能登牛と石川の野菜をめぐる旅。
立川直樹がゆく「石川 冬の食紀行」後編
歴史に裏打ちされた、深淵な石川県の魅力を、プロデューサー・立川直樹氏と写真家の宮澤正明氏がお届けする。「石川 冬の食紀行」と題しフォーマルな、そして市井の冬の食にフォーカス。石川への気持ちがぐっと引き寄せられる「肉」と「野菜」の食旅だ。
プロデューサー
立川直樹(たちかわ なおき)
1949年生まれ。メディアの交流をテーマに音楽、映画、美術、舞台など幅広いジャンルで活躍するプロデューサー・ディレクター。音楽評論家・エッセイストとしても独自の視点で人気を集める。『I Stand Alone』、『ラプソディ・イン・ジョン・W・レノン』など著書多数。
アートな街、自然と愉しむ、アートな冬食
〈石川 冬の食紀行〉は、終わりのない旅だ。舌と胃袋が喜び、景色も絵画や映画のようで、それらが一体となり、時空を超えた世界へと連れて行ってくれる。
“能登牛を全国ブランドに!”という思いで能登牛を生産し、「てらおか風舎」という店舗も経営している寺岡畜産の寺岡一彦専務は「石川県は世界農業遺産に認定され、農業には環境がよいです。ということは牛も世界一の場所で育っているし、オレイン酸の含有率が非常に高い。口溶けのよい肉です」と自信のほどを語ってくれた。実際すき焼き、しゃぶしゃぶ、刺身で食べる能登牛は格別だ。
門前の黒島近くにある〈ハイディワイナリー〉では、実に美味しいワインが造られていた。
日本海を望む、緩やかな丘でブドウをつくり、能登のテロワールを尊重したワイン造りを目指している高作社長。「いまは7品種。白ワインにも注力して4品種、赤ワイン3種でやっています。白ワインは特に青魚や、身の締まった魚によく合うので、金沢のお寿司屋さんにも使いやすいと言っていただいています」と話してくれた。「薄利多売の大量生産というのは絶対に目指さないことにしています」という、彼の強い気概も好感がもてる。
そして石川県で食の仕事にかかわる人たちは、誰もが食を愛し、仕事を楽しんでいる。ころ柿をつくっている人たちの姿は美しいパフォーマンスを見ているようだったし、昨年6月に築100年を超す古民家に移転して人気を呼ぶ“Blue Bar藍”では、ころ柿のマスカルポーネチーズ詰めという、美味しいものが食べられる。
もちろん「和もの」も外せない。金沢春菊や源助だいこんなどの野菜のネタも充実している、おでんの“よし坊”は日本酒の品揃えもいい店だし、金沢駅に近い場所で4代続く“髙﨑屋”の加賀れんこんの蓮蒸しは、もうこれを食べるためだけでも出掛ける値打ちがある。加賀野菜の定番、金時草としらすの酢のもの、松茸とマッシュルームの茶わん蒸し……。金沢といえば、僕はどじょうのかば焼きが大好物だが、ここで食べたかば焼きは間違いなく一番だった。そこに悦楽の時間が流れていく。
宮澤正明 写真展
「石川を撮る」
本連載にて独自の視点を惜しみなく披露してくれている写真家、宮澤正明氏。神社仏閣、自然の本質と肢体、人の景色、海幸山幸……宮澤正明氏の眼がとらえた作品群で、石川県で醸成を重ねた、あらゆる文化の奥深さを体感できる展示となりそうだ。
宮澤正明 写真展 「石川を撮る」
開催場所・期間・時間|第一会場 しいのき迎賓館(石川県金沢市広坂2-1-1) 2022年2月5日(土)〜24日(木) 9:00〜22:00/第二会場 尾張町町民文化館(石川県金沢市尾張町1-11-8) 2022年2月5日(土)〜24日(木) 10:00〜18:00
※宮澤正明(写真家)×立川直樹(プロデューサー)の「オープニングトークショー」を予定(於|しいのき迎賓館2月5日(土)18:00)
問|076-262-2611(平日のみ10:00〜18:00)(ケィ・シィ・エス)
立川直樹さんが訪れた石川旅を追体験!
≫石川県公式サイトはこちら
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text: Naoki Tachikawa photo: Masaaki Miyazawa
2022年2月号「美味しい魚の基本」