食事がより楽しくなる《壷田和宏・亜矢》のうつわ
高千穂の力強い土を生かした おおらかな風合い
|注目のうつわ作家カタログ⑤
素材を大切にする作家もいれば、ひとつの技術を洗練させていく作家もいる。そんな彼らの個性に満ちた作品は、私たちの食事をより楽しいものに変えてくれる。あなたの暮らしをより豊かにするうつわを探してみては。
今回は、土の背景に思いを馳せて作陶をつづける壷田和宏さん・亜矢さん夫妻の力強さあふれるうつわを紹介。
壷田和宏・亜矢(つぼた・かずひろ/あや)
ともに1972年生まれ、愛知県立芸術大学陶磁専攻科卒業の壷田和宏さん・亜矢さん夫妻。愛知県長久手市に初の登窯を築いた後、三重県伊賀市を経て宮崎県高千穂町に移住。同地に住居兼工房を構え作陶する
恩師である鯉江良二さんに憧れて陶芸の世界に飛び込んだという壷田和宏さん。仕事場に置いて眺めることもある、鯉江さんの作品の高潔かつ壮健なところに、愛着と尊敬をもっているそうだが、土からむくりと起き上がってきたような壷田夫妻の作品にも、その想いは息づいている。「食卓で規格品のうつわとともに並ぶと、雑多で異質に見えるかもしれませんが、村々に手仕事があった時代の風景を思い出しながら使ってみてほしい。使うことで心が軽くなるような自然に近いものづくりがしたいんです」。そう願う二人が、出身である東海地方を離れ、作陶の地に選んだのは、日本の原風景が広がる宮崎県北西部の高千穂町。手つかずの荒野が広がる約3万坪の土地をならし、自らの手で住居も工房も畑もゼロから築いたという逞しさが、うつわにも投影されている。
「それぞれの年代や状況など、土の背景を思い浮かべて制作するのが楽しいんです」と、壷田夫妻の作品には高千穂の原土をはじめ、東海地方の蛙目土に鍋土、九州地方の赤土、白土、白磁土と、さまざまな土地の魅力が複雑に混ざり合う。うねるようなかたちも持ち味のひとつだが、その理由は「かたちは土が教えてくれる」ため。土の声に耳を傾けることで生まれるエネルギッシュなうつわだからこそ、陶芸家個人としての作品ではなく、時代や地域の産物として存在してほしい。これこそ、自然と生きる壷田夫妻の願いである。
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日本の焼物文化を継承した
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text: Natsu Arai photo: Shimpei Fukazawa
Discover Japan 2023年12月号「うつわと料理」