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石川県《HANASAKA/谷口製土所》
九谷焼の可能性を広げる、粘土屋の挑戦。

2024.4.26
石川県《HANASAKA/谷口製土所》<br>九谷焼の可能性を広げる、粘土屋の挑戦。

2024年3月に北陸新幹線が延伸し、注目を集めている石川県小松市。石川の伝統工芸品である色絵陶磁器・九谷焼の新たな可能性を生み出すテーブルウェアブランド「HANASAKA(ハナサカ)」を手掛ける谷口製作所のクラフトマンシップをひも解く。

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花坂陶石の残土を生かしたものづくり

黄色がかった色合いが花坂陶石の特徴。製土の工程の一部は「九谷セラミック・ラボラトリー」で見学できる。

江戸時代に誕生した日本を代表する色絵陶磁器・九谷焼。その特徴は赤・黄・緑・紫・紺青の「九谷五彩」で描かれた色鮮やかな上絵付けだが、「HANASAKA」のシンプルで無地のマットな質感のうつわは、九谷焼に新たな可能性を生み出した。

2013年に誕生したこのテーブルウェアブランドを手掛けるのは、約70年、九谷焼の文化を下支えし続けている谷口製土所だ。九谷焼は、1800年頃に現在の小松市に位置する花坂村から発見された花坂陶石を原料として焼かれている。製土所は、陶石を粉砕して不純物を取り除き、精製、調合などを行い用途に合った粘土をつくる、九谷焼にとって必要不可欠な存在だ。

HANASAKAのブランド名は、花坂陶石に由来する。「九谷焼の魅力だけでなく、いま採石できる鉱山が少なくなってきている環境についても未来に伝えていきたいです」と谷口浩一さん

「九谷焼は、工芸品としても高く評価されています。一方で小松に根づく、生地を焼く素晴らしい技術をもった窯元の職人や粘土屋の存在も知っていただきたいという想いではじめました」と3代目・谷口浩一さん。

花坂陶石の粘土と、残土からつくった釉薬で生み出したシリーズ。プレートだけでなく、カップやボウルなど多彩に展開し、毎日使いたくなるシンプルなデザインが魅力的。Une Plate 9/1万450円

すべての製品は、伝統的な九谷焼を支え続ける窯元の職人が一点ずつ手挽きろくろでつくられている。代表作の「Une」は、九谷の粘土だけでつくられたシリーズ。製土の際に不純物として除かれ、通常は廃棄される残土を生かしたオリジナルの釉薬で仕上げることで優美なベージュが生まれ、九谷焼の既成概念を覆すプロダクトが誕生した。

さらに10数年前、小松で途絶えた上絵付け用の透明釉も開発。「すべての素材が小松産の九谷焼」という、これまでにない価値を生み出すなど次世代に文化を紡ぐ挑戦を続けている。

九谷焼用粘土は、主にろくろ用と鋳込み用に分かれる。

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一子相伝の九谷焼×古典文学でつくる陶窯田村
 
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谷口製土所
住所|石川県小松市若杉町ワ124
Tel|0761-22-5977
見学|可(要相談)
www.taniguchi-seido.com

text: Ryosuke Fujitani photo: Norihito Suzuki illust: Fumiaki Muto
2024年4月号「日本再発見の旅」

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