帝国ホテル
《ホテルショップ ガルガンチュワ》
シャリアピンパイ
|一流ホテルの美味しい名作⑦
一流ホテルには一流のおいしさがある。先人がつくり上げて大切に受け継いできた日本のホテルが贈る美味しいものがたりをじっくりと愉しみ、そして味わってほしい。
今回は帝国ホテル「ホテルショップ ガルガンチュワ」のシャリアピンパイを紹介。伝統の味を家庭でも楽しめるように、製法から販売の仕方までこだわり抜いた至極の一品だ。
すき焼きをヒントに誕生?
「帝国ホテル」に「シャリアピンステーキ」という伝統のメニューがある。これは1936年、ホテルに宿泊したロシアの声楽家、フョードル・イワノビッチ・シャリアピン氏のために考案されたステーキだ。歯痛に悩まされていたシャリアピン氏は好物のステーキが食べられず、柔らかい肉料理をリクエストした。それに応えるかたちで、当時のレストラン「ニューグリル」のシェフ、筒井福夫氏が考案したものだ。
和牛のランプ肉をたたいて薄く伸ばし、すりおろしたタマネギに漬け込み、さっと焼き、ソースの代わりにソテーしたみじん切りのタマネギをたっぷりとのせている。タマネギを使って肉を柔らかくするというアイデアは、実は日本のすき焼きがヒントになった。
帝国ホテル発祥のこのステーキがパイになったのは2003年。ホテルショップ「ガルガンチュワ」のリニューアルオープンの際に、伝統の味を家庭でも味わえるようにとの思いから。ただし、シャリアピンステーキをそのままパイで包んでいるわけではなく、試作を重ねる中でステーキとパイの最高のバランスをつくり上げていった。
まず、肉は和牛ではなく、オーストラリア産の赤身肉を用いる。パイと合わせるには和牛では脂が多過ぎるからだ。赤身でも柔らかいヒレ肉を薄切りにして焼き、飴色にソテーして甘みを出したタマネギを2枚の肉で挟み、パイで包む。24〜30分、焼き上がりにムラが出ないよう途中で前後を入れ替えてじっくりと焼き上げる。
自宅で温める際は、焦げないようにアルミ箔などでカバーをして、中が熱くなるまでじっくり加熱するのがコツ。軽めの赤ワインがとてもよく合う。
シャリアピンパイをホールでしか販売していないのは、ナイフを入れたとき、肉汁の香りが食卓に広がる瞬間を楽しんでほしいという思いから。約90年前、一人のゲストのために心を尽くした帝国ホテルの精神は、その後もしっかりと受け継がれている。
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コーンブレッド
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ホテルショップ「ガルガンチュワ」
住所|東京都千代田区内幸町1-1-1
Tel|03-3539-8086
営業時間|10:00〜19:00
定休日|なし
価格|4200円
サイズ|約φ150㎜
消費期限|製造より2日 ※完全予約制(7日前までに要予約)
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text: Yukie Masumoto photo: Maiko Fukui
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