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acca<アッカ 岡山>
瀬戸内海の絶景を望めるイタリアンレストラン【前編】
犬養裕美子のディスカバー ベスト・レストラン

2021.3.24
acca<アッカ 岡山><br>瀬戸内海の絶景を望めるイタリアンレストラン【前編】<br><small>犬養裕美子のディスカバー ベスト・レストラン</small>
店内は吹き抜けの広い空間。昼は遠くに瀬戸内海を望める

いまはまだスタートをしたばかり、それほど有名ではないけれど、私イチオシの“期待の星”を探して、ニッポンをめぐります!今回は、岡山県瀬戸内市にあるレストラン「acca(アッカ)」を前後編記事でご紹介します。

犬養 裕美子(いぬかい・ゆみこ)
東京を中心に世界のレストラン事情を最前線で取材する。新しい店はもちろん、実力派シェフたちの世界での活躍もレポート。また、日本国内各地にアンテナを張り、料理や食文化を取材。農林水産省表彰制度「料理マスターズ」審査員

林 冬青(はやし・とうせい)
1965年、東京都生まれ。’91年にイタリアへ。数店を回って修業を重ね、ロンバルディアの「イル・ソーレ」(当時2ツ星)で3年料理人として貢献し帰国。’97年、広尾に「ACCA」(アッカ)をオープン。シンプルを極めた料理は東京のレストランでも孤高の存在だった。長年一緒に店をやってきた母親が病を得たこともあり、移転を決意。’14年7月に岡山県瀬戸内市牛窓に移転

誰よりもリアルなイタリア料理を目指す

出来たばかりの「アッカ」を取材したのは‘97年だった。「広尾にスゴいシェフが現れた!」と驚かされた。当時、東京のイタリアンは気軽さが売りの「イタメシ」全盛。「アッカ」は、それとはまったく別次元の店だった。昼でも外光の入らない静謐な空間。その中でゲストは声を潜めて料理を待つ。そこに正確なアルデンテ、ダイナミックで緻密な火入れで仕上げた料理が最高のタイミングで出てくる。「アッカ」は料理関係者の間でたちまち話題になった。

林シェフの口癖は「イタリア人がつくるように、イタリア人だったらどうするかを考えて料理をつくる」だった。東京にいれば何でも手に入る。彼は帰国後、日本の素材を知るためにとことん試行錯誤を繰り返した。築地市場では日本料理店で使う高級魚を仕入れたり、気になる素材は生産者から直接仕入れもした。どんなブランド素材であろうと、自分で確認する。決して評判をそのまま鵜呑みにはしなかった。

そして数年後。全国の有名素材をほとんど使ってみた結果、最高級の魚を使えば、最高のイタリア料理になるか?そうではないと思い至る。林シェフは高級素材偏重を卒業し、よりシンプルな削ぎ落としの時代に入った。

シェフの仕事を語るひと皿
ヒラメのオーブン焼き

魚も肉も“丸ごと”が美味しい。素材から出る旨みで、さらにその素材の味を強化する。「勝手に美味しくなってくれるんです」と林シェフが言う通り、丸ごとの美味しさはそこにある。

accaの夜のコース ~前菜~

素材やシンプルな調理法を見ていると和食に通じるものも。「この土地の素材、地産地消にこだわっているわけではありません」という林シェフ。シェフの手にかかると、ごく自然にイタリア料理になる。前編では前菜3品をご紹介します。

前菜1 小ふぐのスープ

瀬戸内海には小さなフグがたくさんいる。そのフグの骨からは上品なスープを取れる。甘みのある黄白菜、クリームのとろみ、香ばしいフグがアクセントに

前菜2 白菜と真海老のサラダ

フライパンで白菜の表面を焼いて、真エビ(関東では芝エビ)をゆでる。マスカットのワインビネガーとオリーブオイルで材料を和える

前菜3 ゲタと野菜の包み焼き

ゲタ(舌平目)、シイタケ、トマト、アミの塩漬けをホイルに入れてワインを回しかけて包み、そのまま熱々に蒸す。トマトとほんの少しのオリーブオイルがなければほとんど和食
マダムの加苗さんとは2016年に結婚。とびきりの笑顔がお客を和ませる
店名の「acca」はイニシャルHのイタリア語読み。つまり苗字の林だ

 

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acca
住所|岡山県瀬戸内市牛窓町牛窓496牛窓国際交流ヴィラ内
Tel|090-7997-4586
営業時間|17:00~18:30スタート
定休日|日・水曜(不定休あり)
おまかせコース8000~9000円前後(
仕入れる魚による)。税別。予約は電話で(なるべく10:00~12:00に)

text:Yumiko Inukai,photo:Muneaki Maeda
Discover Japan 2018年4月号『ニッポンの未来戦略。』


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