鹿児島食材でドイツ風の朝食を
|料理研究家・門倉多仁亜の美味しい地元自慢⑦
真に美味しいものはローカルにあり! 旅の目的にするもよし、取り寄せて自宅で楽しむのもおすすめ。今回は料理研究家・門倉多仁亜さんが鹿児島県の美味しいオススメを紹介。
門倉多仁亜(かどくら たにあ)
日本人の父とドイツ人の母の下で育つ。3年ほど前に、東京から夫の出身地である鹿児島県鹿屋市に移住。雑誌や書籍で料理やドイツのライフスタイルなどを発信している
夫の故郷、鹿児島県鹿屋市に家を建て、拠点をそちらに移しました。鹿屋は大隅半島の中心に位置し、自然がいっぱいで、農業も漁業も畜産も盛んな地域。若い人たちが頑張っていてつい応援したくなります。
遠方の方にもぜひ鹿屋に来てほしいと企画したのが1泊2日の「クッキングホリデイ」です。地元の生産者を訪ね、買い出しをしてから一緒に夕食をつくり、おしゃべりしながら食事。その日はホテルまでお送りし、翌朝は再び我が家でドイツ風の朝食を楽しんでいただきます。
ドイツで暮らしていた頃、朝食のテーブルに必ずあったのがレバーペーストでした。毎朝、近所にパンを買いに行くのが私の役目。焼きたての小さなパンを横に切り、バターを塗って片方にはレバーペースト。そんな思い出もあり、鹿屋での朝食にも欠かせません。「ふくどめ小牧場」と「南州農場」のどちらにもドイツで修業をしたマイスターがつくる製品があって、ふくどめ小牧場のちょっとゴツゴツしたタイプはドイツでは田舎風。南州農場のほうは裏ごしを重ねてふわっとしたムースのような食感。どちらも美味しくて、しかも自社農場で育てた豚肉でつくるのですから、ドイツで食べるよりよっぽどいいものなんです!
パンのもう半分にはフレッシュチーズを塗り、日本では「え? そんなに!」と言われるぐらい、季節のジャムをたっぷりのせます。チーズは「kotobuki cheese」のカノヤチーズ。つくりたてはミルキーだけどさっぱりと食べられて、少し酸味があるのもいいところ。ジャムは地元の旬の果物で何種類か手づくりしています。冬から春にかけては鹿児島にたっぷりある柑橘、夏は庭のグァバにブルーベリー、すももはスパイスを加えてドイツ風に仕上げます。
ドイツの朝食の定番がもうひとつありました。ゆで卵です。ゆで具合は皆好みがあり、私は水から入れて沸騰して8分。半熟よりやや固めが好きです。エッグカップにのせた卵は、殻を半分だけむいてカップに戻し、塩をひとつまみ。バターを塗ったパンを片手に持って卵をすくい、まるで卵かけご飯のようにパンにのせて食べるんです。そのときのスプーンは決まってプラスチックか貝製。昔のシルバーのスプーンでは、化学反応で卵の味がおかしくなるためです。そんなわけで、私は友人(「サテライツ」の主人)が放し飼いで育てている卵を愛用しています。
朝食に親しい友人を招くのはドイツではごく一般的。招かれた人が焼きたてのパンを持参し、ホストはそれ以外を準備します。朝食なら大人も子どもも楽しめるのがいいですよね。お客さまがない日でも、休日、新聞を読みながらゆっくり朝食を取るのは豊かな時間だなと思います。
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南州農場
www.nanshu-pork.com
ふくどめ小牧場
住所|鹿児島県鹿屋市獅子目町81-1
Tel|0994-48-2324
kotobuki cheese
住所|鹿児島県鹿屋市北田町5-5
Tel|0994-43-3552
https://kotobukicheese.stores.jp
サテライツ
HPをリニューアル中につき、問い合わせはメールにて。
tknbkawahara@satellitesinc.jp
text: Yukie Masumoto
Discover Japan 2024年3月号「口福なニッポン」