芸術祭の仕掛け人・北川フラムが思う大町の独自性とは?
|《北アルプス 国際芸術祭2024》攻略ガイド
北アルプス国際芸術祭の総合ディレクターを務めるのは、これまでに数多くの芸術祭を手掛けてきたアートディレクターの北川フラムさんだ。北川さんの目には大町はどのように映っているのだろうか。大町の魅力と北アルプス国際芸術祭の見どころについてうかがった。
五感を揺さぶる大町の自然でアートがさらに輝く
アートによる地域づくりの嚆矢となった新潟の「大地の芸術祭」など数々の芸術祭を手掛ける北川フラムさんは、大町をどのようにとらえているのだろう。
「まず挙げたいのが地質学的ダイナミズム。大町は日本を東西に分ける断層上に位置します。それが気候にも影響し、東西の植生や地質が混ざり合っています。そして圧倒的な伏流水。春に雪解け水が水路を迸(ほとばし)るさまは圧巻です。川や湖、民家の床下を走る水路や街中の水場にも水の豊かさを感じます」
北川さんはさらに続ける。
「また大町は北アルプスと東山に挟まれた盆地です。盆地から見る空は、高く感じませんか。長野は古くから教育熱心で進歩的な土地柄。数々の知識人を輩出してきましたが、それは高い山と空を仰ぎ見て、意識を高くもち続けてきたからではないかと思うのです」
そうした想いからこの芸術祭のコンセプト「水・木・土・空」が生まれた。
「大町の自然は、人間の起源にまで思いをめぐらし、五感を揺さぶる力があります。大町のダイナミックな自然に触れて、アーティストも五感を研ぎ澄まされて作品をつくっている。その共感があるのは大町ならではです」
取材時はまだ制作中のものが多かったが、あえて注目作品を問うてみた。
「ルデル・モーさんやヨウ・ウェンフーさんの作品は圧倒的な出来でしたが、ほかはまだわかりません。プランを超えてくるのがアーティストですから。土地の自然や風土に対峙する中で、構想を遥かに超えるものが生まれる。それも芸術祭のおもしろさです」
「北アルプス国際芸術祭」は今回で3回目。人気の「大地の芸術祭」も3回目あたりから手応えがよくなったそう。
「芸術祭なんて不要だという方もおられます。でも最初は訝(いぶか)しく思っていても、外から人がたくさん来て“いいね”と言われれば楽しくなる人も多い。そして回を重ねると、ないと寂しくなるんです。2004年に新潟県中越地震があったとき、芸術祭どころじゃないのに、新潟の人たちは“早く準備したい”と言ってくれた。3年に一度行われることが一種の目標にもなり得るんですね。どの芸術祭もリピーターが多いですが、それは“行けばおもしろいことがある”と思ってもらえるから。大町は土地の魅力が豊かなのだから、回を重ねて“おもしろい場所”のイメージを根づかせてほしいですね」
北アルプス国際芸術祭2024
会期|9月13日(金)~11月4日(月)
Tel|0261-85-0133
公開時間|9:30~16:30
定休日|水曜
料金|一般3000円、18~16歳1500円、15歳以下無料 ※個別鑑賞券は300円
https://shinano-omachi.jp
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<芸術祭を攻略するおすすめルート>
1日目
10:00 信濃大町駅に到着、インフォメーションセンターで情報収集
11:00 旧大町北高校で作品鑑賞(千田泰広氏など)
12:00 大町名店街で作品鑑賞(淺井裕介氏など)
12:30 書麓アルプで作品鑑賞(ポウラ・ニチョ・クメズ氏)
13:30 創舎 わちがいで昼食
15:00 鷹狩山山頂で大町の絶景と作品を楽しむ(目[mé])
16:00 東山エリアをめぐりながら作品鑑賞(ヨウ・ウェンフー氏など)
18:00 信濃大町駅近くの宿に宿泊
2日目
9:00 信濃大町駅出発
9:30 木崎湖で作品鑑賞(北アルプス林研グループなど)
10:30 ふるさと創造館ラーバン中綱で作品鑑賞(蠣崎誓氏など)
11:30 公式レストランで昼食
13:00 ダムエリアをめぐりながら作品鑑賞(淺井裕介氏など)
15:00 源流エリアをめぐりながら作品鑑賞(松本秋則氏、平田五郎氏など)
17:00 信濃大町駅前インフォメーションセンターで土産品購入
18:00 信濃大町駅出発
信濃大町駅前インフォメーションセンター
住所|長野県大町市大町3168
Tel|0261-85-0133
営業時間|8:30~18:00
公開期間|~11月4日(月)
定休日|なし
1|長野・大町の風土をアートを通して味わう旅へ
2|市街地エリア/東山エリア
3|仁科三湖エリア/ダムエリア/源流エリア
4|大町の食・自然・文化をより楽しむスポットへ
5|北川フラムが思う大町の独自性とは?
text: Miyo Yoshinaga photo: Tomoaki Okuyama
Discover Japan 2024年10月号「自然とアートの旅」