鹿児島・奄美大島エリア《伝泊》
集落文化を紡ぐ、
サステイナブルな宿(まち)づくり。
|九州観光まちづくりAWARD2023 金賞 宿(おもてなし)部門
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2022年、大きな反響があった、JR九州が創設した「西九州観光まちづくりAWARD」。2023年は、舞台を佐賀・長崎の西九州エリアから九州全域に拡大し、新たに「九州観光まちづくりAWARD」を発足! 今回は、2021年、世界自然遺産に登録された奄美諸島で、3つの宿「伝泊」を運営する建築家・山下保博さん。集落文化を次世代に伝えるべく、情熱的にまちづくりに取り組む「伝泊」。審査員が絶賛したその活動とは?
これからの観光は、集落の日常を楽しむ。
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伝泊 The Beachfront MIJORAでは、コンポストを自家農園の肥料として循環させたり、竹製アメニティを使用するなど、サステイナブルな取り組みも
奄美大島を代表する宿泊施設「伝泊」。キーパーソンは、奄美出身の建築家・山下保博さんだ。山下さんは、空き家問題を解決してほしいという集落の声を受け、古民家を改修した一棟貸しなど、3タイプの宿からなる伝泊を運営。伝伯とともにまちづくりの中心を担う、集落住民、観光客、高齢者、障がい者など多様なコミュニティの交流拠点「まーぐん広場」も手掛けている。「未来へつむぎ、稼ぐ、まちづくり」というコンセプトの下、文化、自然、人といった“集落の日常”を観光化し、おばあとつくる伝統料理体験や集落での収穫体験、住民との交流など新しい旅の楽しみ方を教えてくれる。
「この活動そのものが、750年以上続く奄美の集落文化を守り、島に交流や雇用を生む、幸せのイノベーションを起こしているのです」と山下さん。
さらに伝統工芸品・大島紬の再興、奄美の乱開発を防ぐための不動産業……、審査基準をバランスよく満たす幅広い活動に驚く。「まちづくりの先に目指すのは、誰一人、何ひとつ取り残さない社会です」と語る、山下さんの真摯な想いに審査員一同、胸を打たれた。
せきねきょうこさんは、「伝泊の取り組みは、今後世界的に注目され盛り上がっていくはずです」と期待を寄せた。伝泊に泊まれば、奄美の深部に触れて幸せな気分に満たされる旅になりそう。そんな予感を得させてくれる。
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伝泊がかなえる、島との接点。
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隣接するレストランでは自家農園で育てた奄美の食材を使った創作料理が楽しめる
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伝統的な茅葺屋根の高倉が特徴の「高倉のある宿」。高倉の下では、テラスのようにお茶や食事を楽しみながら寛げる
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集落の祭り「八月踊り」や奄美に伝わる酒席での遊び「ナンコ遊び」など、集落の文化に触れられるのも魅力
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奄美のまちづくりの主役は、島のおじい、おばあ。交流拠点・まーぐん広場では島の方言が聞こえ、集落に出れば、おじいが歴史や町並みなどを教えてくれ、観光客も日常に加われる
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滞在については、奄美に詳しい伝泊スタッフに相談を
地域を、人を元気にする、
未来の観光の在り方。
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「伝泊とは、まちをつくること」と話す山下さん。その言葉通り、伝泊の3つの宿を中心に、集落住民や生産者、アーティスト、観光客の交流が生まれている。皆を幸せにする、観光×福祉×集落の理想的な好循環に注目したい
伝泊
Mail|amami@den-paku.com
https://den-paku.com(宿・レストランなど)
www.machizukuri.yamashita-yasuhiro.net(まちづくりについて)
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「花の香酒造」
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1|九州観光まちづくりAWARD2023、はじまりました。
2|大分・別府エリア「BEPPU PROJECT」
3|鹿児島・奄美大島エリア「伝泊」
4|熊本・和水町エリア「花の香酒造」
5|福岡・小倉エリア「小倉縞縞」
6|鹿児島・頴娃町エリア「頴娃おこそ会」
7|鹿児島・阿久根エリア「下園薩男商店」
8|九州観光まちづくりAWARD2023 参加者9組
9|九州の素晴らしいヒト、モノ、コトを再発見する旅に出よう。
text: Nozomi Kage photo: Hiromasa Ohtsuka
Discover Japan 2023年10月号「私を癒す15の旅。/九州」