【漫画】第77代「後白河天皇」
|20人の天皇で読み解く日本史
126代目の天皇が誕生した2019年。今も昔も日本の歴史は天皇がつくってきたといっても過言ではありません。天皇に焦点を当ると、これまでとは違う日本の姿が見えてくるはず。今回は、後の武士の時代を築くきっかけとなった人物、後白河天皇を紹介します。
第77代 後白河天皇(ごしらかわてんのう)
生没年|1127–1192年
在位|1155(29歳)–1158(32歳)年
父 |鳥羽天皇
母|藤原彰子(ふじわらのしょうし)
妻|藤原忻子(ふじわらのきんし)、平滋子(たいらのしげこ)
保元の乱・平治の乱で
策士ぶりを見せつけた
鎌倉幕府成立の動乱期を生きぬき、復権を果たした後白河天皇。中継ぎの天皇として擁立されたにもかかわらず、ほどなく保元の乱が勃発。父・鳥羽天皇の崩御の際に面会すら許されなかった75代崇徳天皇(後白河の兄)が、「自分こそ白河上皇の皇統を継ぐ後継者だ」という意思表示のため、源為朝、平忠正らの武士を使って、白河殿を占拠。一方、後白河の御所には源義朝、平清盛らの武士が集まった。保元の乱といわれるこの戦いは数時間で終わり、崇徳は敗北。讃岐国に配流された。
その後、後白河は二条天皇に譲位し、院政をはじめる。その頃、保元の乱で白河殿攻撃を主張し、実務能力に優れた信西が後白河天皇の側近となる。さらに、藤原が異例の昇進を続け、急速に台頭。信西はこれを警戒して信頼の昇進を阻んだ。この信西を排除するため、信頼と義朝が後白河上皇の住む三条烏丸殿を包囲。信西はこれを察知して逃亡するが、近江国で自害した。三条烏丸殿は出火したため、後白河天皇は一本御書所に移る。これが、平治の乱のはじまりである。
義朝は、信西を討った功績で清盛に並ぶ位に昇格した。このことは、後白河が信西の排除を支持したことを示していると考えられる。しかし京都を不在にしていた清盛が屋敷に戻ると、義朝と清盛は対決の道を選ぶ。義朝は清盛を攻めるも敗北し、討ち取られた。
武士たちを巧みに利用して復権を果たした後白河だが、この平治の乱(1156年)によって力は低下。治承3年の政変で清盛に捕らえられ、院政も止められる。
しかし諦めなかった後白河は打倒平氏を掲げ、清盛によって福原(兵庫県)に移された都を京都へ戻す。清盛の死後は平家討伐の命令文書も発令。一方、頼朝の討伐を弟の義経に命じるなど、源氏と平氏を渡り歩き、最後まで策士ぶりを発揮した。
こうして、天皇家や摂関家の内部抗争が武士の力で解決されたことにより、期せずして武士が台頭する時代が幕を開ける。
Point1
もともと後白河上皇の御所につくられた
三十三間堂
千体千手観音立像が並ぶ圧巻のお堂で知られる「三十三間堂」。後白河天皇の命を受けて平清盛が建立したもの。その後焼失し、後嵯峨上皇によって再建。秀吉の時代には、後白河や清盛の栄華にあやかって、奈良大仏を模した大仏殿方広寺が造営された。ちなみに千手観音立像は、後白河天皇陵に向かって立つ。
蓮華王院 三十三間堂
住所|京都府京都市東山区三十三間堂廻り町657
Tel|075-561-0467
Point2
天皇の後継者争いに平氏と源氏を利用
『平治物語絵巻』には、保元の乱(1156年)に勝利した源義朝と平清盛との勢力争いに、藤原信頼と信西(藤原通憲)との抗争がからんだ平治の乱が叙述されている。「三条殿夜討巻」には、家臣らによる後白河上皇襲撃事件が描かれる。上皇御所の三条殿を夜討ちし、後白河を車で連れ去る様子がありありと伝わる。
〈天皇ゆかりの地〉
院政を主導した後白河上皇の本拠地
「法往寺」
1158(保元3)年に皇位を譲った後白河天皇は、法住寺の地を院の御所と定め、1161(応保元)年に新造御所に移る。現在の三十三間堂も含め、このあたりは法住寺殿と呼ばれていた。写真の竜宮門は、以前は後白河天皇陵への正門として使われており、石碑には後白河が好んだ和歌の一種、今様の一節が刻まれる。
法往寺
住所|京都府京都市東山区三十三間堂廻り町655
Tel|075-561-4137
http://hojyuji.jp
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supervision: Hirofumi Yamamoto text: Akiko Yamamoto, Mimi Murota illustration: Minoru Tanibata
Discover Japan2019年6月号「天皇と元号から日本再入門」