TRADITION

2026年秋、首里城正殿が完成予定!
復興を機に、伝統技術の継承が進む
|首里城正殿、復興のいま

2026.5.19
2026年秋、首里城正殿が完成予定!<br>復興を機に、伝統技術の継承が進む<br>|首里城正殿、復興のいま

2026年秋の正殿完成に向けて、着々と復元工事が進む「首里城」。琉球文化の保存や継承とともに、伝統技術を次世代に受け継ぐ機会にもなっている。復元途中のいまだからこそ出合える、首里城正殿を訪ねた。

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令和の復元で目指す姿とは?

令和の復元で目指すのは1712年~戦前までの首里城の姿だ。
「この時代以降になると、復元の根拠になる資料が比較的残されています。今回の復元では前回の復元時の姿を基にしつつ、最新の技術や研究を踏まえて、細かな部分にアップデートを加えています」と兼久さん。

塗装彩色
建物そのものが“巨大な漆芸”といわれる正殿。漆塗りを担う企業が若手の技術者を現場に参加させ、下地付け、水研ぎ、中塗りなど琉球漆器の手法を伝えている。復元作業の中で経験を積み、上塗りなど難易度の高い作業にも取り組む予定だ
©内閣府沖縄総合事務局 国営沖縄記念公園事務所

明治~大正時代の古写真をデータにして「高精細化」することでこれまではっきりしなかった細部の造形が見えてくる。その研究結果を有識者で編成される委員会で議論し、反映させるかどうかを検討していくという。

焼物
龍頭棟飾(上)と鬼瓦(下)は平成の復元を手掛けた職人と県立芸術大学出身の若手職人、「壺屋陶器事業協同組合」で制作。緑色の釉薬は「オーグスヤ」というやちむん特有のもの。龍頭棟飾は約200のピースで焼かれ、屋根の上で組み上げる

「たとえば、屋根の上に乗っている『龍頭棟飾』は、前回は青色(コバルトブルー)だった目の色を黒色に変更することになりました。調査を進めるうちに、沖縄において青色の釉薬は近代以降に使われはじめたものだと判明したためです」

火災を受けて、防火対策もいっそう強化する方針だ。電気系統の安全対策、煙・熱・炎感知器の強化やスプリンクラーの新設など再発防止策を講じ、世界文化遺産である首里城跡の保護にも努める。

さらに今回は「段階的公開」、「地域振興・観光振興への貢献」を指針に掲げ、地域住民や観光客参加型の“見せる復興”への取り組みも実施。工事過程の一般公開やボランティア活動を通して、沖縄の地域活性化を目指していく。

復興を機に、伝統技術の
継承が進んでいます!

染織
写真は、国王が着座する正殿1階の御差床(うさすか)上部に飾られる垂飾。龍の鱗などは全国的な技法「金糸縫い」で京都でつくられ、目、牙、火炎などは「琉球古刺繍」で沖縄にゆかりのある職人たちが制作に携わっている
©沖縄県土木建築部首里城復興課

今回の復元で期待されているのが若手人材の育成だ。内閣府、沖縄県、「沖縄美ら島財団」、「沖縄県立芸術大学」の4者が「首里城復元における技術継承・人材育成に係る連携協定」を締結。復元工事に若手の職人を参画させ、伝統技術の担い手を県内で育成している。

伝統技術継承の取り組みを実施しているのは「焼物」、「赤瓦」、「染織」、「彫刻」、「木工」、「塗装彩色」の6分野。たとえば塗装彩色に含まれる「漆芸」を担当している工房では、県立芸術大学や「沖縄県工芸振興センター」出身の若者を雇用し、全国的にも貴重な建造物への漆塗りを担える技術者を育てている。

赤瓦
「クチャ」と呼ばれる泥岩と赤土でつくられる、沖縄本島産の赤瓦を使用。漆芸や窯業の経験者を対象に、首里城特有の反りのある屋根への瓦葺き技術、大量の雨に負けない漆喰の塗り方や瓦の納め方など、沖縄独自の技術が継承される
©国営沖縄記念公園事務所

このタイミングでの復元事業について、兼久さんは若手を育成するいいチャンスだととらえていた。
「平成の復元から約35年。当時若手職人として現場で活躍した方々が、ちょうど現場責任者になる頃なんです。彼らから直接指導を受けられるのは、若者たちにとって貴重な経験になると思います」

木工
正殿は釘や金具を使わずに組み立てる「木組み」技法で建てられる。復元現場では木工事を担当する企業が沖縄出身の技術者を雇用し、木材加工や組み立ての技術を継承している。写真は沖縄県産オキナワウラジロガシを組み上げる様子
©内閣府沖縄総合事務局 国営沖縄記念公園事務所

建築物は建てることがゴールではない。完成後の定期的なメインテナンスも重要になる。県内に技術をもった職人が増え、ネットワークが構築できれば、首里城を持続可能なかたちで受け継いでいけるようになるだろう。

沖縄の文化全体を盛り上げることにもつながる首里城の復元。秋の正殿完成が待ち遠しい。

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彫刻
正殿には、正面などに見られる木彫刻と大龍柱などの石彫刻がある。木彫刻の分野では、実際に彫刻物を制作する大学講師を招いた研修、復元現場見学などを実施。写真は琉球特有の文様である獅子、牡丹、唐草を施した彫刻(試作品)

text: Discover Japan photo: Yukiko Shiraki

2026年3月号「訪ねる建築 暮らす建築」

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