PRODUCT

世界に轟くものづくり県の礎を築いた15の伝統的工芸品 – 後編
第3回|暮らしをつなぐ、愛知県の伝統的工芸品。

2021.2.23 PR
世界に轟くものづくり県の礎を築いた15の伝統的工芸品 – 後編<br>第3回|暮らしをつなぐ、愛知県の伝統的工芸品。

受け継がれてきた技術を用い、主に手づくりで原材料にもこだわった品目に与えられる「経済産業大臣指定伝統的工芸品」。愛知県では15品目が登録されています。伝統を守り続けるとともに、新しい挑戦に取り組む産地をめぐる本連載。第2・3回では焼き物やファブリック、彫刻品、家具など、15品目をすべて紹介します。

≪前の記事を読む

祈りの総合芸術!
幾人もの技術者が織りなす光

〈007〉
三河仏壇

History
1704 (元禄17)年、矢作川の水運によって信濃国などから運ばれる檜や松、杉といった良質な木材と、三河北部の猿投山付近で採れる漆を材料として、仏壇師・庄八家が製作をはじめたのが起源と伝わっている。

Characteristics
合掌により、心に平安をもたらす場所として仏壇が尊ばれた三河地方。昔は押入れの中に安置する風習があったため台は低く、宮殿(くうでん)内の御本尊が見やすくなるよう長押をうねるかたちにするなどの工夫がある。

取材協力/愛知屋仏壇本舗

「“信は荘厳なり”という、思いをかたちで表現する三河地域の信仰心により、立派なお仏壇を置く家が多い」とクリエイティブディレクター・太田壮一郎さん。豊富な地域資材や、徳川家康公の庇護の下、金箔の使用が許可されたことで、豪華絢爛な三河仏壇の特徴が確立。

三河仏壇振興協同組合
Tel|0564-24-7766

〈008〉
尾張仏具

History
仏具は木曽川上流の良質な木材を使用し、江戸時代初期から仏壇とともに製作されはじめ、下級武士の内職として発展した。明治時代以降は家内工業化され生産量が向上、近隣府県だけでなく全国へ流通するようになった。

Characteristics
木製の漆塗りの製品を中心に、宗旨・宗派など細部にわたって専門化された仏具・神具を製作。木地、彫刻、下地、漆塗、彩色、錺金具、蒔絵、金箔置など、製作工程ごとの専門の職人による分業だ。

取材協力/帆刈仏像彫刻所

戦前は台湾や満州などへも輸出されていた尾張仏具。大量生産が可能になったのは「分業制による作業の効率化など、愛知県がもつものづくり精神の賜物」と尾張仏具技術保存会会長・浅野繁昭さん。木魚や、おりんを置く丸金台などは尾張地区でしか生産されていない。

尾張仏具技術保存会
Tel|052-321-6012

〈009〉
名古屋仏壇

Characteristics
木と木を合わせ、釘を使用しない「ホゾ組み」で組み上げられた仏壇は、欄間が三つ切りであるなど寺院の様式を色濃く映している。角の部分には必ず金物を取り付けるなど、多くの金具が使用されているのも特徴。

History
名古屋周辺は、近隣で育つ「木曽檜」をはじめ良材の集積地であり、神社仏閣の建築に携わる大工が多くいたことなどから仏壇づくりが盛んに。信仰心が篤い土地柄を背景に日本有数の仏壇業者の密集地へと発展
豪華絢爛な造りが目を引く。柱の裏側など正面からは見えない部分にも、金箔や彫刻がしっかりと施されている。

取材協力/仏壇の大野屋

木曽三川の氾濫による水害から仏壇を守るため台に高さを設け、その部分に持ち上げ式の扉「まくり」を備えることで台の中を仏具の収納スペースとして活用している。「生活環境に応じた工夫が随所に凝らされている」と5代目宗兵衛・山田宗宏さん。

名古屋仏壇商工協同組合
Tel|052-321-5608

どんな素材も変幻自在!
受け継がれた手技と創作愛がつくるカタチ

〈010〉
岡崎石工品

History
1590(天正18)年、岡崎城主・田中吉政が城下町整備のために関西から石工職人を招いたのが起源。市内を流れる矢作川を利用し、石工品を江戸や大阪まで輸送することができたことなどから発展を遂げた。

Characteristics
岡崎は、市内の山から良質の花崗岩が潤沢に切り出され、また高い技術力を誇る職人が集まっていることから「石都」と称される。岡崎産の花崗岩は特有の「ねばり」をもち、手作業で精密な加工を施しやすい。

取材協力/岡崎石製品協同組合連合会

石材の日本三大産地のひとつで、通り沿いに大小さまざまな石工品店が並ぶ光景が目立つ岡崎では、灯籠や仏像、彫刻品など多彩な製品が生み出されている。岡崎石工品伝統工芸士会会長・中澤茂政さんは「触れると大きなパワーを感じるところが石製品の魅力」と語る。

岡崎石製品協同組合連合会
Tel|0564-31-3823

〈011〉
豊橋筆

History
1804(文化元)年に京都の筆職人が吉田藩に招かれ毛筆を製造したのがはじまり。幕末になると困窮した下級武士の内職として発展。明治時代になり学校制度が敷かれると、筆の需要が高まり、地場産業として定着した。

Characteristics
筆の生産量は、広島の熊野筆に次いで全国2位。一本の筆の中で使用する数種の動物の毛を、水と一緒に混ぜ合わせる「練りまぜ」という工程を経ることで、墨に馴染みやすく滑るような書き味を実現している。

取材協力/杉浦製筆所

主に書画用の高級筆として、全国で70%以上のシェアを誇る。36にもわたる工程すべてを職人が一人で製作するスタイル。杉浦正敏さんは「手間をかける分、もう少し細い毛を使ってほしいといった細かなオーダーにも応えられます」と胸を張る。

豊橋筆振興協同組合
Tel|0532-61-8255

〈012〉
三州鬼瓦工芸品

History
わら葺きによる大火災を受け1720(享保5)年に徳川吉宗が瓦葺きを奨励した後、瓦造りが盛んに。西三河は猿投山から矢作川によって良質な粘土が運ばれる地で、海に面し江戸輸送の好適地だったことも産業を支えた。

Characteristics
粗成形したあとヘラを使って鬼師が手作業で仕上げた白地は、釉薬をかけず焼成。その後、高温時に空気を遮断し強制還元(燻化)することで「いぶし銀」とよばれる独特の光沢を放つ色に。鉄分が多い三河土ゆえの発色。

取材協力/丸市

瓦は仏教伝来とともに中国から伝わったが、魔除けなどの祈りを込めた鬼瓦は日本で誕生。専門の職人は鬼師(鬼板師)と呼ばれ「手で仕上げるので個性が出る」と鬼瓦上級技能士の加藤佳敬さん。国宝・重文の修復にも日本三大瓦の地、三州の鬼師が活躍中。

三州瓦工業協同組合
Tel|0566-53-1420

名古屋城下で職人が生み出す
多彩な工芸品

〈013〉
名古屋桐箪笥

History
いまから400年以上前、名古屋城築城にかかわった職人たちが城下町に定住し、箪笥や長持をつくり続けたことがいまに至る。築城で培った技術に加え、桐の産地・飛騨にも近く良質な材料が手に入ったことも発展の要因に。

Characteristics
木材は桐の無垢材のみを使用。気密性や防虫効果をもち、衣類を虫やカビから守る。仕上げの金具は主に加飾を施したものが使われ、引き戸の袋戸は金彩画や蒔絵で豪華に見せるのが名古屋桐箪笥の特徴でもある。

取材協力/出雲屋家具製作所

収納家具といえば長持や行李が一般的だったが、江戸時代に綿織物や絹織物の大衆化が進むことで複数の衣服をコンパクトに収納できる「抽斗」が生まれた。「時代の変化に合わせて桐箪笥もさまざまなデザインを考えたい」と直営ショールーム 「名古屋桐たんす工房 出雲屋」の今岡克己さん。

名古屋桐箪笥工業協同組合
Tel|0568-34-0081

〈014〉
名古屋節句飾

History
徳川御三家の筆頭格であった尾張徳川家に姫君が生まれると、藩内の職人が雛人形や雪洞を製作し納めたという逸話も。古くより名古屋で盛んであった幟旗の製造が発展し、鯉のぼりへ発展したといわれる。

Characteristics
名古屋地区や近隣で豊富に伐採・生産された松や和紙を使って雪洞が、同じく特産品の木綿によって鯉のぼりがつくられた。雛人形はかつて衣装で手元を隠すスタイルが伝統的だったが、いまではあまり見られなくなった。

取材協力/加藤人形/安藤商店/ワタナベ鯉のぼり

尾張藩7代藩主・徳川宗春が文化・工芸を奨励したため、藩内では高度な技術が必要とされる山車からくりの製造が盛んに。やがてその技が人形や、鯉のぼりの製作に引き継がれた。現在では東西の需要に応じた製品を生産している。

中部人形節句品工業協同組合
Tel|052-564-1020

〈015〉
尾張七宝

Characteristics
尾張七宝を代表する技法は、銅などの金属に銀線を接着し、ガラス釉薬を焼き付ける有線七宝。花鳥風月といった図案の輪郭に銀線を施したシャープで色彩豊かな花瓶が、伝統的な製品の筆頭として挙げられる。
History
天保年間(1830〜1844年)、尾張藩士の次男として生まれた梶常吉が、オランダ船によって日本へもたらされた七宝皿を手掛かりにして、独自に研究を重ねて生み出した製法が尾張七宝の礎を築いた。

取材協力/安藤七宝店

幕末に新たに生み出された尾張七宝は明治時代に万国博覧会に出品され、精緻な美しさで世界の人々を魅了した。基本は銀線を用いた技法を用いる。「銀線を下絵のかたちに曲げ、花瓶のカーブに沿って立てるのは技術が必要」と柴田明さん。

七宝町七宝焼生産者協同組合
Tel|052-443-7588
名古屋七宝協同組合
Tel|052-251-1371

愛知県の伝統工芸についてもっと詳しく知りたい方はこちら
http://jibasangyo.pref.aichi.jp/

伝統的工芸品が一堂に会する全国大会が開催予定!

全国の伝統的工芸品の製作体験や、展示販売会などを予定。ぜひ足を運んでみてください。

第38回伝統的工芸品月間国民会議全国大会
開催期間|11月26日(金)〜29日(月)
会場|愛知県国際展示場「Aichi Sky Expo」ほか
問|愛知県経済産業局産業部産業振興課
Tel|052-954-6341

≫次の記事を読む

暮らしをつなぐ、伝統的工芸品。
1|“ものづくり”県の原点とは
2|“ものづくり”県の礎を築いた15の伝統的工芸品 – 前編
3|“ものづくり”県の礎を築いた15の伝統的工芸品 – 後編
4|暮らしの中に息づく温故知新の“ものづくり”
 

photo: Atsushi Yamahira, Akane Yamakita, Kiyono Hattori text: Arika Inc.(Yasunori Niiya, Yuki Sawai, Makiko Shiraki, Kaori Nagano) illustration: On Yamamoto
2021年3月号「ワーケーションが生き方を変える?地域を変える?」


≫シンプルなフォルムが映し出す色の小宇宙「岩崎龍二のうつわ」というアート

≫肥前吉田焼の伝統を革新する「224porcrlain」のクリエイティブ

≫名古屋の日本遺産・有松をキーマン「庄九郎」と旅する。

愛知のオススメ記事

関連するテーマの人気記事