PRODUCT

渋谷パルコ《田村一 個展》
天然の釉薬で生み出す、唯一無二のうつわ

2025.3.21
渋谷パルコ《田村一 個展》<br><small>天然の釉薬で生み出す、唯一無二のうつわ</small>

即興演奏のように感性で作陶し、自由なフォルムを生み出す陶芸家・田村一さん。近年はさらに、地元・秋田県の自然素材を活用し、穏やかで力強い風合いのうつわを表現する。東京・渋谷パルコのDiscover Japan Lab.では、2025年3月22日(土)~3月30日(日)にかけて、《田村一 個展》を開催。田村さんが追求する天然釉の世界、その魅力をご紹介します。

Discover Japan公式オンラインショップでは、本展の一部作品を3月25日(火) より順次販売予定です。(日程・内容が変更になる場合があります)

田村 一(たむら はじめ)
早稲田大学大学院修了後、東京で作家デビュー。2002年に栃木県益子町に拠点を移し制作。2011年より地元・秋田県で作陶を開始。

素材と向き合い、試行錯誤。
釉薬が生み出す色の世界

茶やグリーンなど、色とりどりの色素は、鉄などの鉱物が溶け出したもの。天然色が美しい

田村一さんが陶芸の世界に入ったのは大学時代。サークルでうつわづくりにのめり込み、そのまま東京で作家活動を開始した。

「当時より天草陶石を使い、青白磁のうつわをつくっていました。いまよりもシャープな雰囲気を意識していましたね。栃木の益子町に拠点を移した際も同じ作風だったのですが、14年前に秋田へ戻ってから、徐々に意識が変わっていきました。せっかく帰郷したのだから、地元の素材を使ってみるのもおもしろいかなと」

そこで着目したのが天然の釉薬だった。きっかけは、気鋭の実力派酒蔵「新政酒造」とのコラボレーション企画にあった。

地元の自然素材を活用し、理想のうつわを追求
新政酒造から譲り受けているもみ殻の灰。「水に溶けづらく扱いにくい素材ですが、その分うまく焼き上がったときの感動はひとしおです」

「2017年に『ユリイカ』という酒を造ったとき、鵜養での米づくりの話をしていて、それが気になり鵜養に足を運ぶようになったんです。種まきをしたり田植えをしたり、何度も田んぼに通いました。いよいよ稲刈りの時期になると、畑の隅にもみ殻が山積みにされている光景が目に入って。これを釉薬にしたらおもしろそうだなと思い、蔵にお願いして譲ってもらったのが天然釉との本格的な出合いでした」

 学生時代から自然由来の釉薬を試してきたため、ある程度扱い方は把握していた。実際にもみ殻を焼いて灰をつくり、アク抜きを何度も行い、ようやく完成したもみ灰釉で発色の具合を幾度となくテストしていく……。この年単位に及ぶ地道な作業にめまいがしたが、同時に、合成された素材では経験し得ない手間と出来上がりの不安定さを楽しんでいる自分がいた。

土の声を聞きながら、即興でろくろを挽いていく。

「おかげで釉薬に対する向き合い方が変わりました。次にまた同じ質感が出るとは限らないので、毎回濃度を測定したり、配合を変えたり、まるで化学実験をしているみたいです」と田村さんは笑う。

 天然の釉薬を使いはじめて5年。いまでは釉薬の原料となる灰が各地から届く。いうなれば「灰ネットワーク」が年々拡大している。雑木の灰から旅館の囲炉裏の灰まで種類も多彩だ。

「最近アク抜きを終えたのが、沼山大根といういぶりがっこ用の大根を燻す際に出る灰です。畑で燻すので土が混ざり、焼成すると土の中の鉄分が溶け出して茶色い模様となって現れるんです」

 さらに大根の灰をもみ灰と混ぜてうつわにかけると、もやもやとした幻想的な景色が現れることがわかった。その姿を古来中国では兎の毛にたとえる一方、日本では稲穂(禾)と呼んでいたことから、両者を合わせて「兎禾」シリーズと命名。天然釉ならではの温もりや揺らぎが見事に表現されている。

ワイングラスはろくろで成形した後、仕上げに手びねりでつくったヘビをからませている

田村さんの作品といえば、既成概念にとらわれないかたちも魅力。極限まで口縁を曲げたり、モチーフを貼り付けたり、自由闊達なデザインは食卓を華やかに盛り上げてくれる。今回の個展では、ほかにも、デビュー当初につくっていた青白磁シリーズも久々に登場。作風の違いを楽しみたい。

趣深い色合いと造形に出合う
《田村一》作品ラインアップ

 

集水 片口 yzk’23

価格|1万1000円 サイズ|W115×D103×H70㎜ 重量|249g

ヘラで刻みを入れたうつわを広げるときにできるひだが、独特の風合いを出している。片口としての利用もいいが、酒盃としても美味しく飲める。

 

集水 盃 兎禾

価格|1万1000円 サイズ|Φ65×H55㎜ 重量|116g

もみ灰を使った「兎禾」シリーズ。ころんと収まりのいいかたちで、日本酒がよく合う。兎の毛のような、稲穂のような幻想的な景色を楽しんで。

 

集水 盃 tfarm’22

価格|9900円 サイズ|Φ70×H45㎜ 重量|93g

いぶりがっこ用の大根を燻す際に出る灰を混ぜて釉薬に。からみ(茶色の模様)がアクセント。マットな質感で手にしっとり馴染む。

 

楽園の蛇 yzk’23

価格|1万6500円 サイズ|W78×D76×H120㎜ 重量|215g

アンティークの重厚なワイングラスをモチーフにしたもの。2025年の干支・巳にちなみ、ヘビをからませている。淡いピンク色がワインに合う。

 

line


個展作品の一部が
オンラインで買える!


公式オンラインショップ
 

田村 一 個展
会期|3月22日(土)~3月30日(日)
会場|Discover Japan Lab.
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1渋谷PARCO 1F 
Tel|03-6455-2380
営業時間|11:00~21:00
定休日|不定休
※詳細は公式Instagram(@discoverjapan_lab)にてご確認ください。

 


陶芸家・田村一さんについてもっと知りたい方はこちら
釉薬とフォルムを愉しむ。遊び心にあふれた田村一のうつわ
陶芸家・田村一さんのうつわ。秋田を映した自然のアップサイクル
田村一のうつわ「郷里の雪景色を映し出す青白磁」喫茶のひとときを豊かにする作家のうつわ

text: Misa Hasebe photo: Norihito Suzuki
2025年4月号「ローカルの最先端へ。」

東京のオススメ記事

関連するテーマの人気記事