芽室、十勝をコーンで世界一に!
ノアソビSDGs/北海道芽室町
「野遊び」とは、豊かな自然と四季を身近な存在として親しんできた日本独自の文化であり、心の安らぎや充足感、ストレスの解消などを自然環境の中で得る営み。「野遊び」を中心に地方創生を目指すプロジェクトが「ノアソビSDGs」です。その活動に参画する4つの自治体のひとつが北海道芽室町。今回は芽室町ならではの、“野遊び”な地方活性につながる取り組みの詳細をお届けします。
誰のための「まちづくり」?
なぜいま地域のブランド化が必要か。
北海道十勝平野の中西部に位置する芽室町(めむろちょう)は、肥沃な大地と日本有数の晴天率という気候条件に恵まれ、農業を基幹産業としている地域だ。
「スイートコーンの生産量日本一」という強力なキーワードに、行政と民間の垣根を超えたローカルヒーローたちが、地域の強みと「ノアソビSDGs」の理念を掛け合わせながら、地域独自のツーリズムや商品開発、イベントの企画運営に取り組んでいる。
阿部さんは2012(平成24)年4月に芽室町役場へ入庁。いまでは官民連携のまちづくりに日々励んでおり、最近では芽室町のシンボルであるコーンを軸としたまちづくりに邁進している。
「芽室町は昔からスイートコーン生産量日本一のまちということもあり、15年ほど前からコーンを題材にした商品やイベントが企画されていました。2020年に、まちづくりの一環としてビジョンマップを策定する事業が始まり、町民や職員が集まって地域の魅力や資源について改めて意見を交わす機会がありました。
そのワークショップで参加者が最も聞かれた言葉が「スイートコーン」だったんですね。今までも力を入れてPRしてこなかったわけではないですが、地域全体で腰を据えて”スイートコーン”を軸に地域ブランディングしていくタイミングだなと強く感じました」
地域をブランド化していく上で重要になるのが、商品やサービス開発、地域で連携した組織づくりだ。幸いにも、芽室町にはすでに官民の架け橋となるキーマンがいたため、人材に関しての苦労はなかったという。
「とにかく賑やかなんです。やりたいことを形にすることのできる人たちが、この芽室には多くいる上に相乗効果がすごい。誰かが「これやろう!」と発言したら、そこからどんどん対話を重ねてアイデアが広がっていくんです。行政としては、地域の方がやりたいことに挑戦できる環境を整え、皆さんをしっかりとサポートすることが重要ですが、その役割さえできれば、あとは皆さんと一緒にゴールまで走っていくだけです。とても頼もしい存在ですよ」
とはいえ、まだまだ課題も多い。まちには余暇を楽しめるようなエンターテイメントが少ないため、娯楽を求めて地域の外に目を向けてしまう若者も少なくないという。
「誰のためのまちや地域づくりなのか。なんのために行政があるのか。当たり前ですが、そこに暮らす人たちがより暮らしやすくするためなんです。すごく単純なことですが、町が明るくて楽しめるコンテンツがあると、人も自然と集まって交流が生まれますよね。そういう意味でこれからも精力的にエンタメが楽しめるような場づくりもしていきたいと思っています」
おおらかで寛大な十勝平野と
そこに暮らす人たち
及川さんが芽室町を選んだ理由は「これからの生き方を考えたときに精神的な豊かさを大事にしたい」からだったという。十勝平野のおおらかな地形に憧れを持っており、自分の好きな場所でチャレンジしてみたいと思ったからなのだそう。
想像していた暮らしとギャップがなかったかたずねると「まったくありません。ここに暮らす人たちは、まさに十勝平野のごとくおおらかで穏やかな人たちばかりでした。一見穏やかだけど話すと熱のある人たちばかりなんです。このまちには義務感でまちづくりに関わっている人はいません。それがとても心地よいですね」
そんな及川さんが、ここ芽室町にたどり着くまでには、長いいきさつがある。
学生時代に及川さんはポルトガルへ留学。バックパッカーとして20カ国(主にヨーロッパ)を巡り、「旅=人生を豊かにするもの」と実感したという。その後、新卒で自動車メーカーでの海外営業を経て、一人旅をした北海道に惚れ込み2016年道南の北斗市に移住。観光振興に携わった。
その後「十勝に住みたい」という思いを叶えるため、 2018年9月に芽室町地域おこし協力隊に着任。芽室町を拠点とし、サイクルツーリズムの推進や探究学習支援、ゲストハウス運営支援などに携わる。芽室町や十勝エリアにおける関係人口の創出と、交流人口の拡大を通して、持続可能な地域づくりに寄与することを目指している。
最近では、夏場がメインのサイクルツーリズムを冬の季節でもできないか試行錯誤を重ね、新たなコンテンツとして雪道に強いファットバイクを導入したそうだ。
「芽室の雄大な自然は四季折々でいつも素晴らしい景色を見せてくれます。バイクで散走すればするほど、この地域の可能性をどんどん感じます」
自分たちがやりたいことを実現できる場所
北海道旭川市出身の川上さんは二児の父。20歳で上京し、東京で10年間エンジニアをしていたが、子どもが授かったタイミングでパートナーの実家のある芽室へ2016年に移住。仕事も実家を継ぎ飲食店を経営することとなった。移住した当初、まち自体に興味もなければ特に期待もしていなかったと話す。
「移住したての頃は子育てと仕事に邁進していたのですが、これじゃいかん!と思って、まず初めにおそるおそる移住者が集まるコミュニティに足を踏み入れてみました。そこでモチベーションの高いメンバーにたくさん出会って芽室面白いじゃん!って感動して。それから、徐々にいろんなイベントにも顔を出したり、自分たちでもイベントを企画するようになりました」
当初、川上さんは移住者であることに引け目を感じていたが、一歩足を踏み出して周囲を見渡すと、町での暮らしを楽しんでいる仲間の存在に気がつき、少しづつ芽室町の良さを体感するようになったという。
「芽室は適度に小さいんですよね。コンパクトだから人の顔が見えやすい。その人の良さもすごく目に見えて、この人と何か一緒にやったら面白そう!ってなりやすいんです。さらに行政も一体になって協力してくれるので、芽室町はやりたいことを実現できる場所だなって思っています」
2022年からは夏のシーズンに親子連れを中心に買い物や飲食を楽しめる「ちいさな森のマルシェ」を毎週末開催したり、芽室町の食・文化資源・自然を発信するイベント「かちフェス」を開催するなど、仲間と一緒にまちの交流や活気を生み出す仕掛けをつくった。
現在は、芽室町商工会青年部などが中心となって市街地のにぎわい創出を目指す「Memuro UniteProject(メムロユナイトプロジェクト)の実行委員長も務め、空き店舗再生プロジェクトにも力を入れている。
「移住してきたばかりのときは家族しか知り合いもおらず孤独でしたが、仲間のおかげでいろんなことに挑戦する機会と、やりがいをもらいました。また、コロナ禍では町の多くの方々から支援をいただき、それが挑戦への活力ともなりました。そういう意味で、この町に助けてもらったと思っています。
だから恩返しの気持ちが強いのかな。チームに貢献できたよろこびや楽しさは忘れられないし、これからも仲間と一緒に仕事も暮らしも楽しんでいきたい。芽室の子どもたちにもそれを伝えていけたら最高です」
スイートコーンで地域を盛り上げたい
学生の頃は「生まれ育った芽室は個性も何もないし、つまらない」と思っており、大学卒業後も戻るつもりはなかったという高野さん。『自分と同じように考える子供たちを少しでも減らしたい』と思い芽室へUターンした。
「いざ戻ってみると、農業という職業柄もあり、外との関わりがとても少ないことに気がつきました。学生時代に感じていた「つまらない」というイメージは払拭できていませんでした。嫌ではないが平々凡々だなという感じ。そんなとき、町役場でサイクルツーリズムに関する事業の募集をしていると知り、ニュージーランドでの経験を活かせるのではと思い参加しました。このことがきっかけで、少しずつまちづくりにも関わるようになりました」
「自分ができることはなんでもチャレンジしたいと思っています。本業である農業でも色々仕掛けています。スイートコーンの栽培は夏場がメイン。冬のコアになる作物を育てたいと考え、最近ではポップコーン用のとうもろこしの栽培にも力を入れています」
バター・てんさい糖・牛乳など原材料も全て地場産にこだわったポップコーンを販売する専門ショップもオープンしており、評判も上々だ。
スイートコーンを軸とした地域ブランディングがますます注目される芽室町。官民一体となって地域の魅力を発信していく上で、高野さんがその中心を担う一人となることは間違いないだろう。
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