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「Azumi Setoda」開業!アマン創業者エイドリアン・ゼッカさんが手掛ける日本旅館をいち早くレポート!

2021.3.1
「Azumi Setoda」開業!アマン創業者エイドリアン・ゼッカさんが手掛ける日本旅館をいち早くレポート!
整然と美しい旅館の外観。中央は玄関、奥に見える隣家も「Azumi Setoda(アズミ セトダ)」に合わせて外壁を自ら塗り替えるほど町の人は協力的だ

ホテルジャーナリスト・せきねきょうこさんが、3月1日に開業を迎えた尾道・瀬戸田の「Azumi Setoda(アズミセトダ)」にさっそく滞在してきました。ホテルラバーが憧れるリゾートブランドをつくり上げ、日本旅館をこよなく愛する世界的ホテリエが手掛けた日本旅館とは? いち早くその魅力をレポートします。

「Azumi Setoda」誕生で見えてくる、
世界的ホテリエがつくる日本旅館の流儀

Welcome Back to Japan、Mr.ゼッカ!瀬戸内海の景勝地として知られる「しまなみ海道」の一角に、「レモンの島」として知られる生口島(いくちじま)があります。わずか人口8700人のこの静かな島が、いま、3月1日に開業を迎えた日本旅館に沸いています。

若い力が結集され、島の未来を変えるだろうと期待される日本旅館「Azumi Setoda(アズミセトダ)」。島の新たな発信基地ともなりそうなこの日本旅館をいち早く訪問してきました。

かつて30年以上も前に、世界中のリゾートの概念をすっかり変え、セレブリティやジェットセッターをくぎ付けにしたリゾート「アマンプリ」の創業者、エイドリアン・ゼッカが、この小さな島に日本旅館を開業させます氏が長年夢にまで見た「RYOKAN」の1号店が、ついに、この瀬戸田で門を開けるのです。

躯体を残して改装された本館(レセプションやレストランの棟)の内部から中庭を見る。中庭は1か所だけでなく、重要な個所の所々に造られ心を癒す空間に

瀬戸田の港近くには、かつて「塩の町」であり「潮を待つ」という意味を含む「しおまち商店街」が残っています。「Azumi Setoda(アズミセトダ)」はその入り口に近い場所に建ち、物は江戸期に世間を轟かせた豪商であった堀内家の屋敷でありました。財を成した豪商らしく手の込んだ豪奢な日本家屋は、その躯体を残した外部は美しく化粧直しされました。内部は、現在では手に入らない木造の鍼や柱、障子や様々な部分を残しながらも、East meets Westのモダンなテイストを感じさせる日本家屋として改装されています。

シンプルで上質な客室。雪見障子を上げれば、ベッドに居ながらにして坪庭が見えるよう設計。室内では、差し込む光の時間帯により障子に映る木々の影がアーティスティック

シンプルで上質感のある客室22室は、宿泊棟ごと新たに建てられています。1本1本の庭の木々や石にまで気を配り、新旧の融合する格式高い日本家屋の醍醐味を、建築やデザインの匠たち、アーティストたちが、繊細に、時に大胆に、さらに念入りに計算しつくして日本旅館に仕上げていました。細やかで温かな宿の使い勝手の良さは、Mr.ゼッカと、氏のDNAを継ぐ運営代表者の心意気が見え隠れしています。

各客室の風呂には深めの湯船が設置されゆったりと浸かれ、洗い場もある日本式。旅館の玄関を出れば真ん前には銭湯「yubune」もあるのでお湯を楽しめる

町の人たちは、正直、この建物の正体に驚きを隠せない様子ですが、同時に、これほどの宿ができたことを誇らしげに話す人に多く出会いました。スタッフもそんな町の人々を大切に思い、島を挙げて盛り上げたいと望んでいます。宿の前を通りすがる人々は、建物を見ないふりをしつつ詳細に観察しているようですし、瀬戸田地区以外の住人達も見物にやってきています。

微笑ましい話を聞きました。「地元の方々に向けたオープンルームに、200枚ほどのお知らせを配って周辺の町民を招待したら、500名近い人が、きちんとお洒落をしてやってきてくれた」と、宿の関係者は嬉しい悲鳴でした。

銭湯「yubune」の女湯。この日は生口島らしくレモンを浮かべてレモン風呂に。壁のタイルには名物のタコ、魚など、情緒ある瀬戸内海の情景が。タイルの絵柄は女湯は夜の瀬戸内、男湯は昼間の様子を表している

宿の前につくられた「yubune」(銭湯の他、宿泊ができるリーズナブルな客室が揃う施設)は、回数券のような島民割引も準備中。島と共に賑わいを獲り戻し、ご近所の「しおまち商店街」を盛り上げ、“島全体を元気に”、と、町興しの意図が基盤とする「Azumi Setoda」の流儀は、地域への敬意の念を表し、温かなファミリーのような人との繋がりにあります。それはエイドリアン・ゼッカさんが、長年、世界中で育んできたことでもあるのです。

賑わう街の姿や人々が行き交う商店街の様子が、手の届く未来に透けて見えています。

夕食のコース中の一品。その日の新鮮な魚を調理し料理を一度披露、その後ゲストに取り分ける。この日はアカメバルの酒蒸しにバルサミコとオリーブオイルのソース

Azumi Setoda/yubune
住所|広島県尾道市瀬戸田町瀬戸田269
Tel|0845-23-7911
料金|Azumi Setoda約6万5000円(税・サ別、銭湯入浴込み、朝食込み)〜、yubune約2万円(税・サ別、銭湯入浴込み、軽い朝食込み)〜
 
 

≫公式サイトはこちら

 

ホテルジャーナリスト せきねきょうこ
仏国アンジェ・カトリック大学留学後、スイスの山岳リゾート地で観光案内所に勤務期間中に四つ星ホテルで暮らす。仏語通訳を経て94年から現職。

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