《太宰府天満宮》
建築・デザイン・アートの聖地へ
いまこそ行きたい福岡・太宰府の旅③
各時代の最先端の文化、アートが奉納され、それらを今も大切に守り続けている太宰府天満宮。境内に点在する伝統・建築・アートの数々を紹介していこう。
歴史や伝統になる日まで
常に時代の先へ、先へ
藤本さん、黒河内さんが同様の想いを抱いたのは、太宰府天満宮が2006年から取り組むアートプログラムをはじめとする数々のアートにまつわる活動によるところが大きい。なぜ天満宮でアートなのか。
「『学問の神さま』として有名な菅原道真公は、『文化芸術の神さま』としても崇められておりました。室町時代には『連歌の神さま』、『茶道の神さま』として信仰され、天神さまを祀る神社は全国に広がった歴史があります」と西高辻宮司。天神さまを慕う人々によって、太宰府天満宮には、各時代の最先端の文化、アートが奉納され、それらは御宝物として大切に守られ、いまに至っている。
さらに太宰府天満宮は1873年3月、太宰府博覧会を催し、神社所蔵の宝物など600点以上を出品展示。1871年、京都で開催された日本最初の博覧会からわずか2年後、かつこれまで神社の宝物を一般公開するという概念がほぼなかった中でのこと。いま風にいえば、宝物の価値・魅力を多くの人で“シェアする”といったところだろうか。好評を得た博覧会は3年連続で催され、その流れの中で、地域とともに常設の博物館設置を構想。1893年には「鎮西博物館設置之件」として福岡県に上申され、設置の許可も出されていたという。ただ、日清戦争の勃発によりこの計画は凍結・頓挫。これが130年前の話。つまり2005年に太宰府の地に開館した九州国立博物館は、西高辻家、太宰府の念願だったというわけだ。
そんな歴史を知って感じるのは、太宰府天満宮がアートや文化とは不可分の関係にあるということ。右大臣にまで上り詰めた菅原道真公は当時、世界の情勢をいち早く察知し、さまざまな情報に触れていたと推察できる。つまり道真公は、当時の日本において最先端の人物。そう考えると博覧会を催したり、国立博物館設立に動いたり、常に“先へ先へ”と実行に移す太宰府天満宮のマインドも納得だ。
読了ライン
◎御祭神
菅原道真公
◎主なご利益
学問、文化芸術、厄除けなど
太宰府天満宮
住所|福岡県太宰府市宰府4-7-1
Tel|092-922-8225
参拝時間|6:30〜19:00(春分の日〜秋分の日の前日は6:00〜、6〜8月は〜19:30、12〜3月は〜18:30)
料金|境内自由
www.dazaifutenmangu.or.jp
1 2 3 4 5
text: Tsutomu Isayama photo: Hiroshi Mizusaki 取材協力=九州観光機構 写真提供:太宰府天満宮Discover Japan 2023年8月号「夏の聖地めぐり。」