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地方における高付加価値な観光地づくりとは?

2025.4.30
地方における高付加価値な観光地づくりとは?

日本が真の観光立国となっていくために必要なのが、地域の魅力の磨き上げや、地域全体を挙げての魅力ある観光地づくりだ。その現状や展望を観光庁の担当者にうかがった。観光庁の「地方における高付加価値なインバウンド観光地づくり」施策とは?

なぜ地方が観光のカギ?

観光を日本の新たな産業として発展させるにあたり、観光庁が注力している施策のひとつが「地方における高付加価値なインバウンド観光地づくり」。生産人口の減少が経済に暗い影を落とす一因となっている地方だが、そこに一人あたりの消費額が大きい“高付加価値旅行者”を呼び込むことで地方経済の活性化を図るのが狙いだ。

 

〈大都市圏のオーバーツーリズム問題〉

日本政府観光局によると、2024年の海外から日本への訪問者数は3600万人超えと、前年比47.1%増となり過去最高を更新した。しかし、訪日外国人旅行者に人気の旅先は、東京、大阪、千葉、京都、福岡など大都市圏に集中。オーバーツーリズムによる問題が起こっているため、観光立国を推進していくためにも、今後は旅行者を地方へと分散することが必要である

ターゲットを高付加価値旅行者に絞る理由はいくつかあるが、そのひとつが彼らに共通する知的好奇心の強さ。彼らは地域文化に興味を抱き、それらに触れられる体験には消費を惜しまない傾向にある。

そのため、各地域はその土地ならではの伝統や文化を磨き上げ、観光コンテンツとして体験できる体制を整えようとしている。地域文化に感銘を受けた高付加価値旅行者が、旅行消費に積極的になれば、文化資源の保持にもつながる。

 

〈地方の少子高齢化による経済問題〉

2021〜2045年の高齢化率の推移では、東京・神奈川の高齢化率は30%台。対して地方は40%超えるエリアも多く、秋田においては2045年には県人口の約半分が65歳以上になると予測。少子高齢化による労働力減少は、後継者問題をはじめとした地方の深刻な経済問題を引き起こしているため、その対策のひとつとして観光振興を推進している

観光庁が高付加価値旅行者を誘客する
14のモデル地域を選定!

〈磨き上げた地方の魅力を世界に発信〉

世界的な評価が認められる地域資源の候補が存在すること、地元関係者の気運が醸成されていることなどが要件となり、最終的には14の地域を「モデル観光地」として選定。各地域が観光目的となり得るウリを創出し、世界的デスティネーションとしての地位を確立するため、観光庁がバックアップしている

そこで観光庁では、本施策のモデル観光地となる地域を公募。14地域が選定されたのは2023〜2024年とあり、まだ各地域は取り組みをはじめたばかりの段階だが、これらモデル観光地が今後どのように発展するのかは楽しみなところ。

将来的には長期滞在がかなうホスピタリティを目指しているが、施策の根底にあるのは観光業の推進ではなく、幸せな暮らしを育むまちづくり。観光を通じて地方振興が加速すれば、都市圏集中が緩和されるかもしれない。

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政策の現状や各地域の展望とは?
 
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text: Natsu Arai
2025年3月号「ニッポンのまちづくり最前線」

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