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《太宰府天満宮》
建築・デザイン・アートの聖地へ
いまこそ行きたい福岡・太宰府の旅③

2023.9.2
《太宰府天満宮》<br><small>建築・デザイン・アートの聖地へ<br>いまこそ行きたい福岡・太宰府の旅③</small>

各時代の最先端の文化、アートが奉納され、それらを今も大切に守り続けている太宰府天満宮。境内に点在する伝統・建築・アートの数々を紹介していこう。

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①『ひとつの中心のその中心
ローレンス・ウィナー

自分の作品を、言葉を組み合わせてできる「彫刻」ととらえるアメリカ出身の作家は、太宰府天満宮や神道について調べて本作を制作。広い地面の3カ所に配置された言葉を味わいたい
© Lawrence Weiner Courtesy of TARO NASU photo by Kazuaki Koganemaru

歴史や伝統になる日まで
常に時代の先へ、先へ

②絵馬堂
『筑前名所図会』を著した奥村玉蘭、太宰府にゆかりの深い絵師・斎藤秋圃、台湾の現代美術家、マイケル・リンなど江戸期から現在に至るまで、さまざまな願いが込められた数十点もの絵馬が奉納

藤本さん、黒河内さんが同様の想いを抱いたのは、太宰府天満宮が2006年から取り組むアートプログラムをはじめとする数々のアートにまつわる活動によるところが大きい。なぜ天満宮でアートなのか。
 
「『学問の神さま』として有名な菅原道真公は、『文化芸術の神さま』としても崇められておりました。室町時代には『連歌の神さま』、『茶道の神さま』として信仰され、天神さまを祀る神社は全国に広がった歴史があります」と西高辻宮司。天神さまを慕う人々によって、太宰府天満宮には、各時代の最先端の文化、アートが奉納され、それらは御宝物として大切に守られ、いまに至っている。

③『エコー、ナルキッソス(太宰府)』
田島美加

境内の森の奥深くにある瞑想の彫刻。日中は太陽光のエネルギーをどんどんチャージし、太陽が沈んだ後はひっそりと光を放出。自然のエネルギーを取り込み、循環するサステイナブルな作品といえる
© Mika Tajima Courtesy of TARO NASU photo by Yasushi Ichikawa

さらに太宰府天満宮は1873年3月、太宰府博覧会を催し、神社所蔵の宝物など600点以上を出品展示。1871年、京都で開催された日本最初の博覧会からわずか2年後、かつこれまで神社の宝物を一般公開するという概念がほぼなかった中でのこと。いま風にいえば、宝物の価値・魅力を多くの人で“シェアする”といったところだろうか。好評を得た博覧会は3年連続で催され、その流れの中で、地域とともに常設の博物館設置を構想。1893年には「鎮西博物館設置之件」として福岡県に上申され、設置の許可も出されていたという。ただ、日清戦争の勃発によりこの計画は凍結・頓挫。これが130年前の話。つまり2005年に太宰府の地に開館した九州国立博物館は、西高辻家、太宰府の念願だったというわけだ。
 
そんな歴史を知って感じるのは、太宰府天満宮がアートや文化とは不可分の関係にあるということ。右大臣にまで上り詰めた菅原道真公は当時、世界の情勢をいち早く察知し、さまざまな情報に触れていたと推察できる。つまり道真公は、当時の日本において最先端の人物。そう考えると博覧会を催したり、国立博物館設立に動いたり、常に“先へ先へ”と実行に移す太宰府天満宮のマインドも納得だ。

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④『本当にキラキラするけれど何の意味もないもの』
イアン・ガンダー

磁石に吸い寄せられたような金属片が集まった球体で、その存在感は圧倒的。中心にある磁力は目に見えないが、大切なものであることは感じる。それはかたちのない神に祈る神道に通じるものかもしれない
© Ryan Gander Courtesy of TARO NASU photo by Hiroshi Mizusaki
⑤宝物殿
1928年に開館後、福岡県第1号の博物館登録を受けた。美術品や古文書などを収蔵・展示。現代アートの展示も力を入れており、「三田真一展 in-Spire – Breath of life – 呼吸」が開催中(〜8月27日)
⑥案内所
福岡の老舗シューズメーカーと文具メーカーがコラボした御朱印帳ケースなど土産品も販売。室内に流れるサウンドはサカナクションの山口一郎さん主宰のNFが制作したもの
⑦『この空気のように』
ライアン・ガンダー

太宰府天満宮幼稚園児の“大切なもの”75個を柱の下に埋蔵。物体を見ることはできないが“もの”については自由に想像できる。「一番大切なのは、想像力を喚起させることそのもの」と作者
© Ryan Gander Courtesy of TARO NASU photo by Hiroshi Mizusaki
⑧『すべてわかった VI』
ライアン・ガンダー

彫刻『考える人』が、岩がすり減るほど考えに考えて、すべてわかって立ち去ったという物語が込められた作品。近くで見ると岩の上部が摩耗していることがわかる
© Ryan Gander Courtesy of TARO NASU photo by Hiroshi Mizusaki
太宰府天満宮 境内マップ=A&W DESIGN

◎御祭神
菅原道真公
 
◎主なご利益
学問、文化芸術、厄除けなど

太宰府天満宮
住所|福岡県太宰府市宰府4-7-1
Tel|092-922-8225
参拝時間|6:30〜19:00(春分の日〜秋分の日の前日は6:00〜、6〜8月は〜19:30、12〜3月は〜18:30) 
料金|境内自由
www.dazaifutenmangu.or.jp

 

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text: Tsutomu Isayama photo: Hiroshi Mizusaki 取材協力=九州観光機構 写真提供:太宰府天満宮Discover Japan 2023年8月号「夏の聖地めぐり。」

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