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唐津焼の世界を満喫できる宿「洋々閣」
2泊3日以上がこれからの日本旅館の愉しみ方

2020.3.20
唐津焼の世界を満喫できる宿「洋々閣」<br>2泊3日以上がこれからの日本旅館の愉しみ方
美しく透明感のあるアラが盛られたのは中里太亀さんのうつわ。中里隆さんの菱形南蛮皿に盛られたネギとワサビを添えて

日本ならではの宿泊スタイルである日本旅館こそ、数泊することでその魅力が愉しめる。《2泊3日以上がこれからの日本旅館の愉しみ方》では、それぞれの宿に2泊3日滞在した場合の愉しみ方を提案。第1回は唐津焼に盛られた美味と唐津の街をゆるり愉しめる「洋々閣」を紹介する。

連泊するのにいい
日本旅館の条件とは?

「洋々閣」の庭園から佐用姫の間を望む。昭和初期に建てられた建築で、日本三大伝説のひとつ松浦佐用姫伝説にちなみ名づけられた

とはいえ、すべての日本旅館が連泊に適しているわけではない。どんな日本旅館が連泊するにふさわしいか。その第1条件は、目的をもつ旅の宿である。風景だとか、神社仏閣など、お目当てのある旅なら、それを中日に当て、行き帰りの日は予備としておくと余裕ができる。

仏像や、和菓子、御朱印など、めぐる旅は数あれど、愉しさからすれば、うつわめぐりを超えるものはない。日本中に点在する窯元を訪ね、お気に入りのうつわを見つけるのは、旅の醍醐味。そのベースとなる名宿があれば、連泊の旅に出ない理由などない。

唐津の街並みをほうふつとさせる外観

その代表ともいえるのが、九州は唐津の老舗旅館「洋々閣」だ。古くから、一楽二萩三唐津と称され、茶陶として知られる唐津焼の地元であるから、当然ながらこの宿の顔は“うつわ”である。

それも先代主人と、唐津焼の名工で名高い中里隆さんとが、古くからの盟友だというのだから、筋金入りの“うつわの宿”である。数ある日本旅館の中で、これほどうつわと一体になった宿を、僕はほかに知らない。

創業当時の面影を残す石畳の玄関。右に掲げられた「洋々閣」の書は、佐賀出身で衆議院議長を務めた川原茂輔のもの

連泊するにふさわしい宿。2番目の条件は“食”である。基本的に日本旅館は1泊2食を旨とすることから、夕食は宿でとることになる。朝はともかく、連泊してふた晩とも同じような夕食だとがっかりする。3泊、4泊と重ねるなら、ますます“食”のバリエーションが重要となってくる。多彩な夕食を用意している宿を選ぶべし、だ。

昼食も宿でとることもあるが、多くは外食になる。となると、宿の近辺に、わざわざにでも食べに行きたい店があれば、旅を彩り豊かなものにしてくれる。洋々閣は、その2番目の条件も容易に満たしている。美食の宿としてもつとに名高いからだ。

うつわと美食を求めて
2泊3日の唐津旅

「鮨 笑咲喜(えさき)」で愉しむ
唐津の魚にこだわり、たとえば大浦の牡蠣といった珍しいネタも握ってくれる。その日で具材が替わる宝巻は逸品! カウンターで1貫ずつ唐津の銘酒とともに楽しみたい。ランチ2500円、ディナー3800円か5500円。4名以上の予約で平日ランチも相談可能

洋々閣滞在のおすすめコースをご紹介しよう。旅のはじまりはおおむね博多からとなる。かつては地下鉄から続く鉄路が主流だったが、いまは高速バスが人気だ。1時間と少しで唐津までたどり着ける。

まずは鮨ランチ。あらかじめ宿の主人に教わっていた小さな店の鮨は、その味わいの深さに比して、驚くほど対価が低い。さっそく唐津焼を愉しめるのがうれしい。

ゆったりとした大浴場
温泉ではないが麦飯石を入れて沸かした湯は、肌当たりが柔らかくなり、よく温まる。手足を伸ばしてのんびり浸かりたい

国の特別名勝に指定されている虹の松原に隣り合って建つ洋々閣は古風な構えでお客を迎える。若女将手ずから生ける花もまた、唐津焼を花器としている。全館唐津焼一色と言っていいしつらえが、なんとも心地いい。

ロビーで一服したら早速部屋へ。浴衣の寸法を測り、適当なサイズに着替えたら風呂へと急ぐ。宿の寛ぎ時間がはじまる。温泉ではないのだが、この宿の風呂は身体を芯から温めてくれる。湯上がりの火照りを冷ましながら館内探索。唐津焼を代表する作家のギャラリーが2カ所。どちらも見応えがある。となれば当然のごとく窯元を訪ねたくなり、そのために中日があるというわけだ。明日を愉しみにしての一夜目。

うつわ好きにはたまらない
写真は隆太窯のギャラリー。洋々閣主人がセレクトした中里隆さん、太亀さん、健太さん3代のうつわが揃う。monohanakoギャラリーは中里花子さんが自ら選んだ品が置かれる

美食の宿として名高い洋々閣の冬の名物といえば、なんといってもアラ料理の数々。クエと呼ぶ地域もあるが、フグにも勝るとも劣らない白身の魚は、生で佳し、煮付けて佳し、鍋で佳し、と多彩な味わいを堪能できる。加えてそれらが盛られるうつわも、焼物好き垂涎のものばかり。うつわを愛でながら、絶品料理を味わう至福のひとときだ。

宿に限ったことではないが、せっかくのごちそうなのに、なおざりなうつわに盛られて料理が出てくるとがっかりする。日本料理というものは、ふさわしいうつわに盛られることで完成するのだ。

「隆太窯」のうつわに
目移りする
ギャラリーで作品を購入できるほか、作陶の様子を見ることもできる。年に数回バロック音楽と隆太窯のうつわを使った料理を楽しむ「隆太窯コンサート」を開催

ぐっすりと眠った翌朝の食事もまた、日本旅館ならではの愉しみ。窯元めぐり、昼食処の算段を整えるのも、連泊だからこそのゆとり。洋々閣に泊まるなら必ず訪れたい窯元が中里隆さん、太亀さん、健太さんの3代の「隆太窯」と中里花子さんの「monohanako」。ルーツを同じくしながら、作風がガラリと変わるのも、興味深い。

唐津という街はその名が示す通り、長く唐との津、すなわち港だったわけで、多くは半島を経由して、優れたうつわが伝来してきたところである。唐津焼は土ものを旨とし、隆太窯はその流れを継いでいて、一方でmonohanakoは磁器をも焼く。唐津から少し南に下れば、伊万里、有田と磁器で名高い産地があり、鍋島とともに、日本を代表する磁器の里として知られているから、何ほどの不思議もないわけだ。

南蛮利休鍋で黒毛和牛を堪能
ほどよい加減にさしが入った北部九州の黒毛和牛を用意。昆布出汁に先にキャベツを入れることで甘みをプラス。秘伝のゴマダレは、茶せんで泡立てることで、まろやかに風味が出る。好みで一味唐辛子、すりおろしたニンニクを入れると食が進む

日が暮れる前に宿に戻る。ひと風呂浴びて、窯元めぐりの収穫を振り返りながらの夕餉。二夜目は肉だ。宿の新たな名物となった“黒毛和牛の南蛮利休鍋”。味わいもさることながら、その趣向がこの宿にふさわしい。唐津焼のうつわに入ったゴマダレを、お茶を点てるように、茶で混ぜる。南蛮、利休の名の由来も奥ゆかしい。

3日目の朝は早起きして、イカ漁で知られる呼子の朝市へ行くのもいい。ランチは唐津の隠れ家レストランへ。地方にはまだまだこうした隠れ名店がある。そう思わせる料理、しつらえ、うつわ遣いだった。素朴ながらも際立った味わいの三角おにぎりは、うつわ旅の締めくくりにふさわしいものとなった。

洋々閣
住所:佐賀県唐津市東唐津2-4-40
Tel:0955-72-7181
客室数:19室
料金:1泊2食付2万円〜(税別・サ込)/「1日目夕食あら尽くしコース、朝食付+2日目夕食南蛮利久鍋、朝食なし」十坊の間の場合1泊目4万6000円〜+2泊目3万9000円〜、一般の部屋の場合3万7000円〜+2泊目2万2000円〜(税別・サ込)
カード:AMEX、Diners、DC、JCB、VISAなど
IN:15:00 OUT:10:00
夕食:部屋食 朝食:食事処
アクセス:車/西九州道路唐津ICから約15分 電車/JR唐津駅からタクシーで6分
施設:大浴場、ギャラリー
www.yoyokaku.com

文=柏井 壽 写真=宮地 工

2020年2月号 特集「世界に愛されるニッポンのホテル&名旅館」

 《2泊3日以上がこれからの日本旅館の愉しみ方》


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