《五ツ星お米マイスター》が惚れた
おすすめお米銘柄10選を徹底解剖!【後編】
米の最前線で活躍し、あらゆる銘柄を知り尽くした「五ツ星お米マイスター」が厳選した10銘柄。それぞれの特長や相性のよい料理、さらにお米マイスター直伝の美味しく炊くコツまで、その知られざる魅力を徹底解剖する。
栃木《とちぎの星》
どんな気候でも美味しく育つ、新時代の米
〈誕生年〉
2014年
〈澁谷さんのおすすめポイント〉
「暑さに強く、寒さにも強い“鈍感力のある米”は、どんな環境にも順応できる、まさに未来型といえます。大粒で丸々とした美味しそうなフォルムをしていて、甘みと旨みのバランスがよく、パリッ、プリッ、もっちりとさまざまな食感が楽しめるのが魅力です」
〈相性のよい料理〉
カツ丼
カツ丼や牛丼など汁気のある料理がおすすめ。特別なことをしなくても安定して美味しく炊くことができるため、水加減や浸漬時間もお好みで
栃木県の中心地、宇都宮市は「雷都」と呼ばれるほど雷が多く、夏の日中は30℃を超えるが、雷を伴った夕立のおかげで夜の気温が下がり寒暖差が生まれる。この気候条件が栃木に美味しい米をもたらしているが、県が独自に開発した「なすひかり」は、近年の温暖化の影響による異常気象などで、収量の減少や品質の低下が問題視されていた。その課題を克服するべく「栃木11号」と「なすひかり」を交配し開発された品種が「とちぎの星」だ。
災害に打ち勝ち、燦然と輝く星を目指して名づけられたブランド米の特徴は、ぷっくり丸い見た目と噛むほどに広がる豊かな甘み。また、粒がしっかりしているので炊飯後もつぶれず、冷めても美味しい味わいも魅力だ。22014年にデビューして以降、’15年、’17年、’18年、’19年と立て続けに食味ランキングで最高評価の特Aを獲得。さらに’19年、国と国民の安寧や五穀豊穣を祈る「新嘗祭」を即位後にはじめて行う「大嘗祭」では献上米に選ばれたことで年々、認知度が上がっている。現在、栃木県やJAグループ栃木が一体となり、県を代表する米として大々的な発信が行われている。
「まだまだ全国的に認知度の低い知られざる米ですが、今後大ブレイクするポテンシャルを秘めています」と澁谷さん。
新潟《新之助》
一度食べたら忘れられない濃厚さ
〈誕生年〉
2017年
〈相性のよい料理〉
塩おにぎり
塩おにぎりや焼き魚、土鍋ご飯がおすすめ。膨張率が高いため、炊く前に1~2時間吸水させるのがコツ
〈澁谷さんのおすすめポイント〉
「新感覚の米。やさしい甘みとつや感、いままでに味わったことのない弾力感と凝縮された旨みが魅力。冷めてからもみずみずしく、甘みがよりいっそう濃厚に深まる、記憶に残る味わいです。今年は特に素晴らしい出来でした」
日本を代表する米処である新潟県では、食シーンの多様化や嗜好の変化など時代に合わせ、コシヒカリに次ぐ新品種の開発が行われてきた。その中で、2000年にデビューした「こしいぶき」を経て、食味・品質面で安定しやすい晩生品種の開発を目指し、コシヒカリとは異なる美味しさを追求して開発されたのが「新之助」だ。
大粒で炊き上がりに輝くつやつやの見た目、弾力のある食感の後まろやかな甘みと深いコクが広がる豊潤な味わい、そして冷めても美味しいクオリティはコシヒカリと肩を並べ、日本の食の可能性を新たに切り開く米として高く評価されている。
福井《いちほまれ》
軟らかさと粒感が共存した優しい味わい
〈誕生年〉
2016年
〈小林さんのおすすめポイント〉
「インパクトの強い米は食べ飽きますが、『いちほまれ』は高レベルでバランスがよく、食べ飽きない。やさしく甘い香りが食欲をかき立ててくれます。コシヒカリが好きで食べ続けている人に、ぜひ召し上がっていただきたいです」
〈相性のよい料理〉
肉じゃが
干物や肉じゃがなど、出汁の利いた家庭料理と相性抜群。芯までしっかり吸水させて炊くのがよい
福井県は、県東部に連なる霊峰白山をはじめ山々から流れる豊富な雪解け水と肥沃な大地に恵まれ、北陸を代表する米処として古くより米づくりが発展してきた。日本を代表する銘柄米「コシヒカリ」が生まれた地としても知られている。
その技術を尽くし6年の歳月をかけて開発された高温耐性品種が「いちほまれ」だ。粒感の弾力だけでなくもちもちの粘りも楽しめる新しい食感で、噛めば噛むほど甘みが広がり、毎日でも食べ飽きない味わいが魅力。「日本一美味しい、誉れ高きお米」を願って開発された次世代を担う米として知名度を上げているので、今後注目したい。
岐阜《銀の朏(いのちの壱)》
噛むと旨みがほとばしるジューシーさ
〈誕生年〉
2013年
〈小池さんのおすすめポイント〉
「三日月のような1本の白い筋が入っている大きい粒は食べ応え抜群。旨みがダイレクトに舌にのり、噛むごとに濃厚な味わいが脳髄までほとばしります。寒暖差の大きかった今年は、去年よりさらに美味しくなっているのでおすすめです」
〈相性のよい料理〉
ごはんのお供(漬物、昆布の佃煮など)
旨みが非常に強いため、単体か、粒の旨みを生かす漬物がおすすめ。水はやや少なめで炊くほうが美味しい
岐阜県下呂市で栽培されているコシヒカリの中から新品種「いのちの壱」が偶然発見された。その特性を生かし、生産地と品質にこだわりたいという想いで地元の農家が生産グループを設立。岐阜県の飛騨及びその周辺の中山間地域で、独自の栽培基準にのっとって栽培されたものだけを「銀の朏」のブランド名で2013年より販売している。
農薬の使用を控え、化学肥料を一切使用しない栽培でつくられる米は、コシヒカリの約1・5倍大きい粒の存在感が特長。口に含んでから噛み締めるたびに体感する極上の食感とのどを通り過ぎても残る鮮烈な旨みは、何度も日本一の称号を獲得している。
愛媛《ひめの凜》
ひと口目から広がるキレのよい甘さと旨み
〈誕生年〉
2019年
〈小林さんのおすすめポイント〉
「ライトで華やかな香りながら大粒なので、弾力がしっかり感じられます。ひと噛み目から体感できる米本来の甘さと旨みをぜひ味わってほしいです。高温耐性をもつ品種として開発されたので、温暖化が味に影響しないのも魅力です」
〈相性のよい料理〉
白身魚の炊き込みご飯
出汁を利かせた白身魚の炊き込みご飯が合う。炊く際は浸漬60分、蒸らし15分、3分以内のザル上げで
「完全な愛媛オリジナル品種の米」をコンセプトに約3万1000個体の中から選抜され、16年かけて開発された新ブランド米。夏の暑さに強く、収量の多い稲には大粒で透明度の高い米が実り、しっかりとした噛み応えが魅力。食べ進めると、上品な甘みが口の中に広がる。
県が定める厳しい基準を遵守する「認定栽培者」だけが生産し、独自の基準によって3つのランクに区分するなどの取り組みで美味しさを追求。「ひと噛みしたときのはっきりしたキレのよい甘さと旨みが印象的。愛媛に銘柄米のイメージがなかった方からもリピートをいただいている、イチオシの米です」と小林さん。
※米の栽培地域は、農林水産省「各都道府県において主に栽培されている品種リスト」(2023年3月)より。
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01|2024年度、食べておきたい新米【前編】
02|2024年度、食べておきたい新米【後編】
03|おすすめお米銘柄10選【前編】
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text: Discover Japan
Discover Japan 2024年12月号「米と魚」