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山口県の“うまい”を堪能する旅。
第4回|語り尽くせない美食 日本酒・パン

2020.11.23 PR
山口県の“うまい”を堪能する旅。<br>第4回|語り尽くせない美食 日本酒・パン

山口県長門市、長門湯本の街づくりに端を発し、県全体の魅力のとりこになった編集部。全4回連載で掘り下げるテーマは、旅の醍醐味「食」。これまでの3回で、海の幸・焼きとり・フルーツと野菜を取り上げてきましたが、それだけでは、ここ山口県の食の魅力は語り切れません。今回は、酒どころとして知られるからこそ欠かせない日本酒から酒販店の名店を、一方で昨今注目の食としてパンの名店を紹介します。

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「獺祭」、「東洋美人」、「雁木」、「貴」――これら、広く知られた日本酒を飲んだことのある人も多いだろう。すべて山口県の日本酒の銘柄だ。自然豊かで、きれいな水に恵まれた山口県は、酒造りも盛ん。そんな山口県の酒の中でも、水質の違いなど、エリアの特性にしたがって、特徴のある日本酒が仕込まれている。

山口の地酒の“伝道師”
「百花繚乱の日本酒の世界を楽しんで」

「地酒のまえつる」では山口県内ほぼ全蔵の日本酒を取り扱っている

山口県下関市の幹線道路沿いにある「地酒のまえつる」は、1989年12月にオープンした町の酒屋だ。両親が始めた店を自然と手伝うようになった前鶴健蔵さんは、この夏に“新米パパ”になったばかり。店内のリーチインクーラーや棚には、日本酒や梅酒などのリキュール類、焼酎がぎっしりと詰まっている。特に山口の地酒については「県内ほぼ全蔵元さんの日本酒を網羅していると思います」と胸を張る。

そんな“山口の地酒の伝道師”である前鶴さんに、山口の日本酒はどんな特徴があるのか教えてもらった。

本州の最西端に位置する山口県は、北と西は日本海、南は瀬戸内海と三方を海に囲まれている。中国地方の中央部を東西に縦貫する中国山地が山口県内にも伸びていて、比較的なだらかではあるが気候や地質を分けている。

「県中央部には日本最大のカルスト台地が広がり、ミネラル分を多く含んだ軟水系として日本では珍しい場所で、この水で仕込んだ酒は硬質な味わいになります」と前鶴さん。「大嶺酒造が代表格です。2010年に約50年ぶりに醸造を再開した蔵ですが、寝かせてもおいしくなるタイプのお酒ですね。“貴”の名で知られる永山本家酒造場もやはり同様に硬めの印象があります」と解説する。

一方、県東部の岩国エリアは、日本最古の木造橋「錦帯橋」がかかる錦川の伏流水や地下水を使った日本酒造りが盛んな地域だ。「軟水の錦川流域の日本酒はやわらかさが特徴。“五橋”を造る酒井酒造や“雁木”の八百新酒造、また、独自の道を拓いている“獺祭”の旭酒造も、岩国市の中でも西部の山間部エリアにあります」(前鶴さん)

ワイングラスで利き酒をする前鶴健蔵さん。「香りがとりやすく、口の中で酒を転がしやすいので愛用しています」

さらに、日本海側には萩市に数多くの日本酒蔵が集まる。前鶴さんは「このエリアは県民に人気の“東洋美人”を造る澄川酒造場に代表されるように、ほどけるようなやさしいお酒が多いですね」と話す。

こんなバラエティに富んだ山口の地酒の魅力を伝えようと、前鶴さんはコロナ禍前まで、酒屋を閉めた後の店舗で、5名限定の角打ちを行っていた。前鶴さんは言う。「僕は日本酒を好きになってくれる人を増やしたいんです。日本酒の世界の入り口まで案内すれば、後は自然に興味は深まっていくでしょう。いまは、蔵の世代交代の影響もあって、酒米作りから行ったり、あえて米を磨かずに米麹ではなく醤油麹で酒を仕込んだりと、チャレンジングな取り組みをする蔵が出てきています。そんな百花繚乱の山口の地酒を盛り上げていきたいです」。

コロナ禍前は、閉店後の21時から24時までの3時間、5名のみ予約制の角打ちを行っていた。今後の再開を期待したいところ

エリアで変わる山口の酒の味わい

日本海エリア
萩市を中心に日本海エリアは、新鮮な魚介類の宝庫。日常的に刺し身を地元の甘めの醤油につけて食べることから、甘味に寄り添うやさしく華やかな味わいの日本酒が多い。

『東洋美人 地帆紅(じぱんぐ)限定大吟醸』(澄川酒造場)
フルーティーでやさしく、上品で華やかな味わいの大吟醸酒。ワイングラスに注ぎ、立ち上がる香りを楽しみながら飲みたい

岩国エリア
錦川にかかる日本を代表する五連の反り橋「錦帯橋」で知られる岩国エリア。錦川の軟水を仕込み水にしている酒蔵が多く、全体的にほどけるようなやわらかな印象の日本酒が中心。

『五(five)純米吟醸一回火入れ(オレンジ)』(酒井酒造)
「五橋」の名で知られる酒井酒造が、木桶を使って仕込んだシリーズで、季節に応じて味わいを変え、6種のロゴカラーで展開。純米吟醸一回火入れ(オレンジ)は秋から冬限定で販売する、生酛造りで火入れした酒だ

県中央・秋吉台エリア
日本最大のカルスト台地「秋吉台」は、ミネラル分を含んだ軟水系として日本では珍しい場所。このため、この地域の日本酒も芯を感じる硬さをもち、長期熟成に耐えられる骨太な味わいを生む。

『貴 純米大吟醸 ドメーヌ貴2019』(永山本家酒造場)
酒蔵から5km圏内の田んぼで自家栽培した山田錦100%で仕込んだ日本酒。酒蔵のテロワールを表現したシリーズで、サラリとしたシルキーな味わいも特徴

地酒のまえつる
住所|山口県下関市山の田本町15-11
Tel|083-253-1722
営業時間|10:00~21:00
定休日|不定休
https://jizake.link/

おいしいパンと“人”とのつながり
来れば必ず笑顔になれるベーカリー

店長の内藤加奈さんは「パンは手段。来てくれるお客さんと一緒に悩んだり、共感したり。パンの向こうにいる人を幸せにしたい」と真摯に話す

秋芳洞やカルスト台地などの観光地で知られる山口県美祢市。自然美にあふれるこの町に、老若男女の行列ができるパン屋があるという。JR美祢(みね)駅のほど近く、レトロで可愛らしい建物が、その「プチラボベーカリー」だ。

「土曜日には開店前から多くのお客様に並んでいただくこともあります。県外から足を運んで下さる方もいて、本当にうれしいです」と話すのは、店主の内藤加奈さん。23歳で初めてパンを作り、その後は独学で学びながら自宅の一室を改装した工房でパンの製造、販売を手がけたり、パン教室を開いたりしてきた。

内藤さんは「2019年3月に10年かけて溜めてきたレシピを自費出版本『パンとまいにち』にまとめることができました。なので、そろそろ次の段階に移る時かなあ、と思い始めたころにこの建物と出合ったんです」と振り返る。

築約100年のどこか懐かしい建物は、郵便局として建てられ、呉服屋として使われていた。内藤さんと“運命的な出合い”をした時は空き家だった。「ひと目惚れして、すぐに管理されている方に会いに行き“パン屋をやりたい!”と交渉しました」と微笑む。

同年5月にオープンすると同時に話題となり、たちまち行列が絶えない人気店となった。その一番の理由は、豊富な品数だ。ハード系ソフト系を合わせたパン生地は常時10種類以上。店内には定番から季節のアイテムまで、カラフルなパンがぎっしりと並ぶ。サンドイッチや惣菜パンの具もすべて手づくりというから驚く。「添加物は使わず、季節感や素材感を大切にしています。毎朝スタッフと一緒にフル回転で働いています」と内藤さんの笑顔が弾ける。

商品が豊富で美味しいのはもちろん、内藤さんの人柄も魅力の一つだろう。店内に内藤さん直筆の言葉が飾ってある。“隣の人もまたその隣の人も、大切にできる。そんな『場』が作りたい”――。内藤さんは言う。

「人は人に支えられて生きています。誰かを批判したり、白か黒かを求めがちな時代ですが、ここは人のつながりや温かさを感じられる場所にしたいです」

「季節感を大切にしたい」という内藤さんの秋のおすすめは「柿とゴルゴンゾーラのトースト」(320円)
店内に並ぶ色とりどりのパンやサンドイッチ。どれにしようか、と選ぶ時間も楽しい
開店と同時に満席になることも多いという2階のカフェには、専用のメニューがある
内藤さんが一目ぼれしたという築約100年の建物は、JR美祢駅からすぐにある

プチラボベーカリー
住所|山口県美祢市大嶺町東分3405-3
営業時間|11:00~16:00
定休日|日曜、月曜、祝日
https://petitlabbakery.com/

山口県の“うまい”を堪能する旅
1|海の幸
2|焼きとり
3|フルーツと野菜
4|語り尽くせない美食 日本酒・パン

text=Tomoko Honma photo=Ryusuke Honda


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