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《徳之島》で暮らすような滞在で、
人、営みの豊かさを再発見する。
|島を味わい、ととのえる。

2023.1.23
《徳之島》で暮らすような滞在で、<br> 人、営みの豊かさを再発見する。<br><small>|島を味わい、ととのえる。</small>

海に囲まれた環境で、独自の風土や歴史によって築き上げられた3つの島は、それぞれが唯一無二の文化を形成している。“絶景”や“美食”などの楽しみだけではない、各島に息づく文化に触れる大人のリトリート旅へいざ。

徳之島では「シマで暮らすように旅する」滞在体験を提案。そこで体感するのは「ユイ」という精神に象徴される、人々の温もりと営みの豊かさだ。闘牛やふり茶など、「なくさみ」という島固有の文化にも触れてほしい。

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何もしない自分だけの時間。
外へ出て、大自然を感じるのもいい。

伝泊 サンゴ石小屋のある宿
もともと牛舎として使われていたというサンゴ石小屋は、屋根付きのウッドデッキに改修され、ヨガをするのもよさそうだ
天城町の集落の一角にある琉球様式が残る宿で、敷地内には青パパイヤや島みかん「ヤマシークニン」の木が自生するなど島の自然にあふれている(伝泊 サンゴ石小屋のある宿)

徳之島は奄美群島のほぼ中央にある離島のひとつ。絶滅危惧植物のオオアマミテンナンショウをはじめとする固有植物の宝庫として知られているが、「闘牛の島」としても有名であることはご存じだろうか。体重1t前後の牛同士が戦う光景を目にすれば、たちまちその迫力の虜になるだろう。島は徳之島町・伊仙町・天城町の3つで構成され、それぞれの町の集落=シマに独自の文化が息づいている。島民に話を聞けば、「シマの住民同士で交流し、話し合い、助け合いながら笑顔で暮らす精神が受け継がれている」という。

そんな島の伝統や暮らしを感じる滞在先としておすすめしたいのが「伝泊 古民家」。風土に根ざす伝統・伝説的な建築と集落文化を次の時代に伝えるため「島のときと対話する宿」をコンセプトに掲げ、集落や島民との交流も提案している。それは「シマで暮らすように旅する」という滞在体験。いわゆるリゾートホテルとは異なり、常駐スタッフもいなければ、レストランもない。その代わり自分たちだけの時間を過ごすことができる。周辺の飲食店へ繰り出し島民との交流を楽しむのもよし、宿のキッチンで島ならではの食材を買い出して自炊するのもおすすめだ。

朝食は、徳之島で人気の「Veggie-ful Sandwich J’s」の野菜たっぷりサンドイッチを届けてくれる(伝泊 サンゴ石小屋のある宿)
瓦に漆喰を組み合わせた屋根や母屋と離れが廊下と縁側で連結された独特の間取りで、徳之島の昔の暮らしが体験できる(伝泊 サンゴ石小屋のある宿)

伝泊 古民家は、奄美大島に8つ、加計呂麻島にふたつ、そして徳之島に6つの宿を展開。ビーチや景勝地が近い宿も魅力的だが、島の伝統を存分に実感したいなら「伝泊 サンゴ石小屋のある宿」だ。島の北側にある松原闘牛場そばの小さな集落にあり、琉球の建築様式が色濃く残っている。かつてここに住んでいた人たちが、どのような暮らしをしていたのか。そんなことをイメージしながら泊まるのも楽しい。周辺を散策すれば、集落の住民が「どこから来たの?」と温かく声を掛けてくれたり、おすすめの飲食店や過ごし方を教えてくれることもあるだろう。

伝泊 古民家を拠点とした旅で何よりも島固有の醍醐味と感じたのが、島の人々との対話である。「美味しい」だけでは終わらない、おすすめの交流スポットを次ページで紹介していく。

伝泊 展望台のある宿
景勝地「犬の門蓋」の国立公園内にある宿。断崖の上の孤立したロケーションにあり、目の前の展望台からは広大なスケールの水平線、打ち寄せる波の侵食でできた奇岩が一望できる。コンパクトなつくりの客室で、カップルで過ごすのにおすすめしたい。

住所|鹿児島県大島郡天城町付近
Tel|0997-63-1910
客室数|6棟(徳之島内)
料金|1泊6600円~(税・サ込)
※要事前カード決済
IN|15:00
OUT|10:00
アクセス|車/徳之島空港から約10〜40分
https://den-paku.com

追い込み漁体験
伝泊 古民家が提供しているアクティビティのひとつで、徳之島に伝わる伝統的漁法を体験できる。「伝泊 海亀ビーチの宿」からすぐなので、宿と一緒に予約するのがおすすめ。

料金|大人1名4000円(要予約)
Tel|0997-63-1910(伝泊)

犬の門蓋(いんのじょうふた)
東シナ海に面し、隆起サンゴ礁の長年にわたる浸食でできた通称「めがね岩」といわれる奇岩や断崖は絶景。かつて大飢饉があった際、人畜を襲う野犬を海中に投げたという伝説が残る。

住所|鹿児島県大島郡天城町兼久

美味しいだけじゃない。
人と牛との触れ合いが徳之島の醍醐味!

徳之島をめぐりながら島民と交流していると、「ユイ」の精神と「なくさみ」という考え方が島民の根底にあることがわかる。島随一の本格イタリアン「Bistro Nova Costa」オーナー・麓正高さんはこう語る。「助け合いの精神・ユイが地域の中で伝承され、受け継がれてきました。僕も島内外の人に感謝したいし、この店を通して人と人の絆を深めていきたいのです」。そんな麓さんを慕う人々が集い、また人と人がつながり、何かが生まれる。島の取材を通して実感したことは、総じて徳之島の人々は“絆”を大切にしていること。島を訪れた日からどんどんと輪が広がっていくのは、徳之島ならではの島民性なのだろう。

徳之島の暮らしに深く浸かりたいなら、なくさみという言葉も知っておきたい。ふり茶文化の保存・継承に尽力する平陽子さんは「なくさみとは、もともと『なぐさめる』という意味で、収穫が終わった後に闘牛を楽しんだり島唄を歌って疲れを癒す習わしがありました。ふり茶という文化も、島民にとって朝の農作業の後の癒しの時間だったのだと思います」と話す。徳之島で熱い盛り上がりを見せる闘牛の戦いを表面的に楽しむこともできるが、こうした文化的背景を理解すると、より深く徳之島の“暮らし”を楽しめるはずだ。

照明にも趣向を凝らした広々とした店内。居心地のよい空間に、ついつい長居してしまう

Bistro Nova Costa
2021年10月にオープンしたイタリアン。畜産業を営む傍ら、夫婦で切り盛り。スペシャリテは黒毛和牛ほほ肉の赤ワイン煮(2800円)と黒毛和牛ステーキ。島民のハブとしても機能し、足を運べば賑やかで楽しい交流が待っている。

住所|鹿児島県大島郡天城町松原3109-2
Tel|090-1013-8546
営業時間|18:00~23:00(要予約)
定休日|不定休

やどぅり
店主による自然体のおもてなしの心地よさと、身体が喜ぶ島料理の核心に気づかされる店。美味しい料理をつくるコツを聞くと、「塩が美味しいからよ! それだけ」と笑う。その塩とは、サンゴ礁干潟のあら塩。塩づくり体験もできるのでぜひ。

住所|鹿児島県大島郡伊仙町犬田布1586
Tel|0997-86-9341
営業時間|12:00~18:00(要予約)
定休日|不定休

前里屋敷
昭和初期の風情を残し、集落のシンボルとして住民に親しまれている前里屋敷。ここでは平さんによる「ふり茶」体験が楽しめる。ふり茶とは、玄米茶を独特の茶筅で泡立てて淹れる飲み物で、伊仙町の伝統文化財にも指定されている。

住所|鹿児島県大島郡伊仙町阿権621
Tel|090-2854-7525
営業時間|11:30~14:00(要予約)
料金|1500円(ふり茶体験)
定休日|月・金曜

闘牛大会では、直径約20mのリングでぶつかり合いながら技の応酬を繰り広げる。どちらかの牛が相手にお尻を見せて逃げ出した時点で、戦意喪失と見なされて試合終了となる

徳之島なくさみ館
伊仙町にある屋根付き闘牛場。正月、GW、10月に開催される全島一大会には、島民だけでなく鹿児島や沖縄をはじめ、全国各地から闘牛ファンが押し寄せる。徳之島における闘牛の歴史はおよそ400年前から続く。

闘牛の試合がないときでも、ドームの見学は可能。取材時は偶然にも稽古をする闘牛の様子を見ることができた。夕方の海辺では、散歩中の闘牛に出会えることも

徳之島なくさみ館
住所|鹿児島県大島郡伊仙町大字目手久626
Tel|0997-86-2093
入館時間|自由
入館料|200円(闘牛資料館)
休館日|月曜

闘牛のふれあい体験
闘牛の散歩体験をしたり、間近で牛との交流が楽しめるツアー。牛はとても賢く、戦闘モードでないときは非常に穏やか。オーナーは家族の一員として牛と接し、取材時も小学1年生の子が帰宅すると真っ先に牛舎の掃除をしていた。

住所|鹿児島県大島郡徳之島町花徳付近
Tel|080-3903-2704
時間|平日15:00~、土・日曜、祝日は終日(要予約)
料金|4000円〜(1〜1時間30分)

3泊あっても足りない!
徳之島のおすすめスポット、まだまだあります。

ホテルサンセットリゾート徳之島
海と山に囲まれた徳之島唯一のコテージタイプの、アットホームなリゾートホテル。大自然を感じる展望大浴場、サウナも楽しめる。近隣にはB&G海洋センターもあるため、カヌーやSUPなどのアクティビティにもチャレンジできる。

住所|鹿児島県大島郡天城町大字与名間610-1
Tel|0997-85-2349
料金|1泊素泊まり6800円~(税・サ込)
客室数|70室
www.sunsetresort.burari.biz

伊仙町歴史民俗資料館
旧農業高校の校舎を活用した歴史民俗資料館。館内は自然、民具、考古資料の分野に分かれ、島の風土やかつての暮らしについて学ぶことができる。砂糖車などの民具や、島唄の映像資料は、島独自の貴重なコンテンツだ。

住所|鹿児島県大島郡伊仙町伊仙2945-3
Tel|0997-86-4183
開館時間|9:00~16:30
料金|大人200円、大高生100円、中小生50円
定休日|月曜(祝日の場合は翌日休)
https://rekimin.wixsite.com/home

300年ガジュマル(阿権集落)
ガジュマルは徳之島の各地で見られるが、阿権地区のガジュマルは樹齢300年を超える島内随一の迫力。巨木とサンゴ礁の石垣のコントラストが、力強い生命力を感じさせる。このガジュマルにも妖怪・ケンムンが住むといわれている。

住所|鹿児島県大島郡伊仙町阿権周辺

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《島を味わい、ととのえる。》
1|《奄美大島》の自然と伝統文化を見て、触れて、魅了される滞在。
2|世界遺産《屋久島》との共生を感じながら、島の美味と自然を堪能する。
3|《徳之島》で暮らすような滞在で、人、営みの豊かさを再発見する。

text: Nobuhiko Mabuchi photo: Kenji Okazaki
Discover Japan 2023年2月号「癒しの旅と温泉。/秘湯、湯治宿、銭湯、サウナ37」

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