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熊本・和水町エリア《花の香酒造》
地域と共生する“産土”の日本酒を求めて。
|九州観光まちづくりAWARD2023 金賞 食部門

2023.10.4
熊本・和水町エリア《花の香酒造》<br>地域と共生する“産土”の日本酒を求めて。<br><small>|九州観光まちづくりAWARD2023 金賞 食部門</small>
清流菊池川が育む、緑豊かな和水町は、2000年にわたる稲作文化が残る地だ。現在、菊池川流域の75町歩(約75ha)の田んぼで、花の香酒造の酒米を育てている

2022年、大きな反響があった、JR九州が創設した「西九州観光まちづくりAWARD」。2023年は、舞台を佐賀・長崎の西九州エリアから九州全域に拡大し、新たに「九州観光まちづくりAWARD」を発足! 今回は、日本酒「産土(うぶすな)」を醸す花の香酒造。今回、6代目当主・神田清隆さんの独自の哲学や果てしない知識量が、審査員の心を揺さぶり食部門金賞を受賞。日本酒を通じて地域の文化を発信するその取り組みとは。

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原点進化する酒造り。


自然農法、木桶造り、神事の継承。すべては、風土を守るため。

江戸時代から続く自然農法、菌を生かす木桶での酒造り、地域の人たちとの神事の継承など、土着の文化を守る花の香酒造。かつて熊本で盛んだった馬耕栽培のために、北海道からやってきた白馬・菊之進は、大切な仲間の一員だ。その名には、菊池川の未来と進んでいこうという願いが込められている。photo: 鈴木規仁

熊本の北部、菊池川水系の和仁川(わにがわ)と田園が広がる和水町(なごみまち)にある花の香酒造。6代目当主・神田清隆(かんだ・きよたか)さんは、酒造りの哲学に「産土(うぶすな)」を掲げる。産土とは、大地の恩恵やものを生み出す母体を意味する古語。自然への敬意、菌や微生物との共存、そして意思をもった人が導くという考えの下、阿蘇山の恩恵を受けた岩清水を仕込み水に、菊池川流域で栽培した酒米のみを使うなど、土着の風土を生かして酒を醸している。

自然の恩恵や菌、微生物による生酛造りに欠かせないのが木桶。微生物が木の隙間に存在する木桶で仕込むことで、自然のメカニズムが循環する酒造りの環境をつくり上げている

神田さんの酒造りはさらに深まり、江戸時代に天下第一と評された幻の米「穂増(ほませ)」を、菊池の農家が40粒の種籾から復活! その米を使用し、新たな日本酒「産土 穂増」を誕生させた。

生酛(きもと)造り、木桶醸造など江戸時代の製法に、米のたんぱく質含有量を測るケルダール窒素分解装置といった最新の分析装置を取り入れる酒造りは原点回帰ならぬ“原点進化”といえる。文献を読み解き、研究を重ね、ここにしかない酒を追い求める神田さん。「日本の文化と精神性を発信する酒造りを広めていきたいです」と話す。

小正月である1月15日に行う火祭り「どんどや」、「もぐら打ち」など、土地に伝わる神事や祭り、農耕儀礼を、地域の人々と守りながら酒造りを行っている

審査員の福田里香さんは「神田さんの哲学、人間力に圧倒されました。これから先が楽しみです」と感動しきり。

酒蔵には、バーやショップ、写真家のハービー・山口さんによる酒造りの過程を展示するギャラリーもある。花の香酒造の酒造りを五感で味わいに、ぜひ訪れてみてはいかがだろう。

産土 2022 穂増(ほませ)
江戸時代の熊本の在来種・穂増を自然農法で復活! 爽やかなバナナのような風味と微生物の多様性を感じる複雑味、奥深い旨みは唯一無二の味わいが広がる

価格|3280円/720㎖
原料米|熊本県菊池川流域 穂増100%
日本酒度|非公開
酸度|非公開
アルコール度数|13度

旅の目的地にしたい酒蔵の美味しい体験。

酒蔵の一部を改装した「花回廊」では、テイスティングを楽しむことができる(3種1000円)。2023年11月には、熊本在来種の米「穂増」や「香子(かばしこ)」をかまどで炊き、米からご飯に変わる瞬間の、水分をたっぷり含んだ「煮えばな」を味わえる食事処がオープンする予定だ

花の香酒造
住所|熊本県玉名郡和水町西吉地2226-2
Tel|0968-34-3333(花回廊)
営業時間|花回廊10:00~16:30
定休日|年末年始
www.hananoka.co.jp

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「小倉縞縞」

 
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text: Nozomi Kage photo: Hiromasa Ohtsuka
Discover Japan 2023年10月号「私を癒す15の旅。/九州」

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