渋谷パルコ「酒を愉しむうつわ」
|風土を愉しむうつわと酒のペアリング
うつわ祥見 KAMAKURA × 油長酒造
つややかで美しい片口から酒が注がれる心豊かな瞬間。東京・渋谷PARCO内のDiscover Japan Lab.で2026年2月14日(土)~2月22日(日)にかけて開催される酒器展では、奈良・御所の蔵元・油長酒造が醸す日本酒と、3名の作家による酒器が並ぶ。
Discover Japan公式オンラインショップでは、本展の一部作品を2026年2月17日(火) 20時より順次販売予定です。(店頭の販売状況により日程・内容が変更になる場合があります)
風土が育てた酒器で、風土を醸す酒を飲む

2026年2月に開催する「うつわ祥見KAMAKURA」による酒器展。今回はうつわの販売に加え、300年以上の歴史をもつ奈良の酒造「油長酒造」とのペアリングも提案する。ここに参加する作家の一人が、奈良県宇陀市で作陶する尾形アツシさんだ。
大阪と三重を結ぶ近鉄大阪線榛原駅から10分ほど車を走らせると、尾形さんの工房に到着する。賑やかな街中でも、手つかずの自然がある山奥でもない、ほどよい山中。尾形さんがここで静かにつくるのは、人の生活に寄り添う「暮らしの道具」だ。

1960年、東京都生まれ。会社員を辞めて愛知県で作陶を学び、1998年に独立。2007年に奈良県宇陀市に工房を構える。
1960年に東京で生まれた尾形さんは、都内でカルチャー雑誌の編集長をしていたが、クリエイターたちと接する中で「自分も『一人で完結するものづくり』がしたい」と考えるように。そうして35歳で選んだのが、作陶の道だ。1996年に愛知県立窯業高等技術専門校を卒業し、陶器工房を経て1998年に独立。自身の工房を構えようと全国各地で約2年も土地探しをしたが、理想の広さや地形には出合えなかった。その頃、親交のあった宇陀市のギャラリーのオーナーから紹介されたのが、この土地だった。2007年に移住して作陶をはじめ、2009年に敷地内に登り窯を築窯。尾形さんがつくりたかった、薪を使う薪窯だ。独立から10年以上かけて、ついに理想の創作環境が整った。
「うつわ祥見 KAMAKURA」代表・祥見知生さんが尾形さんに出会ったのは、同店のオープンから2年経った2004年。以来20年以上も彼の作品を見続けている。初期の尾形さんのうつわは、線や文字を描く作品が多かった。しかし「素材だけで伝わるものをつくりたい」と、土の持ち味がいきいきと表れる未精製の原土を使用し、白化粧を施す粉引などに力を入れ、世界観をより磨いていった。

「尾形さんは土が本来もつ野良着のようなたくましさや美しさに気づかれ、土の中の有機物や土の可能性をどう生かしていくかをテーマにしていらっしゃいます。土に向き合うその姿勢を信頼しています」と祥見さんは話す。
尾形さんは作品によって、炎の調節が可能なガス窯を使うこともある。しかし、炎を細かく調節できない薪窯を用いると、尾形さんの想いと薪の炎という「自然の要素」が掛け合わさった作品が生まれてくる。薪窯で焼いたうつわは、土や化粧の表情が重なり、そしてかけた手間や時間が奥行きとなっていくことで、存在感を放つ。

1981年、奈良県御所市生まれ。関西大学を卒業後、阪急百貨店の販売営業職を経て、2008年に家業である油長酒造に入社
土や薪などが生み出す尾形さんの作品に、今回、奈良産の米で醸された奈良の日本酒が注がれた。尾形さんの工房を訪ねた「油長酒造」の13代目蔵元・山本長兵衛さんは、作品の一つひとつを丹念に鑑賞し、尾形さんと語らいながらペアリングを決めていった。
尾形さんは「片口などは、酒が流れる様を見ることができておもしろいです。酒器は実際に注ぐと、色みがワントーン落ちて見えるんですよ。そういう変化を楽しんでいただけたらと思います」と話す。

日本酒の歴史や酒器の特徴、奈良の話などに花を咲かせた二人。「こう合わせたらいいのでは」と意見が一致し、スムーズにペアリングが決定
山本さんは酒器の口径(口の広さ)やかたちによって、味わいも変わると語る。「すぼまったかたちだと舌の中央に酒がポンと入るので、味がコンパクトに感じられます。味がしっかりした酒を飲むときにおすすめです。一方で、口径が広めのものだとはじめから舌全体のセンサーに満遍なく酒が乗るので味が多く感じられます。結構違うんですよ」と山本さん。
酒器展では尾形さんのほか、ガラス作家の巳亦敬一さん、木工作家の佐藤創太さんの作品も並ぶ。祥見さんいわく、酒器とは「ともに時を刻み、うつわの中でも特にプライベートな関係を保つもの」だという。皿とは異なり、唇をつけて使うため、人との距離も近い。この冬、酒器と日本酒のペアリングにぜひ出合ってほしい。
奈良の地で生まれたうつわと酒。
酒がうつわを育て、うつわが酒を引き立てる
水端1568 2024年醸造 × 片口・小盃

1.ヒビ手 立ち片口
細かなヒビの表情は自然の景観を思わせる美しさ。ところどころに現れる鉄点が、表情豊かなエッセンスを加えている。
価格|8800円 サイズ|W90×D70×H80㎜ 重量|225g
2.ヒビ手 小盃(茶盃)
持ちやすいぐい呑み。小さくて薄手で軽い仕上がり。中国茶や日本茶などの杯や湯冷ましとして使うこともできる。
価格|4400円 サイズ|Φ60×H38㎜ 重量|50g
3.水端1568 2024年醸造
奈良市にある興福寺で書かれた『多聞院日記』の1568年の記述を参考に醸造。大甕による3段仕込みで冬季に醸造されている。
価格|7700円/500㎖ 原材料|秋津穂 精米歩合|非公開 アルコール度数|16度
風の森 露葉風807×片口・ぐい呑み

1.陶石粉引 ダ円片口
無骨で力強い表情でありながら、土や白化粧、陶石釉の重なりにより、柔らかな存在感も放っている。注ぎやすい楕円形
価格|8800円 サイズ|W130×D135×H55㎜ 重量|245g
2.薪粉引 ぐい呑み
薪窯で焼成されたぐい呑み。薪による炎を感じさせる黄色や茶色の表情を楽しみながら、酒を味わいたい
価格|8800円 サイズ|Φ88×H40㎜ 重量|100g
3.風の森 露葉風807
微発泡感がありフルーティな甘みやみずみずしい酸味と旨みが混ざり合った味わい。奈良県御杖村産の酒米・露葉風を使用
価格|1650円/720㎖ 原材料|露葉風 精米歩合|80% アルコール度数|16度
風の森 ALPHA2×小カップ

1.黒地刷毛目 小カップ
黒土をベースに、一気に施された刷毛目の勢いが見どころのひとつ。手に馴染む使い心地のいいカップ
価格|5500円 サイズ|Φ80×H75㎜ 重量|160g
2.風の森 ALPHA2
米の個性を磨きによってシンプルナイズし、超硬水の仕込み水の個性を全面に表現。奈良県旧都祁村産の酒米・秋津穂を使用
価格|5500円/720㎖ 原材料|秋津穂 精米歩合|40% アルコール度数|14度
風の森 秋津穂657×徳利・ぐい呑み

1.陶石粉引 徳利
冷酒にも燗酒にも適した、持ちやすい形状の徳利。つやに品があり、落ち着いた佇まいで安定感もある
価格|2万2000円 サイズ|Φ90×H147㎜ 重量|410g
2.ヒビ粉引 ぐい呑み
内部に見られるガラス質の釉だまりが、ピンク色っぽく美しい。酒を注いだ後の表情の変化も楽しんで
価格|6600円 サイズ|Φ70×H35㎜ 重量|70g
3.刷毛目 ぐい呑み
すがすがしく端正で気品がある刷毛目。濃厚な焼き色が魅力で存在感を放つ。持ちやすく口当たりがいいぐい呑み
価格|6600円 サイズ|Φ75×H35㎜ 重量|75g
4.風の森 秋津穂657
搾りたての生酒で知られる「風の森」の代表作。地元産の秋津穂米を使用し、甘みと複雑味が共存した味わいが特徴
価格|1540円/720㎖ 原材料|秋津穂 精米歩合|65% アルコール度数|16度
味わいの変化を愉しみたい。
異素材の酒器もラインアップ
酒器展では、ガラス作家の巳亦敬一さん、木工作家の佐藤創太さんの作品もラインアップ。作品の一部をご紹介。

トックリ
ガラスの徳利には冷やした酒を。ひんやりとした心地よさを愉しむ。うつわと酒の贅沢な味わいが生まれる。

台付ぐい呑み
仕上げに表面を焦がすことでアンティークのような色合いに。光により見え方が変化し黄金色にきらめく。
巳亦敬一(みまた・けいいち)
1957年、北海道生まれ。北海道で最も古い歴史をもつガラス工房「豊平ガラス工房」にて父である巳亦進治に師事。3代目となる。

ウッドカップ(タモ)
風合いを残しセラミック塗装を施した、木のうつわの可能性を広げる佐藤さんらしいカップ。タモは強度が特徴。

ウッドカップ(サワグルミ)
セラミック塗装を施したカップ。サワグルミは軽さや淡い白色が特徴。木目の美しさを生かした作品。
佐藤創太(さとう・そうた)
1983年、静岡県生まれ。2019年、神奈川県寒川町にて「WORK ST
UDIO KIDUKI」を設立。木目の美しさを生かしたうつわをつくる。
line
酒器展の作品がオンラインで買える!
公式オンラインショップ
うつわ祥見 KAMAKURA×油長酒造×Discover Japan「酒器屋」
会期|2026年2月14日(土)~22日(日)
会場|Discover Japan Lab.
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO 1F
Tel|03-6455-2380
営業時間|11:00~21:00
定休日|不定休
※詳細は公式Instagram(@discoverjapan_lab)にてご確認ください。
※サイズ・重量は掲載商品の実寸です。同じシリーズでも個体差があります。
text: Yoshino Kokubo photo: Yuko Okoso
2026年2月号「訪ねる建築暮らす建築」


































