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豊かな自然と独特な文化が息づく
ユニークな徳之島【前編】
《世界自然遺産をめぐる旅》

2021.9.7
豊かな自然と独特な文化が息づく<br>ユニークな徳之島【前編】<br><small>《世界自然遺産をめぐる旅》</small>
北東の海岸に沿って1.5㎞にわたり白砂が続く「畦プリンスビーチ」。サンゴ礁に守られ、浅瀬が広がる海は、色とりどりの熱帯魚が見られるシュノーケリング天国

2021年7月26日、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」が新たに世界自然遺産に登録されました。各エリアの見どころや評価されたポイントを「生物多様性」をキーワードに紹介していきます。

豊かな自然と文化がある子宝・長寿の島

奄美群島で2番目に大きい徳之島。アマミノクロウサギが生息する原生林のすぐ近くに、島民の営みと伝統があるのが魅力。ギネスブックで長寿世界一を出した長寿の島、そして子宝の島でもある。

奄美大島の南西約45㎞に位置し、山あり丘陵地あり、隆起サンゴ礁からなる石灰岩の台地ありと地形の変化に富んだ島。山々の裾野に広がる平地では、古くからサトウキビ畑などの耕作地が発展し、豊かな自然と島民の暮らしが隣り合わせにあるのが特徴だ。現在、人口は約2万3000人で、徳之島町、伊仙町、天城町と3つの町からなる。集落には縄文時代の遺跡も多数。なんと火山灰の下の地層から旧石器時代の石器も出ている。400年以上続く闘牛の歴史はいまも受け継がれ、島民が熱狂する闘牛大会は全国的にも有名だ。

島の北部と中部に、島のサイズに対しては標高が高い山々と深い森が広がっている。最高峰の井之川岳(645m)や北部の天城岳(533m)には雲霧帯や渓流帯があり、この島ならではの貴重ないきものの宝庫。徳之島は長らく奄美大島と陸続きだったため、動植物の生態系はよく似ていて、奄美大島のマスコット的存在であるアマミノクロウサギは徳之島の森にも生息している。

また、徳之島といえばきれいな海が自慢だ。サンゴ礁の浅瀬にコバルトブルーの静かな海が広がる「プリンスビーチ」は透明度が抜群。ゆうゆうと泳ぐ魚が遠目に見える。白砂が2㎞にわたって続く「喜念浜」では、朝夕は闘牛のトレーニングや、のんびりと散歩をしている牛の姿が見られることも。ダイバーに人気の「千間海岸」ではかなりの確率でウミガメと出会える。冬にはザトウクジラが子育てにやってくる。

雨風や荒波の浸食により形成された奇岩「犬の門蓋(いんのじょうふた)」。通称メガネ岩。展望台から大海原を望み、冬季はザトウクジラが姿を現すことも

見どころがコンパクトに凝縮した徳之島では、アマミノクロウサギなど夜の森のいきもの観察、夏のウミガメ産卵観察、集落での黒糖づくりや史跡をめぐるまち歩きといったツアーが盛りだくさん。この島の魅力を知ることで、何百年も続いてきた自然と人との良好な関係をつなげていきたい。

 

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text: Yukie Masumoto 写真提供=徳之島観光連盟
Discover Japan 2021年8月号「世界遺産をめぐる冒険」

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