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《宝満宮竈門神社》
建築・デザイン・アートの聖地へ
いまこそ行きたい福岡・太宰府の旅④

2023.9.3
《宝満宮竈門神社》<br><small>建築・デザイン・アートの聖地へ<br>いまこそ行きたい福岡・太宰府の旅④</small>

太宰府天満宮から車で10分ほどの場所にある「宝満宮竈門神社(ほうまんぐうかまどじんじゃ)」。”100年後のスタンダード”をコンセプトに、授与所の概念を一新する圧倒的なデザイン性で注目を集める宝満宮竈門神社の歴史と革新に迫る。

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概念をいい意味で壊し生まれた、デザインの聖地

縁結び、方除け、厄除けの神さまとして信仰されている宝満宮竈門神社。創建は673年。かつては修験者による信仰が盛んだったという

太宰府天満宮と同じく太宰府市に鎮座する宝満宮竈門神社。1983年からは西高辻信宏さんの父親である、信良さんが宮司を務めている。
 
竈門神社といえばTVアニメの影響で3、4年前に話題のスポットとなったが、そのずっと以前に神社業界はもとより、多くの人々から注目を集めた。それが2012年に竣工したお札お守り授与所だ。「100年後のスタンダード」をコンセプトに新設され、授与所の概念を一新する圧倒的なデザイン性は、多くのメディアに取り上げられた。それを機に神社の認知は広まり、参拝者の数も急増。ただ、権禰宜・馬場宣行さんは「当時は全国的にも類を見ないことでしたから、神職に就く我々は不安が大きかったのも事実。伝統を重んじる神社が斬新なことをしていいのか……、そんな心配もありました。ですが、西高辻宮司は『これからの神社のスタンダードはこうあるべき』と即決でした」と当時を振り返る。それは、参拝前よりも元気に、少しでも晴れやかな気持ちでお帰りいただきたいという神社の想いもあったからだろう。

Wonderwall®が「竈を取り囲む土間」をイメージしてデザインしたお札お守り授与所。さまざまな人の願いを表現した、短冊状のピンクの大理石と御神紋の桜が空間を彩る
陶芸家でありアーティストの鹿児島睦さんがイラストを描いた、つがいの干支絵馬。縁結びにちなみ、二頭・二匹の動物が描かれている

お札お守り授与所のインテリアデザインを担当したのは、世界各国で多彩なプロジェクトを手掛けるWonderwallⓇの片山正通さん。伝統や竈門神社の歴史をリスペクトしつつ、現代において必要な機能を付加しながらデザインを行っている。完成当時、自動ドアで入るショップのような空間や淡いピンク色を使うことは授与所としては珍しかった。
 
展望テラスにあるベンチとチェアはプロダクトデザイナー、ジャスパー・モリソンさん、絵馬は、福岡を拠点とする陶芸家でアーティストの鹿児島睦さんが手掛けるなど、建物以外にもアートやデザインの要素がちりばめられた竈門神社。神社自体の歴史は古く、1350年前にさかのぼる。大宰府政庁と密接な関係にあり、上宮が鎮座する竈門山(宝満山)では大宰府や国家鎮護のための祭祀が執り行われていたそうだ。授与所の刷新はそんな歴史ある古社の新たな挑戦。それがあったことも、今回の太宰府天満宮 仮殿の建設にあたって、少なからず後押し、きっかけになっていると感じずにはいられない。

読了ライン

コロナ禍を受けて、Wonderwall®がデザインした手水舎。柄杓を使わず手を浄められるステンレスの“枝”が象徴的
社務所の展望テラスに設置されたベンチとスツールはジャスパー・モリソンさん作。庵治石製で、くるくると回るのが斬新

◎御祭神
玉依姫命(たまよりひめのみこと)
 
◎主なご利益
縁結び、方除け、厄除けなど

宝満宮竈門神社
住所|福岡県太宰府市内山883
Tel|092-922-4106
参拝時間|8:30〜18:00(授与所)
料金|境内自由
https://kamadojinja.or.jp

 

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text: Tsutomu Isayama photo: Hiroshi Mizusaki 取材協力=九州観光機構
Discover Japan 2023年8月号「夏の聖地めぐり。」

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