TRADITION

お餅は丸か?角か?
松本栄文さんの地域文化を味わう「お雑煮図鑑」

2020.12.14
お餅は丸か?角か?<br><small>松本栄文さんの地域文化を味わう「お雑煮図鑑」</small>
関東の醤油仕立ての雑煮には焼いた角餅、関西の白味噌仕立ての雑煮には煮た丸餅が多い。香川では白味噌仕立てに餡餅(写真右)が入る

お正月の定番・お雑煮に当たり前のように入っているお餅。丸や四角などなぜ形が異なるの? そもそもなぜお餅を入れるようになったの? そんな疑問にお答えします。

監修
松本栄文(まつもと・さかふみ)
「花冠陽明庵」主人、作家。全国お雑煮文化研究家。一般社団法人日本食文化会議会長として日本の食文化の普及に努める。著書『日本料理と天皇』(枻出版社)でグルマン世界料理本大賞2015の最高位「殿堂」に輝く。NHKの番組『あさイチ』でお馴染み。
新著『雑煮365日』(NHK出版)で四季の雑煮レシピと雑煮あれこれを紹介。NHK12月のBS放送、2021年1月4日の『あさイチ』にて、松本さんの雑煮談義をお楽しみに!

なぜ、雑煮にお餅を入れるのか。ひとつは、雑煮というものが、もともと平安時代より続く宮廷祭祀の「歯固めの儀」に由来するため。もうひとつは、お米は神々からの賜り物であり、そのお米をいたお餅は、神々の力を凝縮したまさに霊力の塊のような存在だと考えられているから。「搗く」は運がつく、運が開けるということにも通じ、お餅は神聖な食べ物として節句には欠かせないものであった。そして古来、お餅は丸くするもの。丸は太陽や宇宙を表すかたちであり、雑煮に入れるお餅も、神々の依代である鏡を模した丸餅が必然であった。

時代が下って江戸になると、江戸城下で人口が急増加し、お餅を一度にたくさんつくる必要が生まれる。お餅を搗いて一つひとつ手で丸める「丸餅」では生産が追いつかず、餅を一気にのしてから切り分ける「角餅」が考案された。角餅を焼いた香ばしさが醤油仕立ての汁によく合い、関東にて角餅文化が広まることになる。

ところで、香川の讃岐地方の雑煮は白味噌仕立てに餡餅を入れるが、一説には甘いものが贅沢品であった江戸時代、せめて年に一度くらい甘い餡を食べたいと、お餅に隠して雑煮に入れたのがはじまり。熊本の宇城地方でも、干し椎茸と小海老で出汁を取った具だくさんの雑煮に餡餅を入れる文化がある。辺境の集落では独自の食文化が現在に受け継がれ、日本各地に個性的な雑煮が点在していることに浪漫を感じる。

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地域の文化を味わう「お雑煮図鑑」
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supervision & cooking:Sakafumi Matsumoto cooperation:Foundation for Japanese Food Culture Forum text:Yukie Mashumoto photo:Kenji Itano
Discover Japan 2018年1月号「ニッポンの酒最前線」


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