FOOD

神田まつや/蕎麦
《粋に呑みたい江戸の酒》

2023.2.6
神田まつや/蕎麦<br><small>《粋に呑みたい江戸の酒》</small>

昔もいまも、酒は浮世の憂いを払い、心をゆるめるためにもいいものだ。そして酒は粋に呑みたいもの。東京・下町には、江戸の流れをくむ呑み方がある。酒場に通うマッキー牧元さん、江戸料理家のうすいはなこさんが愛する粋な店とは。

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老舗の蕎麦屋で一献

「いろいろな蕎麦屋に行きますが、客が昼からあれだけ酒を飲んでいるところはそうないですよ」(マッキー)。「蕎麦屋といえば、どうしようもなく『神田まつや』が好き。いつ行っても粋な常連客がいるんです。かまぼこを前に酒を美味しそうに呑んで、締めに季節の蕎麦を食べ、ごちそうさまと言って帰る。私もああなりたい」(うすい)。
 
頼んだ料理が出されるタイミングも完璧だ。マッキーさんは酒と蕎麦前を楽しんだ後に、冷たい蕎麦と温かい蕎麦を頼むのだが、せいろを食べ終わりそうな頃合いで温かい蕎麦が運ばれてくる。常に満席の店内で、テーブルの間を滑るように機敏に動く店の女性たちの姿が気持ちいいこと。
 
マッキーさんいわく、「蕎麦前の基本は焼きのりと板わさ。余計なものがないのが最高です。焼き海苔なんて、海苔とワサビと醤油しか出てこない」。マッキーさん流の食べ方は、海苔の裏にワサビを少しのせ、箸の先で醤油をチョンチョンと付けて、半分に折って食べるというもの。焼き海苔と板わさは同時に頼んではいけないとも。
 
神田まつやの創業は1884(明治17)年。つけ汁は「飲んじゃ辛いが食っちゃ旨い」がベースだ。まさに「つけ汁は蕎麦猪口の底が見えるくらいに注ぎます。蕎麦を真ん中から上げてほぐし、汁にちょっとくぐらせて……」がマッキーさん好み。「私のつけ汁は祖父の頃より濃いでしょうか。でもお客さんにはわからない程度です」と6代目の小高孝之さん。出汁とかえし、どちらも気候や素材の状態により日々異なる中、いかに神田まつやの味を保つかは長年の経験による。老舗という看板にあぐらをかかない店の姿勢が、今日も多くのお客を呼んでいる。

「海苔は醤油だけでもいいけど、
ワサビを付けることで
酒が呑みたくなるんですね」
マッキー牧元

酒を頼むとお通しで出される蕎麦味噌。甘めの味噌と香ばしい蕎麦の実が一体となり、ひと舐めすると酒に手が伸びる
焼のり 660円
江戸料理に海苔が不可欠とはいえ、海苔が単体で酒の肴になるのは蕎麦屋ぐらいなもの。いまは有明の上等なものを使っている
わさびかまぼこ 825円
蕎麦前の定番。厚めの小田原の上等なかまぼこがふた切れに、下ろしたての本ワサビ。この飾り気のなさも江戸っ子気質に合う
焼鳥 990円
蕎麦つゆのかえしを使ったすっきりとしたたれで、大ぶりの鶏もも肉を香ばしく焼いた食べ応えがある一品。からしを添えて
ざるそば 1045円
蕎麦は、茨城の常陸秋そばを中心に、北海道、長野などその年や季節で最良のものを使用。やや辛めの出汁が利いたつゆで
もりそば 825円
蕎麦と汁だけとシンプルなだけに、酒を飲んだ後は格別な味わい。海苔を散らした「花巻」や「玉子とじ」もおすすめ

酒お品書き
【ビール】
瓶(アサヒ、ヱビス) 小瓶770円〜
 
【日本酒】
菊正宗 特撰 1合880円
 
【ほか】
ウイスキー ミニ825円〜

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神田まつや
住所|東京都千代田区神田須田町1-13
Tel|03-3251-1556 
営業時間|11:00〜20:30(土曜、祝日は〜19:30) 
定休日|日曜
www.kanda-matsuya.jp

 

桜なべ中江/桜なべ
 
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text: Yukie Masumoto photo: Kenji Itano
Discover Japan 2023年1月号「酒と肴のほろ酔い旅へ」

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