FOOD

本物のイタリアを伝え続けて22年
「リストランテ カステッロ」
犬養裕美子さんの新・レストラン名鑑

2020.5.11
本物のイタリアを伝え続けて22年<br/>「リストランテ カステッロ」<br class=“none” /> 犬養裕美子さんの新・レストラン名鑑
チームワークは完璧!勤続10〜20年と長いスタッフが多く、大家族のよう。手前左から3番目が山田直喜オーナーシェフ、右端が息子でマネージャーの遼一郎さん

どんな小さな店でも、どんな辺鄙な場所でも、「ホンモノ」であれば、必ず人は引き寄せられる。レストランジャーナリスト・犬養裕美子さんの《新・ニッポンのレストラン名鑑》。今回は本場イタリアの味を22年伝え続け、地元の人に愛される名店「リストランテ カステッロ」を紹介する。

いぬかい・ゆみこ
東京を中心に世界のレストラン事情を最前線で取材する。新しい店はもちろん、実力派シェフたちの世界での活躍もレポート。また、日本国内各地にアンテナを張り、料理や食文化を取材。農林水産省表彰制度「料理マスターズ」審査員。

 

わざわざ行きたくなる
無敵の魅力とは?

自社農園
店の向かいに広がる自家菜園。「22年前にはイタリア野菜が手に入らなかった。『ないものはつくるしかない』とはじめたのがルッコラ、イタリアンパセリやカルチョフィなどのハーブや野菜づくり。「ランチを終えると畑仕事」、なんて都会では決してできない

山田直喜シェフが千葉県佐倉市に「リストランテ カステッロ」をオープンしたのは1998年4月。京成線臼井駅から徒歩15分、住宅街と農地が混在する場所に、いきなり“超イタリア的空間”をつくったのだ。

私は雑誌の企画で、イタリアのレストラン&ワインガイド『ガンベロロッソ』の編集長と一緒に、日本のイタリアン事情を取材して回っていた。2週間にも及ぶ滞在の終盤、さすがに疲れ切った様子の彼が、ここに到着した途端息を吹き返した!

ホール
エントランスの右手、ここが22年前のオープン時からあるメインルーム。左手の壁画はイタリア人が画家による作品。10〜24名で貸し切り可能

「なんてこった。ここはイタリアじゃないか!」と喜色満面。大理石の床、天井に輝くシャンデリアなどインテリアはすべてイタリアから取り寄せたもの。レストランに隣接した自家菜園など、それは紛れもなくイタリアだった。

あれから22年、店は3倍に、スタッフは30名になっていた!

少しずつイタリアの味へ
時間をかけて顧客へ伝える

赤座海老のリヴォルノ風
リヴォルノはトスカーナ州の港町。リヴォルノ風といえばピリリと辛いパプリカが利いている。代表的な料理は、カチュッコリヴォルノ風。カチュッコは“ごった煮”。これは赤座海老だけでつくるごちそう料理

イタリアでの修業中、その食文化に感動し「本物のイタリア」を日本に伝えようと決心した山田シェフ。独立したら思う存分、本場の郷土料理を出そうと考えていた。「でも、現実は厳しかった!」。

たとえばパスタのゆで加減。22年前の日本ではアルデンテが何かを知っている人はごくわずか。さらにこんな場所だから「美味しかったけど、スパゲッティが硬かったね」なんて言われるのは日常茶飯事だったという。そこでイタリアではこれが本物なんです、と言い負かしても何も変わらない。

レモン風味のタヤリン ハマグリのソース
手打ちパスタは同じ種類でもつくり手によって微妙に違いがある。タヤリンはピエモンテ地方のパスタ。細くて非常にデリケートな食感。レモンの香りにハマグリのソース。間をつなぐのはからすみ

「最初はお客さまに合わせた硬さにゆで上げ、次からはわからない程度に、それこそ1年に1秒ずつでもゆで時間を縮めていきました。いきなり他の国の文化を理解しろと言っても無理に決まってます」。

“地元に愛される店”になるために最も重要なのが値段。ランチAはアミューズからはじまり、シェフ特製12種類の前菜盛り合わせ、パスタ2種(お店の名物、ポルティーニ茸のパテを詰めたラヴィオリ“メッツァルーナ”と、2皿目のパスタは4種からチョイス)、メイン(魚か肉を7種からチョイス)、ドルチェ(5種類の盛り合わせ)、ドリンク。これだけ楽しんでなんと3200円!

黒毛和牛のホホ肉の赤ワイン煮込み
カステッロを代表する料理。ホホ肉はコラーゲンがたっぷり。煮込めば煮込むほどぷるぷるに。人気の秘密は、赤ワインとフォワグラのふたつのソース。イタリアを代表する赤ワイン、バローロを惜しげもなく使用

そしてランチBは前菜が2皿にパスタ、メインは内容もグレードアップする。しかもランチAと選択する料理はほぼ違うのだ。さらに一番高いコースでもランチCの6500円、夜は9800円。

「3年目以降はずっとこの値段。ここまで来ていただくのだから、絶対満足してもらえる内容と、また来たいと思える値段じゃないとね」。若いカップルでも、家族連れでも気軽に寄れる値段。そのおかげで昼も夜も常に満席。その評判が広がり、他県からもお客が訪れる。そこで客席を増やす。理想的な循環が生まれた。

季節のデザート3品
右はブランマンジュ。左はマカロン2種、ロールケーキ2種。サクラをテーマにしたデザート。淡いピンク色の出し方と甘い香りが上品。専任のパティシエールによるお菓子は購入も可

3年前から長男の遼一郎さんが、厨房からサービスに移り、ワインもしっかり売っていこうという体制に。「ワインでも感動させられたら最高ですね」とは遼一郎さん。

山田シェフの料理もイタリアの郷土料理をベースに独自の表現を確立している。今度行くときはどう進化しているだろう。22年経っても新鮮な店であり続ける。

RISTORANTE CASTELLO(リストランテ カステッロ)
住所:千葉県佐倉市臼井1567-2
Tel:043-489-8951
営業時間:11:30〜15:30(L.O.14:30)17:30〜22:30(L.O.21:00)
定休日:水曜
料金:ランチコース3200円〜、ディナーコース3950円〜(税・サ別) ※アラカルトなしwww5e.biglobe.ne.jp/~castello

文=犬養裕美子 写真=前田宗晃

2020年5月号 特集「日本人は何を食べてきたの?」


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