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《太宰府天満宮》
建築・デザイン・アートの聖地へ
いまこそ行きたい福岡・太宰府の旅①

2023.9.2
《太宰府天満宮》<br><small>建築・デザイン・アートの聖地へ<br>いまこそ行きたい福岡・太宰府の旅①</small>
写真提供:太宰府天満宮

現在、2027年に執り行われる菅原道真公1125年式年大祭という大きな節目に向けて大改修が行われている太宰府天満宮の本殿。文化芸術の神さま、菅原道真公の御神徳を未来へ継承したいという太宰府天満宮の想いから、仮殿の設計、御帳(みとばり)などのデザインを、当代をリードするクリエイターたちに依頼した。仮殿に参拝できるいまこそ訪れるべき聖地。3年間だけの天満宮に出合う旅へ。

3年しか見られない、未来に紡ぐ建築、意匠

本殿の大改修は2026年頃に完了する予定

太宰府天満宮の本殿が124年ぶりに大改修されるにあたり、およそ3年間限定で参拝者を迎える仮殿が2023年5月に完成した。本殿に対すれば、“仮”ではあるのだが、御祭神・菅原道真公の御神霊を安置する場という役割は本殿と同じ。そして建築、デザインという観点では間違いなく“仮物”ではない、“本物”だ。
 
設計を手掛けたのは大阪・関西万博の会場デザインプロデューサーも務める、建築家・藤本壮介さん。神域との境界線の役割をもつ御帳、可動式の間仕切りの几帳はパリコレクション出展など世界的なファッションブランドとして知られる「Mame Kurogouchi」のデザイナー・黒河内真衣子さん作。まさに2023年のいま、建築・デザインの先端の才能が結集した仮殿というわけだ。

楼門をくぐり遠目に見たときに、木々の緑がより印象的に見えるようにという狙いもあるそう
仮殿の床や柱、天井は黒色で統一されているが、「外光が当たることでグラデーションのように見えるのもポイント」と藤本壮介さん。御帳も中心から外に向かって色が変化する

3年間のみ参拝者を迎える仮殿だが、そこに込めたこだわりは強い。宮司・西高辻信宏さんはその理由をこう話す。「御本殿が改修中と知ってなお、参拝いただける方々への、感謝の想いも込めています。御本殿を直接見ることがかなわなくても、参拝の思い出はよいものであってほしいですし、お参りをされた後には元気になってお帰りいただきたい。また、御本殿は御祭神・菅原道真公の御墓所の上に建てられていることもあり、当社は道真公の住まいという考え方。仮殿は3年とはいえ御神霊を安置する場所であります。令和の時代において、できる限り魅力的な仮殿をつくりたいと考えました」。
 
菅原道真公1125年式年大祭という大きな節目を迎える2027年。そこに向けて大改修が進む本殿の意匠や太宰府天満宮が歩んできた歴史に触れ、まるで浮かぶ森のようなデザインを発想した藤本さん。最先端の織機を用いて、一部には植物から抽出した染料による古代染色を施すなど“昔といまを融合”させた黒河内さん。二人は仮殿のプロジェクトに取り組むにあたり何度も太宰府天満宮を訪れ、くしくも「1100年以上の歴史ある神社。その中の約3年という短い時間とはいえ、歴史の一部を担うもの」という同様の考えを抱いたそうだ。その言葉が意味することを探っていく。

読了ライン

本殿(写真左)の整然と並ぶ垂木から着想を得て、仮殿(写真右)の天井は板材をルーバー状に。屋根は木々を植栽することから土の深さが必要ということもあり、天井部は湾曲したようなかたちで機能性ももたせた
前に張り出した深い軒も、本殿の大屋根からインスピレーションを得たデザイン。楼門をくぐり遠目に見たときに、木々の緑がより印象的に見えるようにという狙いもあるそう
図面提供|Sou Fujimoto Architects

 

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text: Tsutomu Isayama photo: Hiroshi Mizusaki 取材協力=九州観光機構
Discover Japan 2023年8月号「夏の聖地めぐり。」

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