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『ザ・ひらまつ ホテルズ&リゾーツ 仙石原』
せきねきょうこのワンダフルホテルライフ

2020.9.11
『ザ・ひらまつ ホテルズ&リゾーツ 仙石原』<br>せきねきょうこのワンダフルホテルライフ
すべての客室には温泉風呂が。窓を全面開け放つことができ、半露天風呂になる。部屋によっては富士山が見えることも。写真の部屋は304

ホテルジャーナリストせきねきょうこさんが素晴らしい体験ができるおすすめホテルを紹介していく《ワンダフルホテルライフ》。今回はフランス料理界を牽引してきた「ひらまつ」のDNAを受け継ぐ、箱根の「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 仙石原」を紹介します。

せきねきょうこ
1994年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多く、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのコンサルタントやアドバイザーも兼任。著書多数。
www.kyokosekine.com

料理人の確かな技と、泊まれる喜びに酔う

ディナーコースの仔羊のロースト。添えられた卵黄の味噌漬けが、出汁で軟らかく煮た堀川ごぼうと仔羊を絶妙に結び付ける。料理長らしい逸品

「ひらまつ」と聞けば、グルメな大人たちは、フランス料理界で一世を風靡した東京西麻布の「ひらまつ亭」を思い起こすだろう。1982年開業のこのレストランこそ、いまも進化を遂げる「ひらまつ」の礎となった起点である。

当時、わずか24席のひらまつ亭は誰もが憧れるレストランであった。瀟洒な店づくりと極上のフレンチに食通が集い、連日満席が続く伝説の繁盛店。実は私も胸躍らせて予約を入れた経験がある。やがて、その店は当時のオーナーシェフ平松氏の実兄の画廊を併設し、最高級フランス料理店「レストランひらまつ」と改名。ビジネスは大きく広がった。

その頃平松氏が近未来に高級ホテルを運営するという姿を思い描いていたかどうかは知らないが、豪奢なホテルづくりや、きめこまやかなもてなし、さらに圧倒的な美を追求する姿勢をホテルの随所に見れば、氏の天性のDNAが透けて見えてくる。

ズワイガニのカペレッティ。カペレッティとは詰め物をしたショートパスタのこと。カニ味噌のフランの上にのせられ、カニとアサリのとろみのあるあんがかかる。右はズワイガニと鹿児島から届いた春を告げるタケノコ

その頃平松氏が近未来に高級ホテルを運営するという姿を思い描いていたかどうかは知らないが、豪奢なホテルづくりや、きめこまやかなもてなし、さらに圧倒的な美を追求する姿勢をホテルの随所に見れば、氏の天性のDNAが透けて見えてくる。

昨今、そんなひらまつのホテル開業が加速している。三重・賢島、熱海に続き、ここ仙石原にも開業。立地の魅力はもちろん、食に対するエネルギーが伝わってくるホテルだ。海の幸は日本有数の小田原漁港や三崎漁港から、近隣の畑からはブランド野菜が手に入る。食は上質なホテルに欠かせない条件なのである。

外はパリッと中はとろりとした絶妙のバランスのマカロン、ユズの生チョコ、パートドフリュイ、ボンボンショコラ、パウンドケーキ、トリュフなどが並ぶ

いまやひらまつは、フランス料理に限らず、イタリア料理、京料理、カフェなど、さまざまなジャンルのレストランを、一流のロケーションに多数披露している。ここ箱根・仙石原でも、絵画のように美しいと評価される料理の数々が提供される。食材の旬を生かし、それぞれのもつ旨みを極限まで際立たせるというひらまつ流の料理法だ。「まず目で楽しみ、次に香りを楽しみ、味わった後に記憶に残る美味しさ」との信念がある。

古くから箱根は、老舗ホテルやリゾートにセレブリティや政府高官、著名人など贅沢な食通が滞在してきた。そのおかげで箱根は食文化が花開いた場所なのだ。峠を越えれば、いくつもの漁港から新鮮な海の幸が届く。また一方で、温暖な気候に恵まれた真鶴付近や伊豆半島のブランド野菜や果物、肉類も地元産で賄える幸運がある。

オーロラソースを使ったエッグベネディクトに、土鍋で提供される熱々のパッパ・アル・ポモドーロ(トマトのパン粥)、アサリ出汁のフランなど

それに加え、ひらまつでは世界中から一流の食材を仕入れるというのだ。キッチンで腕を振るう料理長・吉越謙二郎氏はひらまつのイタリア料理を牽引してきた才覚を仙石原で披露。食材を生かし、時には和食の技を使い、そこにフランス料理の秘儀を取り入れる。

吉越オリジナルのイタリアンは、こうして圧倒的なインパクトで仕上がり、箱根の自然に似合うダイナミズムと、繊細な季節感を融合させた独創的な料理となる。

高原リゾートに流れる穏やかな時間を過ごす至福

すべての客室に温泉を備える
新姥子(しんうばこ)温泉の源泉かけ流しの大理石の湯船があるエリアとリビングルーム、ベッドルームが連続したつくり。ソファなどのインテリアは部屋によって異なる。写真の304は一番広いエグゼクティブスイート

神々しい姿でそびえる名峰富士の恩恵を受ける美しい風景、温泉、清涼な伏流水。中でも、箱根外輪山に囲まれ起伏のある高原が続く仙石原の高台に、木々の緑に包まれて佇む「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 仙石原」は、スモールラグジュアリーホテルとして、ゆったりと贅沢につくられた11室を有している。

かつて仙石原村と呼ばれたこのエリアは、老舗の別荘地でもあった歴史から、いまもプライベートな旅人が好んで訪れる箱根の静かな一等地である。

水盤を望むレストラン
1階にあるレストラン。ディナー時にはキャンドルが灯り、ロマンチックな雰囲気に。テーブル席以外に、楕円のテーブルに沿うように二人掛けのソファがしつらえられている

訪れたのは真冬の晴れた日だった。秋にいっせいに輝く黄金色のススキはすでに終わりを告げていたが、それでも残った穂がダイナミックな銀世界を保っていた。

ホテル館内のインテリアは豪華そのものだ。天然の大理石トラバーチンや、イタリア伝統技法であるアンティコスタッコ塗装(現代建築に合う意匠性と強度を備える漆喰)が施され、格式の中にも新しさを感じさせるデザインは独特な印象がある。

全室に設置された源泉かけ流しの温泉風呂は、プライベートな滞在に拍車をかけ、まるで自分の別荘のように、遠慮なく滞在できる大人感覚が最高だ。

この9月には隣接してレジデンス棟が誕生予定、楽しみである。

THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 仙石原
住所|神奈川県足柄下郡箱根町仙石原1245-33
Tel|0460-83-8981
Fax|0460-83-8982
客室数|11室
料金|1泊2食付5万3000円〜(消費税・入湯税別)
カード|AMEX、DINERS、DC、JCB、UC、VISAなど
チェックイン|15:00 チェックアウト|11:00
夕食|イタリア料理(レストラン) 朝食|洋食(レストラン)
アクセス|車/東名高速道路御殿場ICから約25分 電車/箱根湯本駅からバスで約35分、箱根カントリー入口下車徒歩3分 高速バス/バスタ新宿から約2時間、箱根カントリー入口下車徒歩3分
施設|レストラン
インターネット|Wi-Fi
www.hiramatsuhotels.com/sengokuhara

text : Kyoko Sekine photo : Kanako Nakamura
2019年3月号 特集「暮しが仕事 仕事が暮し。」


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