海外VIPへのプレゼントに。石川県・輪島の伝統工芸品隈研吾デザインの輪島塗、ついに完成!
地域の魅力を最先端のクリエイションを通して再発見する「DESIGNING OUT」。隈研吾さんとともに取り組んだ地域商品開発プロジェクトの全貌を詳報します。
木地の器
「木地」とは、木からベースのかたちを生み出す工程のこと。輪島塗で木地師は4職種に分かれており、この器はろくろを挽いて丸いかたちにする「椀木地師」によってつくられた。また、木目がはっきりした表情豊かなケヤキを材料としたのも、輪島塗を知り尽くした木材のプロの手によるもの。
ファルシ、真蛸、松茸リゾット by 植木シェフ
松茸とアオリイカ、いしるを野草茶で蒸したひと口サイズのリゾットや、能登産サンマルツァーノトマトにカラスミといばらのりを詰めたファルシなどのアミューズ3品が木地の器に盛られた。
布着せの器
「布着せ」とは、椀の縁など木地が薄い部分に漆で布を貼って補強すること。輪島塗の堅牢さの秘訣のひとつだが、通常の輪島塗ではこの布は、その後の工程によって隠れてしまう。それをあえて見せることで、“縁の下の力持ち”的な存在の「布着せ」のプロセスをフィーチャーした。
仔牛カルパッチョ by 植木シェフ
このイベントのために肥育されたタンポポファームの仔牛を、減圧することで味を入れる「ガストロバック」で調理。ソースにはコンカイワシといしるのパウダーを使い、山と大地と海を表現した。
下地の器
輪島塗の肝の工程が「下地塗」だ。江戸初期にその技術が確立し、以来輪島の職人しか使えない“輪島地の粉”とは、輪島の珪藻土を燻焼きにして粉砕し、ふるいにかけたもの。漆と混ぜて器に塗ることで、硬く丈夫な下地層が出来上がる。粒子の粗いものから数回塗り重ね、緻密な地肌となる。
鮑の熾火焼き by ジョシュアシェフ
輪島の特産品だが、米国では入手困難といわれる黒アワビをジョシュアシェフが熾火で調理。地の粉を混ぜて塗ることでマットな質感となった「下地の器」の上で、黒アワビが見事に引きたっている。
中塗の器
「中塗」は刷毛で中塗漆を塗っていく工程。黒光りするつややかな地肌は、一見完成品に思えるが、輪島塗は塗りと研ぎを幾度も繰り返し最終形となるため、プロセスの状態だ。幾重にも窪みのついたかたちは、製作中の輪島の職人たちから「どんな料理と合わせるのだろう」と話題になっていた。
ノドグロと藻屑蟹 by 植木シェフ
胡桃入りのエスカルゴバター、モクズガニとカメノテのビスクソース、ノドグロに甘海老と、森・川・海の恵みをひと皿に。「中塗の器」の窪みには色鮮やかなビスクソースが流され、存在感を放っていた。
上塗の器
上質の上塗漆を裏表と2回ずつ塗って、ほんの少しのちりや埃も丁寧に筆や鳥の羽で拾い上げ、底つやとなめらかな光沢感のある器に仕上げた。漆のもつ美しさを余すところなく表現している。言うまでもなく、ここまでの工程があるからこそ、この奥深い光沢となめらかな肌が出来上がる。
海を渡ったイノシシ by 植木シェフ
能登半島から海を泳いで能登島に渡ったイノシシは、ミネラルたっぷり。食事会場となった金蔵地区の藁で藁焼きし、ムカゴや栗、シイタケ「のと115」をあしらって、“能登の里山”を表現し尽くした。
加飾の器
輪島塗の装飾である「呂色」、「沈金」、「蒔絵」の加飾技法のうち、呂色と沈金を施したのが「加飾の器」。上塗した器をさらに研炭と人の肌で磨き上げる呂色師の技に、1本だけぐるりと細いラインを入れるという職人技が煌めく器に仕上げた。落ち着きと華やかさが同居する。
フォアグラ by 植木シェフ
植木シェフの長年のスペシャリテのフォアグラを、干し柿、川魚のウグイとともに熟れ寿司にし、なんとデザートとして提供。塩味、甘み、苦み、酸味、旨みの五味を一度に表現した贅沢な一品に。
Size|W250×D250×H94㎜ ※重ねた状態
Price|49万5000円(税込)
text=Tomoko Honma photo=Kazuya Hayashi,Norihirto Suzuki,Jiro Otani
2019年12月号「人生を変えるモノ選び。」