「大谷山荘 別邸 音信」
長門湯本温泉の名門旅館 へ。
【第1回】山口県 宿の選び方・楽しみ方
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山口県長門市に位置する長門湯本温泉。その地のパワフルな街づくりに触れたことをきっかけに、周辺の街の魅力、ひいては山口県全体にまで足を伸ばし、編集部はこの地を掘り下げはじめました。その奥深さを広く伝えたく、今後も連載を続けて行きます。今回からのテーマは山口への「旅」に広げ、長門湯本を中心に、山口県全体にわたって掘り下げます。
そして今回から3回にわたる連載が「宿」。くつろげる部屋のつくりや周りの環境、宿での食事は、旅そのものの質を左右するといっても過言ではありません。楽しみかた別にセレクトした宿の、まずは初回、長門湯本温泉に居を構える「大谷山荘 別邸 音信(おとずれ)」です。
山間の宿にて「居」を愉しむ。
緑あふれる山々に抱かれた河畔に位置する「別邸 音信」。青海島(おうみじま)や秋吉台、萩の城下町へのアクセスもよい絶好のロケーションにありながら、宿にこもる贅沢も味わえる、すべてを兼ね備えた温泉宿だ。
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自然の存在をそばに感じながら、上質なくつろぎに身をゆだねる
自然豊かな山間の地で、静かな賑わいをみせる長門湯本温泉街。街中には透明度の高い音信川(おとずれがわ)がさらさらと流れ、川沿いには宿や飲食店が軒を連ねている。音信川を上流へ向かって進んでいくと、葉擦れや鳥のさえずり、虫の声が一層大きく響きわたり、緑の中から堂々とした宿が姿を表す。宿の名は「大谷山荘」。山口県屈指の名宿として、国内外の要人を迎えてきた。そしてその隣にある、品位漂う門構えの建物が、大谷山荘の別館として2006年に開かれた「別邸 音信」である。
コンセプトは「湯治モダン」。1427年に開湯された長門湯本温泉は、湯治場として利用されてきた歴史をもつ。その原点に立ち返り、日本独自の宿文化の粋とモダニズムを融合させた、現代の湯治を体現している。
館内に足を踏み入れる際、ゲストはまず靴を脱ぐ。ここでは靴下を脱ぎ、ぜひ裸足で歩いてみてほしい。通路には主に畳を採用しているからだ。一般的なマナーではNGとされる向きもあるが、別邸 音信では裸足を推奨している。日本人が慣れ親しんできた、足裏への畳の感覚は、とても心地よい。これは別邸 音信が表現する宿屋としての在り方の象徴といえよう。
広々とした館内の中に客室は18室のみ。和の趣が漂うモダンなインテリアをベースに、設えや間取りの異なる7タイプが用意され、温泉を引く露天風呂が全室に付いている。ホームシアターを完備したスイートルーム仕様のDタイプ、バーカウンターや大きなソファを配したBタイプ、2階の明かり窓から光が降り注ぐメゾネットのFタイプなど、どの客室も実に個性的だ。
館内を歩いているときも、客室でくつろいでいるときも、山河の気配をすぐそばに感じられる。聞けば、それは建物と自然が調和をする空間を目指したからだとか。別邸 音信ならではの心地よさは、訪れたゲストをたちまちに魅了していくだろう。
【客室】Dタイプ
(メゾネットのスイートルーム)
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【客室】Bタイプ
(10畳の和室とソファースペースを併用した和洋室)
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【客室】Fタイプ
(メゾネット)
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宿にこもる大人の贅沢
優雅な時間の流れに酔う
「大谷山荘」と「別邸 音信」が共有しているのは、「山草花のおもてなし」という心。人の気持ちをホッとさせる野に咲く花のようなもてなしで、ゲストを温かく迎えているのだ。
訪れたゲストはまず「茶室 一峰庵」に案内され、抹茶と和菓子の歓待を受ける。客室へ向かう途中、ふと目につくのが花器に生けられた草花の数々だ。これらはスタッフが生けているもので、自らの感性とホスピタリティを磨く役割も果たしているという。
部屋に着き、テラスに置かれた椅子に腰を落とす。自然が奏でる音に耳を傾け、肌に触れる爽快な風を楽しむ。ただそれだけのことが極めて贅沢に感じられるのは、別邸 音信による演出なのだろう。
部屋の露天風呂も素晴らしい一方で、大浴場にもぜひ足を運んでほしい。内風呂と露天風呂が一体となったオープンエアで、寝湯と岩盤浴も併設されている。脱衣所の2階にはフィットネスジムがあり、軽く汗を流したのち、そのまま温泉に浸かれるという仕組みだ。
湯上りには館内を散策する。萩焼の作家の作品などを扱うショップをまわり、ライブラリーにある本やDVDを部屋に持ち帰り、夕食までの時間を過ごすのもいい。
夕食後は「The Bar OTOZURE」へ。枯山水の美意識に通じる水盤を眺めながらグラスを傾けているうちに、「次はいつ訪れようか」と旅のプランが頭に浮かぶだろう。
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季節替わりの特別会席が
美味なる記憶を、心に残す
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夕食は「日本料理 雲遊」でいただく。料理長の武田純一さんの巧みな技術によって表現される繊細な会席料理は、この土地で採れたものを、この土地の料理法で、この土地で食すという「三土料理の哲学」がテーマ。うつわは坂倉善右衛門さん、田原陶兵衛さん、新庄貞嗣(しんじょうさだつぐ)さん、坂倉正紘さん、田原崇雄(たはらたかお)さん、坂倉新兵衛さん、金子司さんをはじめ、萩焼の名匠から気鋭の若手の作品を使用し、料理との共演も見事である。
仙崎漁港などから仕入れた魚介類は、館内の生け簀に放たれるため鮮度が抜群。野菜も地元産を基本とし、一品ひと品に山口の旬の美味が詰まっている。「美味しいものをつくりたい。ただそれだけです」と語る武田さんの料理は至極の口福をもたらしてくれる。
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大谷山荘 別邸 音信
住所|山口県長門市深川湯本2208
Tel|0837-25-3377
Fax|0837-25-3771
客室数|18
料金|1泊2食付4万2100円〜(2名1室利用時の1名料金、税・サ込み)
カード|AMEX、DC、DINERS、JCB、UC、VISA
チェックイン|14:00
チェックアウト|11:00
朝食|和食または洋食(レストラン)
夕食|和食会席(レストラン)
施設|大浴場、岩盤浴、レストラン、バー、ライブラリー、茶室、ショップ、エステサロン、ジム、庭園
インターネット|Wi-Fi
語りあった宿「松田屋ホテル」
山口県 宿の選び方・楽しみ方3選
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2|松田屋ホテル
3|ホテル楊貴館
text:Nao Oomori photo:Ryusuke Honda