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石川県《西出酒造》
小松の風土を映す、微生物と造る酒

2024.4.26
石川県《西出酒造》<br>小松の風土を映す、微生物と造る酒

2024年3月に北陸新幹線が延伸し、注目を集めている石川県小松市。「春心」代表銘柄として日本酒を醸す西出酒造(にしでしゅぞう)は、“自然との共生”がテーマに、原料はすべて地元産にこだわる。5代目蔵元杜氏・西出裕恒さんに酒造りの背景をうかがった。

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小松の杉桶・微生物・米で醸す、
究極の地酒

春心 生酛つくり純米酒 蔵付酵母無添加 コシヒカリ仕込み
地元の有機栽培米を使用し、蔵付きの自然酵母で醸し“究極の地酒”を追求した「春心」のフラッグシップ。開栓後に味わいが乗ってくるため、味わいの変化も堪能できる。価格|1980円/ 720㎖ 原材料|コシヒカリ80%(掛米)、五百万石20%(麹米) 精米歩合| 70% アルコール度数|15度

西出酒造は、小松の風土を醸す酒蔵だ。5代目蔵元杜氏・西出裕恒さんが中学生の頃、経営難に陥り蔵は別の経営者に渡った。その際、父親と交わした「代表銘柄の『春心』をいつか一緒に造る」という約束が忘れられず、裕恒さんは大学を中退。「酒造りの神さま」と称される能登杜氏・農口尚彦さんの下で5年間修業を積んだ後、2014年に蔵を買い戻して酒造りを再開させた。

「春心」は南加賀産の杉でつくった甑(こしき)で酒米を蒸し、醪(もろみ)は60年以上前の木槽でじっくり搾るなど、古代製法にこだわる

裕恒さんが醸す「春心」は、自然との共生がテーマだ。原料はすべて地元産にこだわり、酵母を添加しない蔵付き酵母で天然の乳酸菌の働きにゆだねている。

「すべて手仕込みで時間をかけて『お米の出汁』を取って旨みをつくるイメージ。自然にも依存する醸造なので毎年味が変わります。その年だけの春心を楽しんで、この地の情景を思い浮かべていただければ」と裕恒さん。そのクオリティは、県内だけでなく首都圏をはじめ各地で高く評価されている。

木桶はアミノ酸が抽出されやすくなる可能性があるとされる

その一方で、自身の名前を冠した「裕恒HIROHISA」は、思い描くゴールを設定し、さまざまな酒米と酵母を使用して緻密に造る一代限りの新銘柄だ。「伝統と革新の両輪で小松のものづくりの魅力を国内外に発信していきたいです」

蔵には試飲スペースもあり、水・土曜はカフェ営業も

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原点進化で織り上げる!
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西出酒造
住所|石川県小松市下粟津町ロ2
Tel|0761-44-8188
営業時間|ショップ9:00〜16:00(土曜のみ『蔵CAFÉぐるり』営業あり)
定休日|木、日曜
見学|可(要予約)
https://nishidesake.com

text: Ryosuke Fujitani photo: Norihito Suzuki illust: Fumiaki Muto
2024年4月号「日本再発見の旅」

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