佐賀《カレーのアキンボ》
東京→佐賀へのUターンでかなえた夢。
土地の恵みを表現するスパイスガストロノミー
佐賀市にある「カレーのアキンボ」は、完全予約制・コースのみという営業スタイルで全国のカレーフリークを魅了するガストロノミーだ。東京で名を馳せながら故郷にUターンした店主・川岸真人さんに話をうかがった。
川岸さん、何に惹かれて佐賀へ移住?
カリっと歯応えのあるカリフラワー、シャキシャキのレンコン、ほっくりしたサツマイモ……。それぞれの食感が輪郭を帯びながら、スパイスで引き出された味わいが口の中でじんわり広がる。
「スパイスはあくまで補助。うちの料理の主役は野菜なんです。それは佐賀の食材があるからこそ。お客さまに『美味しいですよね』って無意識に言ってしまうこともあります」
そう柔和に笑う川岸真人さんは、東京の美大を卒業後、寿司店で働くかたわらカレーに開眼。独学でその世界を探求し、2010年に東京・錦糸町で「カレーのアキンボ」をオープンした。細分化が進むカレー業界の中で名を馳せたが、5年後に地元・佐賀にUターン移住し、リニューアルした。
「東京では、お客さまの回転率を上げる必要もあり、やりたかったことができなかったのが大きいです」
理想は、ゆったりした時間が流れる中、カレーを味わうお客と会話も楽しめる空間。それを実現したのが、完全予約制、昼・夜各最大4名限定のコースで提供する現在のスタイルだという。全7皿の料理は、何よりその日の素材ありきだ。動物性の油は極力使用せず、主張させ過ぎないスパイスや野菜の出汁で、旨みや香り、味わいを繊細に引き出す。その独創的なスパイスコースは、県外からわざわざ訪れるカレーフリークやフーディたちを魅了している。
「佐賀に戻ってから明らかに料理がレベルアップしたのを実感しています」
土地の旬を“そのまま”味わう
スパイスのフルコース
それは、100種類以上の野菜を自然のまま育てる「古閑ベリー園」や赤身肉専門店「TOMMY BEEF」など、県内生産者との出会いが大きいという。
「重要なのは、誰がつくっているか。顔の見える方々からいただく食材の中でアイデアを絞ってつくるのが本当におもしろい。こうした食材や人はもちろん、日々の暮らしの中で気づかされる自然の美しさといった佐賀の魅力を、料理や会話を通して伝えていくのも自分の役割だと思っています」
そう話す川岸さんが信頼を置く酪農家兼チーズ専門店が、嬉野市の「ナカシマファーム」だ。Uターン移住して家業を受け継いだ3代目・中島大貴さんは、持続可能な循環システムで酪農を実践。日本ではじめて製品化したブラウンチーズや酪農家によるミルクブリューコーヒー専門店をオープンするなど、イノベーティブな活動で佐賀に新しい風景をデザインし、地域の雇用も創出している。
「佐賀にはおもしろいつくり手やお店が多く、そうした出合いも楽しんでほしいです」と中島さん。
今春、カレーのアキンボを起点に、佐賀の個性あふれる食、人、そして新しいカルチャーに触れる旅に出掛けてみてはいかがだろうか。
カレーのアキンボ
住所|佐賀県佐賀市大和町川上475
Tel|080-6426-4170(完全予約制)
営業時間|12:30~、19:00~
定休日|木・金曜
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食材そのものだけじゃない。
“つくり手”も、佐賀の魅力です。
自社水田で育てた稲を乳牛に与えて乳を搾る。その牛が出すフンから堆肥をつくり、水田の肥料とする持続可能な循環システムを実践。搾りたての温かいミルクでつくる「牛の体温をすてない」独自製法でつくるチーズは世界的な賞を受賞。人と街、牧場をつなげる活動で酪農の魅力を発信。
ナカシマファーム
住所|佐賀県嬉野市塩田町真崎1488
Tel|090-5293-8680
営業時間|11:00~16:00、土・日曜10:00~
定休日|月・火曜
佐賀のヒト、モノ、コトをもっと知りたい方へ。
テレワークから移住まで、いろんな入り口揃っています!
玄界灘と有明海に面し、広大な佐賀平野や脊振山(せふりさん)といった美しい自然の原風景が広がる佐賀県は、佐賀−博多間が最短40分と通勤・通学圏にあり「自然と都市のいいとこ取り」をできるのが魅力。さらに、一年を通して穏やかな気候で自然災害や犯罪件数も少ないことから、都市部からの移住先として注目を集めている。お試しでのテレワークから本格的な移住まで各種支援金が充実している。
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問|佐賀県 地域交流部 さが創生推進課 移住支援室
Tel|0952-25-7393
Mail|sagaiju@pref.saga.lg.jp
text: Ryosuke Fujitani photo: Kenji Okazaki
Discover Japan 2023年3月号「移住のチカラ!/移住マニュアル2023」