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新潟県・村杉温泉《角屋旅館》
心身を癒す温泉宿
|温泉ビューティ研究家・石井宏子が選ぶ
保養スタイル別温泉宿⑧

2024.2.23
新潟県・村杉温泉《角屋旅館》<br>心身を癒す温泉宿<br><small>|温泉ビューティ研究家・石井宏子が選ぶ<br>保養スタイル別温泉宿⑧</small>

「ゆるりと心身を癒してくれる温泉宿」をテーマに、温泉ビューティ研究家・石井宏子さんが選ぶ保養スタイル別温泉宿を紹介。温泉滞在は連泊してこそ。移動の心配がない「自由な丸一日」ができ、温泉をゆっくり堪能できる。ゆとりがあると心も身体も喜ぶし、旅の楽しみ方が多角的に変わっていく。
 
今回は、食材や調理方法にこだわった美食が堪能できる新潟県・村杉温泉の「角屋旅館」を紹介する。

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滞在の食事を多彩に選べる

自家栽培のコシヒカリは玄米で貯蔵し、毎週精米。体調や好みに合わせて、白米、玄米、おかゆなど選べる

心身を癒す温泉宿で、美食を満喫したっていいではないか。角屋旅館は、新潟ガストロノミーアワード受賞に輝き、地域の文化を料理で表現している宿として認められている。農家が宿をはじめた明治時代から100年近く湯治客を迎えてきた。自家農園でつくる野菜やコシヒカリ米は減農薬栽培で。毎朝5時に魚市場へ行き調理長自ら日本海の魚を目利きする、里山を歩き、山菜、キノコを集め、タケノコも所有する竹林で栽培し採れたてを使うために1日3回収穫するなど、食材や料理への熱い情熱がある。
 
その探究は飲み物やスイーツへも及ぶ。連泊の中日に、ぜひ味わっていただきたいのが、宿名物「白玉クリームあんみつ」だ。注文を受けてから、新潟県産の白玉粉を宿の庭に湧く「銀蔵清水」で団子にして白玉をつくり、門外不出の秘伝の技で生み出した寒天は絶妙な舌触り。黒蜜はご主人自ら沖縄の島々を探し歩いて一番合う黒糖からつくり、あんこは北海道十勝産の小豆で、角屋旅館のあんみつ用に製あんしてもらっている。めくるめく美味しさのあんみつは宿のゲストのためだけに考案されたもので、こだわりが詰まっているのだ。

一番美味しい瞬間を味わえるように1日3回収穫するタケノコは5月。人生観が変わる美味しさ
時が止まったような茶の間は癒しの空間。売店を見たり、宿特製の果実酒を選んだり、湯上がりの生ビール、鉄瓶で沸かした湯でお茶を飲んだり、名物のあんみつもここで

温泉は4つの貸切風呂で何度でも無料で入れる。単純放射能泉は、身体を温めて自律神経をととのえ、細胞の活力をサポートする。成分が大気中に放出されやすいので、入浴、飲用、吸入を組み合わせるのがよいとされる。すべて加温の源泉をかけ流しで注ぎ、景色を楽しむ露天風呂はやや熱めに、温泉の湯気を逃がさないように工夫した内湯は、ゆっくり呼吸しながら入れるようぬるめになっている。

村杉温泉は岩盤にもラジウムを帯びている。地中から掘り出した花崗岩「村杉石」の湯船は、身体の奥深くまで温まると評判の貸切風呂。職人が手作業で丸く磨き上げた湯船はつるりとしたなめらかな感触が心地よい
放射能泉の成分は気化しやすいので、貸切風呂「里の湯」では、注いだ温泉から放出される湯気を逃がさないように浴室の天井を低くし、立ち込める湯気を呼吸で取り込みながら入れるよう工夫された内湯

身体をととのえるには量を減らすのではなく、しっかり食べることも大切と考え、食べられないものがないようにと、食事制限がある人の相談にも細かく乗ってくれる。連泊滞在で多くは食べられないときには、標準の半分量の「ひかえめコース」や、塩分や油分などが心配な人には「静養ごはんコース」もあり、野菜、海藻、魚介類をバランスよく楽しめる。

美食の宿でも連泊で楽しめる理由がある。標準の半分量のコースや、塩分や油分など食事制限が心配な人でも細かく相談に乗ってもらえるコースがある。日本海の幸、自家農園の野菜や米の美味しさは変わらない
客室は10部屋。昔ながらの囲炉裏付きの和室や、和室にベッドでいつでも楽々ごろ寝ができる部屋など好みや予算に合わせて。どの部屋もノスタルジックな癒しの雰囲気は変わらない

<温泉data>
泉質|単純放射能泉
湧出温度|約25℃(加温循環)
かけ流し|×

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大分県・長湯温泉
《大丸旅館》

 
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角屋旅館
住所|新潟県阿賀野市村杉4631-1
Tel|0250-66-2221(8:00〜21:00)
料金|1泊2食付2万2000円〜(税・サ込)
IN|15:00
OUT|10:00
キッチン×/ランドリー×/Wi-Fi〇/送迎×

text: Hiroko Ishii
Discover Japan 2024年2月号「人生に効く温泉」

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