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小倉ヒラクさんに聞く、世界的に見ても日本は発酵大国?!
あれも発酵、これも発酵④

2019.12.4
小倉ヒラクさんに聞く、世界的に見ても日本は発酵大国?!<br>あれも発酵、これも発酵④

発酵とは、目には見えない微生物が有機物を分解し、人間にとって有用な物質をつくり出すこと。日本人は、古代から発酵を生活に取り入れ、その恩恵にあずかってきた。発酵デザイナーの小倉ヒラクさんに発酵の魅力を教えてもらいました。

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発酵文化はなにも日本に限ったものではない。中国の紹興酒やタイのナンプラーなど、東アジア一帯にはさまざまな発酵食品があり、パンやヨーグルト、ビールにワインなど、西洋由来の発酵食品も多い。だが東と西では、発酵文化のルーツが異なっている。

小倉ヒラクさん
発酵デザイナー。山梨県甲州市を拠点に全国の醸造家との商品開発、絵本・アニメの制作、ワークショップなどを行う。著書に『発酵文化人類学』(木楽舎)、『日本発酵紀行』(D&DEPARTMENT)

「あくまでも僕の考え方ですが、東のルーツはカビ、西のルーツは酵母といえると思います。西は、パンやビールなど麦の発酵、ワインやシードルなどの果実酒、チーズやヨーグルトなど乳の加工品が主流。比較的乾燥した気候ということもあって、単種もしくは少ない微生物でシンプルに醸す文化といえると思います。その結果、どの文化圏の人でも受け入れやすい風味のものになります。もちろん例外もありますが。対して東は、日本酒や紹興酒などカビを使った穀物酒、豆や麦を醸した調味料など、いろいろな微生物が多様な物質をつくる。特に、旨みをつくり出す発酵カビが特徴的。しかも高温多湿の気候のため、塩で腐敗を防止すると当時に、雑菌のような微生物も働くので、〝すごく酸っぱい〟とか〝臭い〟といった極端な風味も生まれる。東は、そうした多様性のある旨みの文化といえます」

つまり日本の発酵文化のルーツは、東の発酵カビ文化にある。さらに細かくいえば、中国をはじめとする大陸がクモノスカビ文化であるのに対し、日本はコウジカビ(麹菌)文化。日本特有の発酵カビである麹菌は、糖分をつくる力が強く酸をあまりつくらないため、雑菌が混入しやすい。日本人は、その繊細な菌に対して手間を惜しまず、技を磨きながら徹底して使いこなすことで、日本ならではの発酵文化を醸成し、洗練させてきたのである。

バングラデシュ付近が東西の境界!

ヒラクさんは、インドの西ベンガル州・コルカタ付近〜バングラデシュ付近に東西のボーダーラインがあると考えている。「このあたりから東側は“味噌、テンペ、紹興酒などライスワイン”の文化、西側は“ヨーグルト、ナン、ワイン、ビール”の文化。それは、発酵カビの存在の有無による違いといえると思います」

すごいぞ!日本の発酵史

『古事記』や奈良時代に編纂された『播磨国風土記』に酒が登場したり、縄文時代後期の遺跡から味噌の原型ともいえる穀物の塩蔵跡が見つかったりと、日本の発酵の歴史は古い。日本人は、さまざまな制限の中で偶然から生まれた発酵食品を試行錯誤しながら改良し、文化として受け継いできた。その源泉といえる存在が麹菌。さまざまな発酵食品の発展を支え、そこから多様な発酵文化が生まれた。

飛鳥時代:すでに醤油の原型がつくられていた
室町時代:酒に火入れし保存性を高める技術発達
江戸時代:糞尿から火薬がつくられていた

東西での菌分布の違いは、カビと酵母だけでなく乳酸菌にも見ることができる。東は植物性乳酸菌、西は動物性乳酸菌の食文化を育ててきた。

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《あれも発酵、これも発酵》
1|発酵で日本のいまが見えてくる
2|日本の発酵食、実は3つだけ?
3|発酵は生活の中から生まれた知恵の結晶
4|世界的に見ても日本は発酵大国でした
5|発酵の主役は人間ではなく微生物

Discover Japan 11月号「すごいぜ!発酵」

文:成田美友、編集部 写真=山平敦史

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