TRADITION

《伝教大師最澄1200年大遠忌記念》
1200年前から受け継がれる
“共生”という考え方

2021.10.16
<small>《伝教大師最澄1200年大遠忌記念》</small><br>1200年前から受け継がれる<br> “共生”という考え方

互いを認め、ともに生きる。まっすぐに信念を貫きながら、時代に合わせてしなやかに変化を続ける天台宗。もはやそこに国境や壁はありません。“共生”の精神が宿り、仏教の総合大学とも称される比叡山延暦寺をエリア別に紹介します。

≪前の記事を読む

 

阿弥陀堂と東塔

天台宗の象徴ともいうべき「一隅を照らす」の精神は、いまや国内のみならず世界中に広がりを見せている。

「1986年にローマ教皇ヨハネ・パウロ2世の呼びかけで世界中の宗教者が集結し、イタリアのアッシジで平和の祈りを行いました。この集いに参加した当時の天台座主はいたく感銘を受け、『来年からは比叡山でも平和の祈りを捧げたい』とローマ教皇に嘆願されたのです」

それから毎年8月4日に比叡山では「世界平和祈りの集い」を開催し、世界中の宗教者と交流を深めている。教義や思想は違っても、世界平和を希求する気持ちに宗教の隔たりはない。比叡山から多種多様な宗派が巣立っていったように、相手の考えを尊重し、よいところを伸ばし合う。そんな“共生”の精神が比叡山には宿っている。

「今年はコロナ禍の影響で規模を縮小し、オンラインで平和の祈りを配信しました。かたちは少し違っても、新しい考えを柔軟に取り入れて継続することが大切です」

それはまさに比叡山のシンボルである「不滅の法灯」と同じ。灯火を維持するためには新しい油を注ぎ続ける必要がある。その文脈でいえば近年、比叡山延暦寺と若手クリエイターを結ぶコラボレーション企画がスタートした。

梵字トートやうちわは延暦寺会館で販売
喫茶れいほうでは、守り本尊の梵字入り抹茶ラテやカフェラテ(各700円)、梵字テラミスとの、梵梵ラテセット(1400円)が楽しめる

中でも日常に取り入れやすい、御仏を表す梵字をポップな印象に仕上げた、延暦寺オリジナルのトートバッグと祇園うちわに注目したい。デザインを手掛けたのは和の文様を取り入れたアパレルを展開する「火消魂(HiKESHi SPiRiT)」。いままでにない土産品としてSNSで話題を呼んでいる。

伝教大師最澄の1200年大遠忌を記念して開かれる、比叡山延暦寺の“非公開”。その秘密をたどると、いまの我々に必要なものが見えてくる。

東塔エリア

根本中堂
比叡山延暦寺の総本堂。建物は国宝、廻廊は国の重要文化財に指定される。現在は「平成の大改修」の真っ最中だが、屋根の高さまで上がれる修学ステージから改修中の様子を間近に見学することができる。内陣には3基の不滅の法灯が安置されている
戒壇院
最澄の願いのひとつであった、大乗戒の独立を象徴する授戒の道場「戒壇院」。内部には石畳が敷かれ、受戒の三聖である釈迦如来・文殊菩薩・弥勒菩薩が祀られている
阿弥陀堂と東塔
阿弥陀如来を本尊とする先祖回向道場の阿弥陀堂。その隣には通常非公開の法華総持院東塔が建つ。これは鎮護国家を願って最澄が全国6カ所に建てた宝塔のひとつ。東塔エリアで最も高い場所に位置する

横川エリア

横川中堂
第3世天台座主慈覚大師円仁によって開かれた横川地域の本堂。円仁が唐に渡った際、乗り合わせた遣唐使船をモチーフにつくられている。本尊は円仁作と伝わる聖観音菩薩
元三大師堂
超人的な神通力で数々の伝説を残す元三大師良源の居住跡と伝わる。鬼の姿で疫病の神を封じた角大師の逸話が有名で、角大師の姿を描いた魔除けの護符がコロナ禍のいま大人気

西塔エリア

相輪橖
最澄が自ら書写した法華経や大日経を納めていた仏塔。釈迦堂から向かって左後ろの山中にある。現在の相輪橖は1895(明治28)年に改修されたもの。高さ約10mの青銅製
釈迦堂(転法輪堂)
第2世天台座主寂光大師円澄によって開かれた西塔地域の本堂。延暦寺に現存する最古の建築物で、もとは園城寺の金堂だったが、1595(文禄4)年に移築。国の重要文化財
にない堂
念仏を唱えながら歩き続ける「常行三昧」の常行堂、法華経の教えに悟入する「法華三昧」の法華堂といった修行道場の総称。両堂をつなぐ渡り廊下を弁慶が肩に担いだ逸話も
浄土院
822(弘仁13)年、56歳で入滅された伝教大師最澄の御廟がある。現在は12年を一期として籠山行に入った僧侶が生身の大師に仕えるように身の回りのお世話をしている

比叡山延暦寺
所|滋賀県大津市坂本本町4220
Tel|077-578-0001
拝観時間|
東塔エリア/8:30〜16:30(3〜11月)、9:00〜16:00(12月)、9:00〜16:30(1〜2月)
西塔・横川エリア/9:00〜16:00(3〜11月)、9:30〜15:30(12月)、9:30〜16:00(1〜2月)
※受付は30分前まで。
※冬季は除雪などのため閉堂を早める場合あり。
※法要・行事などで入堂を制限する場合あり。
拝観料|
東塔・西塔・横川共通券/大人1000円、高中生600円、小学生300円
国宝殿(宝物館)/大人500円、高中生300円、小学生100円
国宝殿と巡拝料のセット/大人1500円、高中生900円、小学生はセット料金なし
www.hieizan.or.jp

「最澄と比叡山 〜最澄の志を継ぐ堂塔〜」特別拝観
期間|9月12日(日)〜12月12日(日)
※9月25日(土)、26日(日)は拝観停止
拝観料|大人500円、高中生300円、小学生100円
※巡拝料は別途必要。9月の常設展及び10月からの「戦国と比叡展」も拝観可能。
時間|9:00〜16:00(9〜11月)、9:30〜15:30(12月)
※受付は30分前まで。
場所|比叡山延暦寺 東塔 戒壇院及び法華総持院東塔
問い合わせ|077-578-0521(比叡山延暦寺 参拝部)

text: Junko Nakao photo: Mariko Taya
Discover Japan 2021年10月号「秘密の京都?日本の新定番?」

滋賀のオススメ記事

関連するテーマの人気記事