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富山・立山町《ヘルジアン・ウッド》
日本の原風景に溶け込み、
“和ハーブ”と“サウナ”を楽しむ

2022.11.2
富山・立山町《ヘルジアン・ウッド》<br><small>日本の原風景に溶け込み、<br>“和ハーブ”と“サウナ”を楽しむ</small>

標高3000m級の立山連峰に、水深1000mの富山湾。その両方を一望できる場所に、誰しもが原体験を思い起こす美しい“村”がある。ハーブの香りに包まれて、自分自身と向き合う健やかな旅が叶う「ヘルジアン・ウッド」の魅力に迫る。

匂い立つハーブに包まれて
本物の健やかさを得る旅へ

ハーブ園「The Garden」で収穫したハーブ。お馴染みのローズマリーやレモングラス、タイムなどの西洋ハーブのほか、山椒や和薄荷、カキドオシなど、和ハーブも豊富

立山連峰の大パノラマと富山湾を望む、約10 haという広大な敷地に、ハーブ園、レストラン、スパなどが点在するヘルジアン・ウッド。付近一帯は、ハーブの香りに包み込まれている。
 
ヘルジアン・ウッドは、外用薬を中心とした薬の製造販売を行う前田薬品工業の代表を務める前田大介さんが、過労による体調不良をアロマに救われた経験から着想したという。

「ハーブが薬の原点であるということを知り、製薬会社として本当の意味で人を健やかにするためには、ハーブを育てて自社でアロマを抽出し、健康づくりに生かす第一歩を踏み出さなければならないと強く思ったのです」
 
工房で抽出したエッセンシャルオイルは、薬品製造の知見と技術を生かして加工し、オリジナルアロマブランド「Taroma」として展開している。さらに、食から人を健康にするレストラン、身体に直接アプローチするスパやサウナへと構想は広がり、現在はまるで“村”のように進化を続けている。
 
富山の大自然とハーブの香りで、人間本来の力を呼び覚ます。そんな感覚を味わえる場所だ。

The Workshop
朝くみの清水を使った水蒸気蒸留法で、ハーブ園で収穫したラベンダーなどからエッセンシャルオイルを抽出する工房。Taromaの販売やハーブティの提供、ワークショップの開催などを行っている
The Spa by Taroma
Taromaのオイルを使ったトリートメントメニューを、おのおのの症状や希望に合わせて組み合わせられるテーラーメイドの施術を行うスパ。ハーブの香りと、オイルのなめらかな肌触りが心も身体も癒してくれる
The Table
ヘルジアン・ウッドで収穫した作物や富山の食材を中心にしたコース料理を提供するレストラン。眼前に水田や大自然が広がっている。照明や個室の壁紙など、内装にもハーブが使われている
The Hive
2種類のサウナを有する半地下のホテル。建物ごと地中に埋まったような構造から、サウナと水風呂を楽しみながら自分自身と向き合い、ととのうための時間に思う存分没入できる
The Field
建築家・隈研吾さん設計による、木組みの三角屋根が特徴的な屋外スペース。地元食材を販売するマルシェなど各種イベント開催に使うほか、屋外ウェディング会場としても利用されている

土の中で没入する
ハーブサウナトリップ

複数人で浸かれる広さの水風呂は、最深部が130㎝。風呂の縁と水面が一体化したインフィニティバスで、この水風呂のために井戸を掘り、立山の湧水を絶やさず注ぎ続けている

ヘルジアン・ウッドに2022年5月にオープンした「The Hive」は、極上のサウナ体験と宿泊を同時に楽しめる、唯一無二のサウナホテルだ。「ミツバチの巣」を意味するその名の通り、六角形の箱が半分地中に埋まっている特徴的な建築で、階段を降りて地下に潜るように中へ足を踏み入れる。

サウナプロデューサーとして活躍する川田直樹さん(カワちゃん)監修、KUROFUNE Design Holdings社設計によるサウナは、仲間と囲炉裏を囲むように楽しむ「IRORI」と、寝転んでゆったりと景色を眺められる「ENGAWA」の2室。温度帯が異なるため、同じ空間にありながら異なる時間の進み方を感じられるのも特徴だ。自家製のアロマウォーターによるロウリュも楽しみのひとつ。立山連峰の雪解け水を源泉とする水風呂やととのいスペースには心地よい風が吹き抜け、水風呂からハシゴを上れば、芝生に覆われた屋上へと抜けることも可能だ。

大自然に抱かれながら、地中、サウナ、水風呂、地上と自由に行き来をして自分のすべてを解放する体験は、ほかでは得難い時間になるに違いない。

最高温度が90℃に達するIRORIはアクティブにサウナと水風呂を行き来する人におすすめ
80℃前後の少しマイルドなENGAWAは、寝そべりながら外の景色を楽しめる
個室になっている寝室は、シングルルーム2室とダブルルーム1室で、“おこもり”に最適なつくり。地中に埋まった建物ゆえに外の音が遮断され、余計なものに邪魔されずにぐっすり眠れると好評だとか
コンパクトなキッチンを備えたダイニングと、畳の小上がりになっているリビングスペース。調理器具や皿もひと通り揃っており、滞在中に富山の食材を買ってきて、皆で料理を楽しむことも可能だ

うつわと食材。
富山の恵みを、見て触れて取り込む

水田とハーブ園の中に浮かぶように建つレストラン「The Table」で提供されるのは、季節ごとの旬の食材の魅力を引き出したコース料理だ。上に紹介したのは、料理7品とデザート2品、そして季節のハーブティーを提供する1万2000円のコース。
 
富山・滑川出身の熊野シェフは、東京やフランスのレストランで経験を積んだ後、2022年2月にUターンしてThe Tableのシェフに就任した。

「富山で働くようになってから、牡蠣や牛肉など、それまで富山のイメージになかった食材の素晴らしさに気づきました。蛍烏賊やブリだけではない、富山の食のポテンシャルの高さをどんどん発信、提案していきたいです」

ガラス張りの店内は、「このお米はこっちの水田、ハーブはそっちの畑で採れたもの。水はあちらにある湧き水を使って……」など、料理と食材を結び付けて富山の魅力をプレゼンできる場所にもなっている。料理を彩るうつわも県内の作家の作品であり、この地ならではの食体験にひと役買っている。

確かな食材とホスピタリティ、風土が、自然と心身を満たしてくれる。

1品目 トマト/蛍烏賊
富山産のトマトを使った冷たいジュースと、その時々の魚を材料にしたすり身の揚げ物で、温度のコントラストを効かせた一品。旨みが広がるホタルイカの燻製は朝日町産のもの
2品目 岩牡蠣/柿酢
朝日町の漁師から直送される岩牡蠣は下に氷を敷いて冷たく保ち、ビネガーのジュレでさっぱりとシンプルにいただく。エディブルフラワーやハーブを散らして見た目も華やかに
3品目 鴨/蕎麦
鴨もも肉のコンフィのほぐし身をレバーペーストとともに和え、蕎麦粉のガレットで包んだ一品。ヘルジアン・ウッドで収穫したジューンベリーのコンフィチュールを添えて
4品目 鮎/旬野菜
鮎は炭酸水を使用したサクサクの衣を付けた軽いフリットで。トマトとパプリカのピクルス、ケールのさっぱりサラダと合わせた。3品目との対比で、軽さを意識した一品
5品目 スズキ/白海老
トムヤムクンのイメージでつくり上げた一品。軟らかく蒸したスズキにカニのラー油をのせ、レモンバームで香りづけした白海老の出汁をかけて、スープ仕立てでいただく
6品目 立山放牧牛ヒレ/クレソン
脂ののった立山放牧牛のヒレ肉をシンプルなステーキに。ハーブ園で収穫したクレソンを添え、余計なことはせずに肉の旨みを存分に味わってもらうための潔いひと皿
7品目 米/キャベツ
レストランの目の前の水田で栽培した自家製米を、魚の出汁で炊いてリゾット仕立てに。焦がしキャベツとニンニクの風味が香る。からすみを散らして色合いも華やかに
8品目 洋梨/ビール
立山産の洋梨のジュースとビールのグラニテを合わせた冷たいデザート
9品目 バタバタ茶/ハチミツ
茶筅で泡立てるようにして飲む富山のローカル茶・バタバタ茶を使ったアイスクリーム

1泊2日の滞在イメージ
DAY1
15:00 「ヘルジアン・ウッド」到着
15:30 ハーブ園「The Garden」を散策
16:00 「The Hive」チェックイン
16:30 ハーブサウナでととのう
18:00 「The Table」で夕食

DAY2
07:00 朝サウナでととのう
08:30 朝食
10:00 チェックアウト
12:00 周辺のレストランで昼食
13:00 「The Workshop」でアロマづくり
14:30 「The Spa」でハーブトリートメント
16:00 富山駅へ

ヘルジアン・ウッド
住所|富山県中新川郡立山町日中上野57-1 
Tel|076-482-2536(10:00〜18:00)、080-5853-6224(The Spa/完全予約制)
営業時間|The Table/11:00〜15:00(L.O.13:00)、17:00〜22:00(L.O.19:00)、
The Workshop/10:00〜16:00、
The Spa/10:30〜20:00
定休日|水曜(The Spaは第3水曜、不定休)
アクセス|車/北陸自動車道立山ICから約10分、JRほか富山駅から約35分、富山地方鉄道立山駅から約15分
施設|The Table、The Workshop、TheSpa by Taroma、The Field、The Garden、The Hiveなど
https://healthian-wood.jp

The Hive
Tel|070-8813-6905(9:00〜20:00)
料金|1棟貸切/2名8万円〜(最大6名、税・サ込、食事代別)、デイユース/12:00〜14:30(3日前までに宿泊がない場合は、7:00〜9:30、12:00〜14:30、16:00〜18:30、19:30〜22:00)
カード|AMEX、DINERS、DC、JCB、UC、VISAなど
IN|16:00
OUT|10:00
 

≫公式サイトはこちら

 
 

text: Miki Yagi photo: Mariko Taya
Discover Japan 2022年10月号「旅で、ととのう。/西九州新幹線開業!特別企画『九州』」

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