《アセビマコト》
温かくおおらか、どんな料理も受け止めるうつわ
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柔らかで合わせる料理を選ばない包容力と、実用性の高さをもつ陶芸家・アセビマコトさんのうつわ。アセビさんと彼のうつわを愛用する料理人から、うつわの活用術を教わった。
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アセビマコト
1964年、北海道生まれ。多摩美術大学美術学部陶芸科卒業。在学中はオブジェを制作し、’94年よりうつわの制作を開始。’97年、横浜市に築窯。2001年から、鎌倉の古民家で妻のキクタヒロコさんとともに制作を続けている。
温かな暮らしと人柄から生まれる
うつわの包容力
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作品には、つくり手の人柄がにじむもの。アセビマコトさんの作品に宿る柔らかさや温かな表情も、彼の柔和な人柄を投影しているかのよう。
幼少期から絵を描くのが好きだったアセビさんはかつて、多摩美術大学の陶芸科で現代美術のオブジェ制作に心血を注いでいた。転機となったのが、大学4年のときに京都で見た陶工・初代長次郎の樂茶碗だ。「小さな抹茶茶碗ですが圧倒的な存在感で、すごく衝撃を受けました」とアセビさん。そこから独学でうつわづくりを開始したが、なかなか思うような作品がつくれず、後に陶芸教室でアルバイトをはじめた。「教室の講師たちは、陶磁器制作をしっかり学んできた東京藝大の卒業生で、彼らにテクニックや知識を教われたことが現在の基礎になっています」
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その教えを身体にたたき込んだため、いまでも何も考えずつくると薄くかっちりしたフォルムになるのだという。「しかし僕は、少し厚みがあってちょっとゆるいかたちが好き。そのため集中して、薄くならないようにつくっています」。洗練の中に宿る柔らかさは、作家の集中力のたまものでもあるのだ。
厚みがあることは、耐久性にもつながる。「土も釉薬も焼き方もごく普通なため、食洗機や電子レンジ、漂白剤も使えます。自宅でも妻が毎日牛乳を電子レンジで温めていますが、問題ありません」とアセビさん。ご夫婦の暮らしの中で日々愛用し、使い心地や変化を確かめる。そんな姿勢から、使いやすいうつわが生み出されている。
読了ライン
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作家自身が使うことで
作品をアップデートしていく
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アセビさんのうつわに出合える料理店へ
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text: Miyo Yoshinaga photo: Manako
2023年12が月号「うつわと料理」