル質、食物繊維、保存性があげられます。昔、習った家庭科の授業を思い出すかもしれませんが、原点に立ち返ってみましょう。
【免疫を上げるために!体温維持】
お米や小麦粉製品(パン・麺類)などは炭水化物(デンプン質)であり、体内では糖質に変わり、体温維持に欠かすことはできません。低体温になれば免疫低下は著しく、さまざまな病気に感染しやすくなります。
【体温維持や筋力増強のために】
タンパク質の存在も重要。特に動物性タンパク質は筋力増大にいいけれど、食肉(牛肉、豚肉、鶏肉など)確保が困難の場合、何で補うといいでしょう?非常時が短期間の場合、炭水化物とタンパク質の食材備蓄があれば十分ですが、3日以上の長期間となれば話は変わってきます。
【ストレス耐性を高める】
外出も許されず、ただただ自宅内で暮らすということは、かなりの精神的ストレスが溜まってくるはずです。特に、カルシウム不足になると感情の起伏が激しくなり、キレやすくなってしまいます。
【生理機能を維持するために】
ビタミン類が不足すると生理機能が低下してしまいます。また食物繊維が不足すると腸内環境が荒れ、運動不足により便秘が慢性化してしまうのです。
身体の健康を維持するうえで、食べ物はとても大切。これを機会に食生活を考えてみるといいのではないでしょうか。
一般社団法人日本食文化会議理事長。花冠「陽明庵」主人。「日本文化を愛でる会」を主宰し、日本の伝承・伝統の普及に努める。著書『日本料理と天皇』では、グルマン世界料理本大賞2015で「殿堂」、「創設最高賞」をW受賞。
《緊急企画!長期の非常時に役立つ日本の食の知恵》
01|はじめに
02|お米
03|そうめん
04|片栗粉
05|梅干
06|味噌
07|黒糖
08|豆苗
09|クレソン
10|煮干
11|乾物スルメイカ
12|ドライマンゴー
13|柚子胡椒