落雁 諸江屋の「福徳煎餅」
福田里香の民芸お菓子巡礼
民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香さんの《民芸お菓子巡礼》。今回は民藝運動と深い関わりを持つ金沢の老舗「落雁 諸江屋」の正月菓子「福徳煎餅」を紹介します。
福田里香(ふくだ・りか)
お菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍。8年間にわたり続いている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中
「落雁 諸江屋」の「福徳煎餅」は、金沢の伝統的な正月菓子です。おめでたい俵や打ち出の小槌、福袋をかたどった煎餅皮を割ると、中には金華糖や土人形などのミニチュア版民芸玩具が入っていて、そのモチーフは約30種類と多彩。
新春の席で楽しむ遊びの要素が色濃く、皆で割れば、祝賀気分が盛り上がること請け合い。割った煎餅はお汁粉に入れたり、チーズを塗っても美味しい。
実は諸江屋は民藝運動にも縁が深いのです。民藝の創始者の柳宗悦、陶芸家の濱田庄司に続いて、日本民藝館の3代目館長に就任したインダストリアルデザイナーの柳宗理は、木製の菓子型に用の美を見出しました。
宗理は在任中3回も民藝運動の機関誌『民藝』で「世界の菓子型」、「日本の菓子型」などの特集を組み、大規模に菓子型を集めた企画展も開催しました。1972年9月号の巻頭特集は「加賀の菓子型」でした。これらの特集や展示に協力し、数多くの菓子型を貸し出したのが諸江屋です。菓子型を展示した本店隣の「諸江屋落雁文庫」も必見。
落雁 諸江屋
住所|石川県金沢市野町1-3-59
Tel|076-245-2854
営業時間|9:00〜19:00
定休日|元日
http://moroeya.co.jp
text: Ricca Fukuda photo: Wakana Baba
2020年1月号 特集「いま世の中を元気にするのは、この男しかいない。」