食事がより楽しくなる《蝶野秀紀》のうつわ
素材本来の質感にこだわった機能美あふれる日用の漆器
|注目のうつわ作家カタログ⑲
素材を大切にする作家もいれば、ひとつの技術を洗練させていく作家もいる。そんな彼らの個性に満ちた作品は、私たちの食事をより楽しいものに変えてくれる。あなたの暮らしをより豊かにするうつわを探してみては。
今回は、用の美に重きを置いた漆器づくりをつづける蝶野秀紀さんの木目を生かした日常に映えるうつわを紹介。
蝶野秀紀(ちょうの・ひでき)
1971年、京都府生まれ。大学にて物性物理学を専攻した後、メーカーに就職。30歳を目前に学生時代より好きだったうつわ作家の道を志し、石川県挽物轆轤技術研修所へ入所。現在は広島を拠点に、個展などで活躍中
学生の頃から頻繁にギャラリーに通っていたほどのうつわ好きという蝶野さんだが、大学卒業後はメーカーに就職。「30歳という年齢が近づき人生を見つめ直したときに、自分で何かを生み出してみたいと思ったんです」と、作家の道へと転換した。
蝶野さんが漆器を選んだ理由は、ものづくりの可能性を感じたため。「美しさを大切にする漆器の世界観は理解していますが、私自身あまりそこには興味がありません。使ってみたいと思わせる用の美にこそ魅力を感じるんです」と、軽さも耐久性もあり洗剤でも気軽に洗える蝶野さんの漆器は、まさに機能美あふれる日用品。「お正月などのハレの日ではなく、毎日の食卓で使ってほしい。漆器と聞くとハードルの高さを感じるかもしれませんが、使ってみれば気軽なものだとわかるはずです」
初期の頃より木目を生かした作品をつくり続けてきた蝶野さんだが、その理由は木そのものに大きな魅力を感じているため。中でも千差万別な木目をもつトチノキの幻想的なきらめきには、いまなお魅了され続けているという。
挽き目を残したり和紙を取り入れたりと、テクスチャーに一段とこだわりをもたせた作品は漆器の概念を大きく変えた。「漆器というジャンルや枠にはまらず、素材を生かした作品をつくっていきたいという想いは、ずっと変わりません。今後はうつわに限らず、素材の雰囲気を最大限に生かしたものづくりをしていきたいです」。
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text: Natsu Arai photo: Shimpei Fukazawa
Discover Japan 2023年12月号「うつわと料理」