FOOD

食堂中華ワンダーランド・鶴岡
|物書き料理家・マツーラユタカの美味しい地元自慢②

2024.4.18
食堂中華ワンダーランド・鶴岡<br><small>|物書き料理家・マツーラユタカの美味しい地元自慢②</small>

真に美味しいものはローカルにあり! 旅の目的にするもよし、取り寄せて自宅で楽しむのもおすすめ。今回は物書き料理家・マツーラユタカさんが故郷である山形県鶴岡市の美味しいオススメを紹介。

マツーラ・ユタカ
フードユニット「つむぎや」として活動後、故郷である山形県鶴岡市にUターン。妻であり暮らしの装飾家・ミスミノリコさんとともに、カフェ&ギャラリー「manoma」を営む

≪前の記事を読む

いろは食堂
特筆すべきはスープ。東京から友人たちを連れて行くことも多いが、女性も男性も、ここのスープを飲み干す率が高し。中華そば780円

厳しい冬と美しい自然に育まれてきた独特の精神文化と結び付いた食の都・山形県鶴岡市。ユネスコの食文化創造都市にも認定され、多種多様な食のレイヤーがあって、魅力を語り出したらキリがない土地だが、ここでオイラが推すのは、B面的な魅力、食堂の中華そば。
 
そもそも山形の海側、庄内地方は、あっさりめの魚介出汁のラーメンが大変に美味しい土地。ラーメン好きが遠征してくるような有名ラーメン店もいろいろありながら、昔ながらの食堂の中華そばもまた人気という、奥深いラーメン文化が息づく土地だ。その源流は、昭和初期に東京や横浜の中華街から移り住んだ中国人が伝えたもの。「日本そば」に対して「支那そば」や「中華そば」と呼ばれたのがはじまり。もともとそば文化がある山形では、そば店や大衆食堂に中華そばが取り込まれていき、暮らしの中に根づいてきた。
 
酒造りが盛んな鶴岡市の大山地区にある「いろは食堂」は、その系譜にある大衆食堂。そば店としてはじまり、中華そばを出すようになって70年以上が経っているという。そばも中華そばも「麦切」という鶴岡独自の冷やしうどんも、麺はすべて自家製。8種以上の魚介を組み合わせ、そばのかえしをベースに展開させたという中華そばのスープはあっさり甘く、癖になる旨みがある。80席以上ある客席が、幸せな湯気で満たされる光景は壮観のひと言。

文下食堂
住宅街にあるこぢんまりとしたお店。中華そばに、小皿に盛られた漬物が付いてくるのが、食堂らしい人情を感じさせる。中華そば750円

「食堂」とうたいながら、メニューは中華そばのみ、という潔さに惹きつけられるのが、鶴岡市と三川町の境にある集落・文下にある「文下食堂」。魚介系に鶏出汁をブレンドしたようなスープに、ゆるく縮れた麺は、誰もが懐かしいと感じるようなクラシカルな味わい。ラジオが流れる店内、女性だけで切り盛りされている厨房もすがすがしい。

田代食堂
伝統芸能・黒川能でも知られる櫛引地区の奥へと車を走らせると、温もりあふれる一杯がある。そんなトリップ感も味わいに。中華そば750円

女衆が気持ちよく働くのは、櫛引地区の高台にある「田代食堂」も。こちらも昭和50年代から続く歴史あるお店。鶴岡市中心部からは車で20分ほどとアクセスがよいわけではないが、オープン前から待つ人もいて、40席ほどの店内は瞬く間に満席になる人気店。焼き干し、鶏ガラや豚骨をブレンドしつつ、魚介の旨みを感じるすっきりめでコク深いスープ。そこにこだわりの手もみ麺、柔らかいバラ肉を使ったチャーシューが合わさって満足度がとても高い。
 
いずれのお店もあっさり味でどことなく磯の風味を感じる、しみじみとした美味しさ。家族みんなで食べに来ている光景もよく目にするが、雪も多く天気も荒れやすい庄内地方で心温まる一杯は、鶴岡の暮らしに根づいてきた必然性がある。ずっと色褪せない食堂の中華そば。そのワ ンダーランドともいえる鶴岡でぜひとも味わってほしい。

line

いろは食堂
住所|山形県鶴岡市友江町20-25
営業時間|11:00〜15:00 ※なくなり次第終了
定休日|木曜、第2水曜

文下食堂
住所|山形県鶴岡市文下村ノ内97
Tel|0235-29-2798
営業時間|11〜4月11:00〜15:30、5〜10月11:00〜16:00
定休日|水曜

田代食堂
住所|山形県鶴岡市田代字大坂山309
Tel|0235-57-4614
営業時間|11:00〜14:00 ※なくなり次第終了
定休日|火・水曜

Discover Japan 2024年3月号「口福なニッポン」

山形のオススメ記事

関連するテーマの人気記事