巴蜀<はしょく 福岡>
四川料理最注目株の全40皿のコース!【前編】
犬養裕美子のディスカバー ベスト・レストラン
地方都市は情報も素材も早く行き来するだけに驚きの専門店がある。九州・博多で最もとがっているのは、こんな中国料理店だった!今回は、福岡県福岡市にある「四川料理・巴蜀」を3つの記事でご紹介します。
犬養 裕美子(いぬかい・ゆみこ)
東京を中心に世界のレストラン事情を最前線で取材する。新しい店はもちろん、実力派シェフたちの世界での活躍もレポート。また、日本国内各地にアンテナを張り、料理や食文化を取材。農林水産省表彰制度「料理マスターズ」審査員
荻野 亮平(おぎの・りょうへい)
1978年、大阪府生まれ。調理師学校卒業後、千駄木の四川料理「天外天」で2年半修業。現地の料理を実際に見てみたい、と四川大学に語学留学。約1年間、語学を学びながら屋台から高級レストランの料理までを研究。帰国後、福岡の台湾料理店に入店。2007年に福岡空港近くで独立。’16年に博多駅近くに移転。かねてから構想していた“小吃”コースを実践
日本人の知らない
本当の四川料理をアップデート
前菜、メイン、麺飯、デザートで合計40皿。こんな小皿コースを万円で出している店が博多にあると聞いて、興味を惹かれた。オーナーシェフの荻野亮平さんは、東京で修業した後、1年間四川大学に留学。中国語を学びながら本場の料理を研究してきたという。日本人は勉強熱心でまじめな国民性だから、ほかの国の料理を学ぶなら一度は本場に行くべきだと考える人は多い。フランスやイタリアには多くの日本人が修業に行くし、最近は現地で店を出す人も多い。ところが中国はじめ、アジアの国は外国人を受け入れることはまれ。それを知りつつ、自力で四川を見て回ったという熱意が、このコースに結集したのだろう。
店は福岡空港から車で15分、博多駅から徒歩15分ほど。最近ネパールやインド、中国居酒屋が増えているエリアだ。鮮やかなブルーの扉を開けると店内には、一人客対応のカウンター席があり、テーブルも16席ほど。基本的にこのコースは前日までの予約なので、来店時間に合わせて準備してくれる。というわけでゲストが席に着いたら、前菜22皿が一気に運ばれてくる。あっという間に目の前のテーブルが皿で埋め尽くされる様子に、はじめてのお客は驚くこと請け合い!
シェフの仕事を語る料理
「前菜」
皿の大きさは直径7cmほど、量は2人前。また、日によって内容も皿数も変わる。この日は22皿。四川料理らしい、山椒、麻辣、唐辛子などの辛い、痺れる味漬けは全体の4割ほど。四川料理といっても、すべてが辛いわけではない。むしろ最近は辛味を控える傾向にある。四川は精進料理の本場でもあるので、アヒルもどき、干豆腐なども入る。また、発酵大豆のスパイス揚げや豆腐皮の煮込みなどの豆料理も豊富。
四川料理 巴蜀(ハショク)
住所|福岡県福岡市博多区美野島2-3-14
Tel|092-482-7474
営業時間|11:30~14:00(L.O.)、18:00~21:00(L.O.)
定休日|日曜、祝日
昼|汁なし担々麺750円、夜|コース5000円~すべて税別、サービス料なし。
席数|カウンター5席、テーブル16席
http://hashoku.9syoku.com
text:Yumiko Inukai,photo:Muneaki Maeda
Discover Japan 2018年3月号『今だから新しい暮らし方を考えてみる。』