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ジャパニーズウイスキーが
世界で評価されている理由とは?

2026.3.11
ジャパニーズウイスキーが<br>世界で評価されている理由とは?

日本で本格的なウイスキーが造られてから100年余り。数年前から熱い盛り上がりを見せているが、世界的に評価されている理由を知っているだろうか?“ジャパニーズウイスキー”の正しい認知・周知における課題についても迫る。

監修=住吉 祐一郎
ウイスキージャーナリスト。福岡県福岡市の「バー ライカード 」オーナーバーテンダー。翻訳書に『ウイスキー・テロワール』(スタジオタッククリエイティブ)など多数。

ジャパニーズウイスキーが
世界的に評価されている理由とは?

① 改善を続ける味わいのアップデート
たとえば、スコットランドのとある伝統的な蒸留所などは、造りを変えず、設備もそのままにレシピを守るというポリシーをもつ。対して、日本は新しいものをつくり、職人魂の心意気も加えた、常によりよくしていこうとする感覚がある。

② 日本人らしい手仕事による繊細な味わい
設備などのハード面の改善のみでなく、発酵時間の検証や、蒸留液の度数や時間による判断、カットのポイントを官能で検討するなど、細やかな仕事で目指す酒質にアプローチ。クリやサクラ、ミズナラなど和木の樽を使うのも日本ならでは。

③ 国際的なコンペティションでの評価
国際的なウイスキーアワードで著名なものに、イギリスのウイスキー専門誌『ウイスキーマガジン』が主催する「ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)」、イギリスの酒類専門出版社が主催する「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)」などがある。いまでは上位入賞常連のジャパニーズウイスキー。数ある中でも過去の際立つ受賞ボトルを以下に紹介する。

「シングルカスク余市10年」
2001年ベスト・オブ・ザ・ベスト受賞

国際的なテイスティングイベントで
最高得点を獲得
2001年、「WWA」の前身となる「ベスト・オブ・ザ・ベスト」が始動。第1回、専門家62名によるブラインドテイスティングでニッカウヰスキー「シングルカスク余市10年」は、全部門を通じて最高得点をマークした。

 

「響21年」
2001年 ベスト・オブ・ザ・ベスト2位

国内外でジャパニーズウイスキーの
知名度向上に貢献
2001年の「ベスト・オブ・ザ・ベスト」では、サントリー「響21年」も僅差で2位を獲得。上位2位を日本勢が占めたことで、ジャパニーズウイスキーは国内外で知名度が飛躍的に上昇した。その後「響21年」は多数の賞を受賞。

 

「富士御殿場蒸溜所シングルグレーンウイスキーAGED 25 YEARS SMALL BATCH」
2016年WWAワールドベスト・グレーン
ウイスキー受賞

世界最高峰のグレーンウイスキーに
日本初認定
「WWA2016」にて“世界最高峰”に輝いた一本。日本国内ではキリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所だけにある、「ケトル」と呼ばれる独自のバッチ式蒸留器で蒸留したもの。香味豊かな蒸留液を、25年以上、古樽で熟成。

 

「山崎18年」
2025年ISC シュプリーム
チャンピオン スピリット受賞

ISC史上初の快挙
3年連続最高賞受賞
サントリーのウイスキー「山崎18年」が、世界的な酒類品評会「ISC 2025」にて、全部門の最高賞「シュプリーム チャンピオン スピリット」を受賞。2023年の「山崎25年」、2024年の「山崎12年」に続き、3年連続の受賞。

“ジャパニーズウイスキー”の
正しい認知・周知における課題も……

数年前から熱い盛り上がりを見せるジャパニーズウイスキー。意外かもしれないが、これまでは酒税法の「ウイスキー」の定義しかなく、近年は日本洋酒酒造組合が施行した自主基準が基本になってきている。組合員には適用されるが、属していなければ適用されず、異なる造り方をしているメーカーもあるのが実情だ。極端なことをいうと、海外の原酒が90%、ジャパニーズウイスキーが10%でも、ブレンドの内容を明記していなかったり、漢字や和風のラベルを貼って、ジャパニーズウイスキーだとする商品が流通している。ブレンド自体が悪いのではなく、どう透明性を担保するかが課題である。

こういった状況になったのは、ウイスキーが日本酒や本格焼酎のような國酒ではなく、本場のスコットランドやアイルランドなどのように製造の法律が定められていなかったことが背景にある。自分で買う場合や贈り物にする際などは、組合に加入しているメーカーを選んだり、透明性の高い商品を選ぶことを意識したい。

一方で、操業をはじめたばかりの蒸留所にとっては、まだ自社の原酒ができてなく、他社から購入して自社でブレンドせざるを得ないのも事実。だが、どこかで線引きをしてこの課題をクリアすることが、今後のジャパニーズウイスキーを語る上で重要になってくるだろう。

いまや、世界的なウイスキーアワードで、当たり前のようにジャパニーズウイスキーが上位に入賞している。日本のウイスキーの品質の高さは、世界のウイスキーファンに認知されるところとなった。
「高い評判を聞きつけて海外から来日される方もいれば、現地でジャパニーズウイスキーを探して、自宅やバーで飲んでいる方もいます。ジャパニーズウイスキーの認識は完全に定着していると言っていい状況です」と住吉さん。

ウイスキージャーナリスト・住吉 祐一郎さん

アワードのほか、海外からの高評価の理由を住吉さんはこう考える。
「革新的にどんどん新しいことに取り組んで、“改善”していく日本人気質がキーワードだと思います。原料の改良や酵母の開発、使用する水や蒸留器の特質、発酵の方法、樽材の選定まで……と、とにかく日々いろんなことを、細かい感性に従って行っています。海外の場合『壊れていないなら直さなくていい』という感じもあり、だからこそ伝統を崩さずに、味が守られている面もあるのですが。日本人の気質に根ざしたウイスキー造りが、世界からの評価を高めていると思います」 

また、世界でメジャーなウイスキーと比較すると、生産量は圧倒的に少ない。近年、設立した蒸留所の多くは、クラフトといわれるごく小さな造り手。その稀少性や多様性もまた、飲み手を惹きつける要素となっている。

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text: Yumiko Numa
2026年1月号「世界を魅了するローカルな酒」

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